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迷宮の王をめざして  作者: 健康な人
一章・鉄の王編
27/72

迷宮化

修正しました。 4/13

 死者の都に戻って防備を固めようとしたのだが難しいことはジズドとメディアに任せるしかない。

 つまり俺のやらなければいけないことはジズドの話をメディアに伝えることである。


『どれだけ時間がかかるかわからないのですぐに彼女に伝えてそのことについて伝えてくれませんか?』


 もちろんそのつもりだ。


 メディア、この死者の都で有利に戦うための細工をしたい。なにかいい案はないか?


「それは私の世界のように【場】を作りたいということでしょうか?」


『そういうことになりますね』


 そうだ。


「なら方法は二つほどあります。一つ目は私の世界が吹雪の山に現れるというように何かに関連付けて、こういった時に、こういった場所で、こういった方法でそこに到達することができるというものにする方法です。これは条件を絞ることでその【場】に特定条件を満たしたものを誘い込んで魔力の糧にするというものになります。利点は簡単に作ることが可能なこと、特定条件に満たないものの存在を排除することができることです」


『詳しく聞きたいですね』


 詳しく聞かせてくれ。


「分かりました。私の世界で例えるならこの特定条件というのは、吹雪の時、雪山で、山頂に向かって進むというのが条件です。この条件を満たしているものが【場】で魔力を使うと魔力を食って【場】が成長します。条件が難しくなるとそれだけ【場】が魔力を食う機会がないため成長しません。これは【場】を一つの生き物として考えているので【場】の主は普通は必要である【場】の維持のための力が必要ないです。ただ【場】の魔力が少なくなると自然消滅するので私は共生型と呼んでいます」


 …難しいな。


『その作りなら自分を条件に当てはめ【場】で魔力を使用、回復したらまた使用という形を取れば自己だけで延々と強くなり続けませんか?』


 その作りなら自分を条件に当て魔力を使い続けるだけで最強の【場】ができるんじゃないか?


「それはないです。そもそも【場】というのは自分の体を【場】の大きさまで広げることで魔力の循環を大きくするといった考えで作られています。自分の体を食べても総体の大きさは変わらないでしょう?」


自分の手足を食っても食ったのと同じ手足が生えてくるだけで結果的に体の大きさは変わらないということだろうか?


『…なるほど。もう一つの方法も教えてもらえませんか?』


 わかった。もう一つの方法も教えてくれ。


「もう一つは【場】を強引に作る方法です。分かりやすく言うなら多くの生き物がいる場所などで生き物を殺してその生き物が持っていた魔力をその場所にばら撒きそこの主になってしまうという方法です。殺す手間を考えないなら共生型より楽に作れますし殺した数によりますが最初からそれなりの強さの【場】を使うことができます。ですが殺すための手間を考えるなら総合的には大した意味はありません。どちらかといえば【場】を作るためだけの方法ですね」


『そこまでして【場】を作る意味があるんでしょうか?』


 そんな無意味なことをしてまで【場】を作る意味があるのか?


「当然あります。先ほども言いましたが【場】というのは体を大きくするのと同義です。たとえ共生型とは違いその場限りしか使えない体だとしても、同じ力と魔力を持っているのならば倒すことのできる小人と傷をつけることさえ困難な巨人、どちらの体を使ったほうが有利か。自分の力が及ぶ場所が手の届く範囲かその場所一帯かといことです。要するに規模の問題ですね」


『その話を聞く限り共生型の方がよさそうですね』


 共生型の方がよさそうだな。


「…それと私の世界も【場】ですので小分けにした小世界として共有させることも可能です」


『それも詳しく聞きたいですね』


 詳しく聞こうか。


「森の中に生き物の縄張りがあるのと同じで森という【場】の中に生き物の縄張りという【場】を作るのです。できたばかりの森の中に強い生き物の縄張りがあれば森が別の生き物に荒らされることはないでしょう?これはそういうことです」


 つまり今のまま【場】を作ったとしても生き物のいない森と同じということだろうか?


『…これは森を作るんじゃなくて【場】を作るための話だと思うんですが?』


 別にいいじゃないか。何も生き物のいない森より何か生き物がいたほうが見栄えがいいじゃないか。


『ですからそういうことではなくてですね…』


(せっかく配下にしているのだから【場】もこちらの配下にしてしまえばいいではないか。味気ない【場】よりはそちらの方がいろいろできそうでおもしろそうではないか?)


