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迷宮の王をめざして  作者: 健康な人
一章・鉄の王編
40/72

赤銅の主

今回は戦闘時の描写は完全に三人称にしてみました。

心理描写がないためちょっとあれですが、主人公がどう感じていたかは次回に持ち越しです。

違和感やおかしい所などがあれば、是非一言くれるとありがたいです。

 石造りの神殿であるはずである内部は、神殿と言うよりは巨大な通路であった。


 ただまっすぐと、奥に向かって伸びている一本道。目につくものと言えば、明かりとして壁に張り付くように、等間隔で燃えている紫の炎のみ。

 窓も、壁画も、装飾もない。飾り気と言うものが皆無なのだ。

 そして何より疑問に思ったのは、建物であるならば絶対にあるであろう部屋に入るための扉すらないことだ。これでは、建物としての役目は果たせていないだろう。


 神殿に詳しいわけではないが、これを神殿と言うのは少しばかり難しい気がする。


(魔族の神殿などこんなものだ。連中は、信じている神がいないからな)


『魔族は、信じている神がいないのですか?…それにしては、この建物の見た目は、一般的な神殿に見えましたよ?』


(連中は力を信奉している。魔族の神殿にあるのは、強力な武器や防具、強大な魔力を持つ迷宮核、強い力を持った魔族の死体などが一般的だ)


 その話だけ聞くと、英雄譚に出てくる英雄が初めに訪れ、様々な困難を乗り切って武具を手に入れるという話に出てくる迷宮に聞こえるな。


(なんだ、人間はそんな物を夢見ているのか?やはり面白い連中だな)


 それほど面白いことだろうか?誰でも英雄には憧れるものだろう。


(私たち竜から言わせてもらえば、世界は狭い。巨大な体と力を持っていると、余計にそれを感じるものだ。だから、基本的に何もしない。全てを知ってしまえば、世界が面白くないからだ)


 そう言っているが、アリエルは知らないことは知りたがっているように思う。


(…不自由は、自由を渇望させる原動力だからな)


 要するに、封印されて不自由だったから自由に動きたいと言うことか?


(まあ、それだけではないが…大体はそんなところだ)


 アリエルとそんな話をしている内に長い道が終わりを告げた。通路の月あたりに存在する出口であろうその場所にあったのは、今までの通路と同じような、何の飾り毛もない半開きの扉であった。




 半開きであった扉をくぐり先へ進む。するとそこは、今までの通路とは全く雰囲気の異なる場所が存在していた。


 明かりとして紫の炎が使われているのは変わらないが、天井は通路の時よりもさらに高くなっている。さらに今までの通路とは違い、外からの光が入って来るために作られたであろう窓のようなものも存在する。

 下を見ると、床一面に敷き詰められた石は一つ一つが大きく、美しい。石だと言うのに鏡のように光を反射し、先ほど作られた新品であるかのような光沢を湛えている。

 また、床の石はとても硬い。鎧を着ている俺が床を踏むと、カツン、と硬いもの同士がぶつかった音はするのだが、それだけだ。鏡のような美しさは全く陰らず、小さな傷さえついていない。

 そんな物が、決闘場のような円形になるように壁に囲まれて存在していた。



 そして俺は、そんな決闘場のように見える広場を見渡した際に気づいた。

 俺が出てきた場所の反対側に、黒い鎧を纏った巨人がいたのだ。

 体の大きさは俺の二倍を超え、三倍に届くのではないか大きさ。その巨体の全身に纏っている重々しい鎧が、元々並みではない大きさの巨人をさらに一回り大きく見せている。

 右手に持った大盾は、持ち主である巨人を超えるほど大きく、前に構えるだけで足から頭までを容易く隠してしまうだろう。それはもはや盾と言うよりは、盾の形をした壁を持っていると言った方がしっくりきそうだ。

 左手に持った斧は、とても小さい。いや、小さく見える。柄が短いと言うこともあり小さく見えるその斧は、薪を割るために使う斧を少しだけ大きくした感じであろうか。

 だが、それはあの巨人が持っているからこそ小さく見えるだけだ。俺があの斧を持てば、一般的な槍や、それに近い形をした斧槍などを持つよりも範囲に優れた武器になるだろう。


 巨人は俺に気がついたのか、ゆっくりとした足取りで円状の広場の中心ほどまで足を進め、そこで足をとめる。そして中心付近のその場所で、身動き一つしなくなった。


 これは、どうするべきなのだろうか。


 巨人が中心まで進んだことによって見ることができたが、巨人の背後には俺が通ったような飾り気のない扉が存在した。おそらく、あの扉が奥へ続く道なのだろう。

 そして、もしそうならば、扉から離れた巨人を無視して先に進むことは、おそらく可能だ。あの巨人は巨大だが、動きが早いわけではない。それは、先ほどの巨人の動きを見れば分かる。

 確かに、扉の奥は気になる。気になるのだが…俺は、元々は戦力を増やすために死者の都から出てきたのだ。ならば当然、強そうに見えるこの巨人から逃げることはできない。


 巨人にならい、まっすぐに中央付近まで足を進め、巨人と向かい合う形になったところで足を止める。

 こうして見上げる形で向かい合うと改めて思うが、やはりでかい。全身を鎧で覆っているということと、少しも動かないということもあり、巨大な彫像を見上げているような気分になってしまう。


『神官…には見えませんね』


(神官ではなく、ここを守る戦士だろう)


 戦士か。どう見ても強そうだし、そうなのだろうな。だが、同時に疑問も覚えてしまう。


 ここを守るつもりならば、扉から離れない方がよいのではないだろうか?


(やつを倒さないと開かない仕掛けになっているのかもしれん)


 なるほど。


 そんなやり取りをしてた時、巨人は俺とアリエルのやり取りに反応したように口を開いた。


「…オマエガ、チョウセンシャカ」


 挑戦者?なんのことだろう。 


(守護者か)


 守護者?


(その場所の防衛を任されている者のことだ。死者の都で例えるならば、メディアや筆頭、鬼のような存在だな)


 なるほど。


「……オマエガ、チョウセンシャカ」


 巨人は俺に、再度その問いを問いかけてくる。

 何のことを言っているのか分からないが、俺は挑戦者になったつもりはないので挑戦者ではないと言いたい。だが、この巨人にそれ伝えるすべはない。

 しかし、この神殿にとってのメディアたちと同じ様な存在だというのなら、力もメディアたちと同じくらいなのだろう。ならば当然、ここに来た目的である戦力を増やすということのためにも、こいつを配下にするという結論になる。奥の扉は、こいつを下してから進めばいいだろう。


(当然、やるのだろう?)


 当然だ。元々、戦力を見つけるでここに来たんだからな。


 アリエルとのやり取りに反応するように、目の前の巨人が動き出し構えをとる。


「……ケンジャニハ、トミヲ……グシャニハ、シヲ…」


(…ふむ…この言葉は、勝った者が全てを手に入れる、という意味だ。魔族が決闘の際によく使う言葉だな)


 魔族には決闘の際の言葉があるのか…もしかして、人間にもあるのだろうか?


『ありますよ。たしか、勝者は命を、敗者は名を、それぞれの胸に刻め、だったはずです。勝者は敗者の命を背負い、敗者は勝者を称える、という意味だったかと』


 …やっぱりあるのか。


「……オノレノ、チカラヲ…ワレニ、シメセ…」


 巨人はそう言い終わると共に、手に持った巨大な斧を振りかぶった。





 巨人の攻撃は、速くはなかった。

 速さだけであれば、以前戦った雷を纏った魔族の方が数倍は速いだろう。だが、速くないから避けられる、という類の攻撃でもなかった。

 空間そのものを薙ぐように横に振り抜かれた巨人の戦斧は、レクサス個人ではなく、レクサスが存在している場所そのものを攻撃している。

 その場所に居るから直撃するという強力な薙ぎ払いは、体をすこし動かすだけでは避けることなどできはしない。


 巨人の斧は轟音と共にレクサスを吹き飛ばし、砲弾のような速度でこの場所を囲む壁まで一瞬で運ぶ。レクサスは凄まじい破壊音をたてながら壁に直撃し、その衝撃で崩壊した壁は瓦礫となり美しかった広場を汚す。

 頑丈な魔族であったとしても、生きていれば運がいい。並みであれば、触れただけで必殺になるほどの一撃。

 それほどの攻撃を直撃させたというのに、巨人は油断なく瓦礫を見据えている。


 巨人は、手に持った斧で様々な敵を屠ってきた。

 だからこそ、己の力に絶対の自信がある。故に、レクサスが生きているであろうことは容易に理解できた。

 巨人の振るった斧を受け、形を保ったまま壁にぶつかった敵など、今までただの一度も存在しなかったのだから。


 巨人が瓦礫を見つめる中、瓦礫の一部が砂へと変化する。

 崩れた瓦礫の中にできた砂の中から現れたその姿は無傷。

 纏った外套は、巨人の斧を受けたことによって使い物になる状態ではないが、外套に隠れていた鎧には傷一つついていない。

 そして、立ち上がったのならば鎧の中も無事であるのは当然のことだ。


 己の振るった斧を受けてな無傷であるその姿を確認した巨人は、盾を前に構えると突進を始める。

 巨人の体を覆い隠す程巨大な盾を前面に構え突進するその姿は、壁が動いているという言葉がふさわしい。


 しかし壁とは、どれほどの大きさであっても大地に立っているものである。壁を支える地面が崩れたならば、どれほど堅牢な壁であっても崩壊する。

 巨人が数歩目を踏み出した時、その行為をあざ笑うように、巨人の足元が崩れ去った。


 巨人が盾を構えた前からの攻撃ではなく、無防備な足元からの攻撃。何の前触れもなく崩れた床は、黒い泥のようなものに変化していた。

 巨体を支えていた頑丈な床が、底なし沼のようなものへと変化したことにより、巨人はその巨体に見合う重量に引きずられ、一瞬で腰の部分まで大地に沈み込んだ。

 下半身が大地に沈み身動きが取れなくなったことにより、身を守るはずの盾が前へ進む動きを阻害する壁へと一瞬で変化する。


 しかし巨人にとってこの程度の拘束など、拘束にはなりえなかった。


 上半身の力のみを使い、地面に沈みこんだ壁となった盾を前へ通しこむ。すると僅かに、本当に少しだけ盾が前へと押しこまれる。

 盾が動いたことによってできた、人間一人分ほどの僅かな空間。巨体の巨人にとっては僅かな隙間であったが、前面に空間ができたことに変わりはない。そう、多少ではあるが体が動かせるということが重要なのだ。

 巨人は力を溜めるように体を後ろへ引くと、自らが強引に作りだした僅かな空白地帯に向かって盾を押しこむ。

 瞬間巨人は、悪霊による拘束も、大地に沈んだことによって身動きができないということも…拘束と常識を力のみで引きちぎった。

 手に持った盾を体ごと押し込むような姿勢のまま、床に敷き詰められた石を粉砕し、大地を削り、破壊された大地でできた坂をのぼりながら突進を再開する。


 レクサスは動かない。彼が用いた拘束を解くための方法として、あまりに強引な解決手段を取った巨人を見て完全に動きが止まっていた。

 しかし巨人にとって、レクサスがどう思っているかなど関係ない。


 地面に沈んでいた巨人の下半身は、すでに膝が見えるまでの状態になっている。それは、それだけの距離を進んだということだ。そして、もう一歩を踏み込む。その一歩を踏みこんだことによって、巨人の右足が完全に大地に出た。


 その踏み込みと同時に、巨人が左手持った斧が振り下ろされる。


 構えた盾が邪魔であったのか、今回は薙ぎ払いではなく振り下ろしだ。レクサスは斧の振りおろしを転がり込むように回避し、巨人が盾を構えている方向へ移動する。

 巨人の斧が、先ほどまでレクサスが立っていた大地を割り、地面に食い込む。


 そして盾は、持ち主を守るがそれと同時に視界や行動を大きく制限する。つまり大きすぎる盾は巨人にとっても、レクサスへの攻撃を遮る壁なのだ。

 レクサスはそれが分かっているからこそ、盾の前に移動した。


 だが、レクサスの考えと行動は間違いであった。


 巨人は斧を大地に突き立て、そこを大地に突き立った三本目の足のようにし、更なる力を込める。

 そして次の瞬間、上半身も使った全力でもって、巨大な盾をレクサス向かって振り下ろした。

 レクサスを大地と盾で押しつぶすように振り下ろされたそれは、凄まじい轟音と共に破壊を巻き起こす。盾を中心に、敷き詰められた石はめくれ上がり、石の下から覗く大地には何本もの亀裂が走る。

 レクサスが立っていた場所に近い壁は振り下ろされた衝撃だけで砕け、外に向かうように破壊され吹き飛んでいた。


 巨人は、自らが起こした破壊の余韻に浸るように、しばらくの間振り下ろした姿勢のまま動きを止める。

 そして、ゆっくりと盾を持ちあげた。



 巨人が起こした破壊の中心には、何も変わることなくレクサスが存在していた。

 レクサスの足の周りは黒く変色しており、黒く変色している部分のみが巨人の刻んだ破壊から逃れている。

 手を顔の前で交差させるように覆い、衝撃から身を守るような姿勢を取ってはいるが、傷を負っていないのはすぐに理解できた。大地さえ砕く巨人の一撃を受けてもなお、元の形を保っているのだ。これで分からない方がどうにかしているだろう。


 そしてレクサスの手には、いつの間にか抜き身の剣が握られていた。


 身動き一つ取ることができなった原因である邪魔な盾が、彼の上からどけられたことにより、レクサスは動きだす。


 手に持った剣に悪霊が集まり、その刀身が何倍にも伸びる。レクサスは伸びた刀身を確認すること、地面に突き立てられた斧に向かって無造作に振り下ろす。


 巨人はその振りおろしを、斧を引くことによって避けた。だが斧の代わりに地面に当たった剣は、剣が触れた部分を一瞬で砂に変えることでその必殺性を物語っている。


 そして再度、剣を薙ぐように振るう。

 その攻撃を盾で防ぐ。地面を一瞬で砂へと変えたその攻撃を防いだというのに、盾に傷はついていない。

 レクサスはさらに数度剣を振るう。

 しかしそのすべては盾に防がれ、巨人の体に届かない。

 そしてレクサスは、正面からがだめならばと言った風に、剣を地面に向かって突き立て始める。


 レクサスが剣を地面に突き立てるたびに、しっかりした足場であったはずの石の床が動きにくい砂場へと変わっていく。

 地面が砂になると言うことは、凄まじい重量を持つ巨人にとって間違いなく不利になる条件である。しかし、巨人は直接攻撃を加えられたわけではない。だからこそ、冷静にレクサスの行動の意味を考えることができる。

 レクサスが床を狙っていることに気づいた巨人は、完全に体を覆っていた盾を少しだけ動かし、斧をレクサス目掛けて振り下ろす。

 レクサスは、その振り下ろしに合わせるように剣を動かす。


 巨人の振りおろしを剣で防ぐ。レクサスは防いだ姿勢のままであるが、地面は巨人の力に耐えられず少しだけ沈みこんだ。しかし、今まで巨人が攻撃すれば起こっていた轟音は発生しない。

 お互いの武器がぶつかっているというのに、音が発生していないと言うことは、単に力で拮抗しているわけではないのだろう。力のみで拮抗できるのであれば、大人と子どもと言うほどに体格に差のある両者が、こうして拮抗していることがすでに異常だ。

 己の力に絶対の自信を持っているがゆえに、己の力に拮抗できている理由を知ろうと注意深くレクサスを確認しする。

 そして気づく。レクサスが、剣に纏っている悪霊を体にも纏っていることを。

 悪霊は剣から水のようにレクサスの腕に垂れ、体に纏わりつきながら足へ向かい、今なお広がっている地面の黒い足場に繋がっていた。

 悪霊の鎧とでも言うべきそれが、本来レクサスが受けたであろう衝撃を地面に逃がしていたのだ。しかも床の黒い足場は、すでにかなりの範囲に広がっている。これでは、有効な一撃を与えることができない。先ほどの攻撃のように、地面が少し沈む程度である。


 普通に考えるならば、広範囲の地面を片手で沈ませること自体がすでに異常としか言いようのない。

 しかし、どれほどの力を持っていたとしても、敵を打ち倒せない力には何の意味もない。誰がどう言おうと、巨人はそう思っていた。


 どうするか。


 巨人はレクサスを倒すための方法を、斧で押しつぶすように力を加えながら、拮抗しいているかのように見える姿のままに思考を巡らせる。

 そして、そうして考えを巡らせる時間がこの勝負を決定づけた。


 広がり続ける黒い地面は、すでに巨人の構えた盾の内側に侵入している。巨人は、そのことには気づいていた。だが、それを見ても巨人は焦っていない。なぜなら巨人は、この黒い床がレクサスの鎧の一部であると認識していたからだ。

 その認識は、半分であれば正しい。

 体に纏った悪霊を通じて受ける力を地面に逃がす。そのことを目的にしている様にしか見えない悪霊の鎧とも言うべきこれは、実際のところレクサスが作ったものではない。レクサスが食らっている様々なものたちが、戦いを有利に進めるために作りだしていたのだ。

 そんな悪霊たちの考えに対して、レクサスが考えていたことは一つだけだ。


 黒い地面が盾の内側に入るまで待ってから、雷を纏った魔族と戦った時のように地面から悪霊を呼び出して、あの巨大な盾の内側から攻撃させればいいではないか。


 自らの力と拮抗するために作りだしたであろう鎧の出来に驚き、どうすればこの鎧を破ることができるのかと言うことに意識を裂かれていたということあった。だが巨人は、レクサスがそんなことができるなど思いもしなかったのだ。


 巨人が鎧をどう突破するかに思考を巡らせる中、突然地面が爆ぜた。

 地面から現れたそれは、数体の地竜。

 飢えた獣のように獰猛に、それでいて知恵を持つ竜種の片鱗を感じさせる連携を見せながら、巨人の足や腕、体に向かい食らいつく。

 しかし巨人の鎧は、噛み千切るどころか傷をつけることもできはしなかった。

 そのことをすぐに理解した地竜は、巨人の体勢を崩すために巨体に向かってぶつかり始める。

 普段の巨人であれば地竜が数対居たとしても、その場から一歩も動くことがなく攻撃を受け着ることができた。だが、今回はそうならなかった。

 踏ん張るための地面が滑りやすい砂であったこと。片手はレクサスと拮抗状態であり、力の大半はその状態を維持するために使っていたこと。そしてなにより、盾の内側に入られていること。

 様々な要因が重なったこともあり、何度目かの突撃を受けた巨人が体勢を崩す。


 むしろそんな状態でありながら、力に優れた地竜の攻撃を数度耐えたことの方が異常なのだが、ここは戦いの場。命のやり取りをするこの場での言い訳など、何の意味もない。


 拮抗状態が崩れ、斧を押し返されたことによってレクサスが自由になる。それに対して巨人は、一歩後ろに下がった形になり完全に出遅れた。

 地竜はうっとうしくはあるが、己の鎧に傷を与えることはできない。ならば注意を払うべきは、レクサスだ。巨人はすぐにそう判断を下し、今なお襲いかかってくる地竜を無視し、レクサスに視線を向けた。だが、遅い。

 レクサスはすでに地を蹴り巨人の視界から消えていた。


 また盾の前に隠れたのか。それとも右か左にでも移動したのか。


 レクサスがどこに隠れたのか。巨人はその判断に迷ってしまう。そして最終的に、左右のどちらかから背後に回ったのだろうという判断を下し、振り返りながら斧を薙ぎ払った。

 凄まじい力によって斧を振り抜いたことにより、風が巻き起るが、結果は空振り。


 巨人は知らないことだが、そもそもレクサスは一瞬で背後に回る技量など持っていない。自らの身体能力に任せてそれを行うことならば可能だが、そうであれば地面を破壊しながらの移動になってしまう。

 とにかく巨人は、レクサスに背中を見せたまま、全力で斧を振り抜いた形のまま動きを止めてしまったのだ。


 レクサスは、巨人の背中めがけて剣を突きたてる。その際に一瞬だけ巨人の纏った鎧が主を守るための抵抗を見せたが、この戦いにおいてはそのような小さな抵抗など無意味に等しい。

 黒く長い刀身を持ったレクサスの剣は、簡単に背中から胸へと鎧を貫き、凄まじい勢いで巨人の命を食らっていく。


 巨人が手に持った盾と斧を取り落とし、破壊された地面に斧と盾が突き立つ。巨人が纏っていた鎧も、その重量を支えていた力強い中身を失ったことによってその場に倒れこむ。


 これが、この戦いの決着であった。





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