『…お二人がそういうならそれでもいいです。…ですが何となく乗せられた気がするんですが…』


 後半に何か言っていたが小声すぎて聞こえない。

 まあジズドもそれでいいらしい。

 アリエルも賛成してくれたしな。


『とにかく共生型の【場】を作って彼女の世界も取り込むということでいいですか?』


 いいぞ。


(【場】を作るのなど初めてだな。おもしろそうではないか)


 メディア、共生型でお前の世界と共有させた【場】を作るぞ。


「分かりました。では今から【場】の作成方法を説明します」


 まだ終わらないのか…もう聞きたくないが今回ばかりは仕方ないだろう。


「まずどこからどこまでを【場】にするのか決めます」


 これは死者の都が範囲なのだからすぐに決まる。


「その後に【場】に入ることのできる者の条件を付けます」


 問題はこれだ。


『人間を入れなくすれば解決じゃないんですか?』


(それではつまらんだろう)


 というより先の条件では誰が、とか人間族はみたいな括りでの条件はなかっただろ。


『あるかもしれませんよ?さっきの条件は彼女が使っていたものですから』


 とはいうが俺はこんな見た目だが心まで化け物になったつもりはない。

 人間が入れなくなるというのは自分で自分を化け物と認めているようなものだ。

 …まあ体はどう考えても人間ではないのだが。


 とにかくそういうのはダメだ。


『ここを守るつもりなのにこういう話はダメって言うんですからレクサスさんは分からない人ですね』


(せっかくの機会なのにそんなことをしてはつまらんだろ。そんなことも分からんとはジズドはまだまだだな)


 別にそういう意図があったわけではないんだが。

 まあそう思っているのならわざわざ訂正する必要はないだろう。

 しかしどういう条件にするのがいいのだろうか?


 夜、森の中で、死者の都に向かって進むというのが条件ではどうだろうか?


 夜なら視界が悪くなるが悪霊ならばそれは不利にならない。

 死者の都が森の中にあるため二つ目の条件はこんなものでいいだろう。

 死者の都に向かうのは条件的に当然だろう。


「最初から死者の都に来るつもりの者が入れる条件では意味がないのでは?」


 あくまで【場】を使った強化のためのものだから問題ない。


「そうでしたか。ならば夜、森の中で死者の都に向かって進むという条件で【場】を作りますね」


『ついでに陣を組み込んでください』


 ついでに陣魔法を組み込んでほしい。


「陣魔法ですか?」


『【場】の中ではレクサスさんの配下は設置した陣から陣まで自由に移動することができるというものを置いておきたいんですよ』


 【場】の中で俺の配下が陣の上を自由に移動できるというものだ。


「移動の効率化ですか。外に向かう移動ではなく内から内に飛ぶ戦闘用のための移動ですか」


 そうなのか?


『壁の修理が早くなると思っただけです』


 …まあメディアが言ったように戦闘のために使うこともできるだろう。


 さて、やることは決まったしその条件で作るとするか。




 まずはメディアの世界を死者の都の【場】と共有させるらしい。

 これによりメディアの【場】の力を死者の都でも使うことができるらしい。


 共有させた瞬間何もない死者の都の地面の一部が軽く凍る。

 崩れた建物に少し霜が降りている。

 草も木も何も生えていない代わりだとでも言うかのように氷でできた草と木が生えてくる。

 雪が降り出し地面に積っていく。


 崩れた人工物のせいでメディアの世界の様に幻想的なものでなく捨てられた廃墟のような物寂しい印象を受けてしまう。

 そんな中に普通ではありえない雪や氷でできた植物が生えているのだからここには立ち入るべきではないといったある種の恐怖すら感じる。


 そんな死者の都の中で月の木の周りにだけ雪がない。

 月の木を枯らさないようにというメディアの配慮なのだろう。


(まあ月の木は、魔力があればどんな環境でも育つぞ)


 …そういうことを言うなよ。




 とりあえずはこんなものだろうか。

 だが壁の修理はまだかかるだろうし壁の材料になる石や岩ももうほとんどない。

 次はそれを探しに行くか。


『そういえば今更ですが彼女に迷宮核のことを伝えておかなくてもいいのですか?』


 …完全に忘れていた。


 たしかにそれをメディアに伝える方が先だな。


「私に伝えることですか?」


 伝え忘れていたが死者の都には迷宮核という物がある。


「迷宮核ですか?」


 やはり知らないか。

 最初から説明しなければだめなのか…。


 迷宮核というのはだな…。



「…迷宮にそんなものがあるなんて初めて知りました。ですがそんな物があるのなら死者の都は迷宮になっているのではないですか?」


 俺の配下を作るために使っているから迷宮にはなっていないはずだ。


 迷宮核が死霊兵作成の核になっているからな。

 そんな風に何かに使っているのだからここが迷宮にはなることはないだろう。


「…ですが…その、言いにくいのですが…おそらくここ迷宮になっていますよ?」


 は?


(ふむ?)


『そうなんですか?』


「先ほど私の持つ【場】と繋げたでしょう?私の【場】は説明したように私の体も同然です。異物があれば何となくですがそれがわかるんです。その時に私の近くに三つ、月の木の近くに巨大な反応が一つ、街の中心部分に一つ、城の門の近くに三つ、城の中に一つそれぞれ違和感がありました。そしてそれとは別に城の頂上付近から死者の都に魔力が広がっていっているような感覚があったんです」


 それだけじゃ迷宮になっているなんて言えないんじゃないのか?


「今までの経験上この広がっていく感覚は広く影響を及ぼすものです。先ほどレクサス様から聞かされた話を踏まえて考えると死者の都の迷宮核として機能していると考えるのが妥当かと」


『レクサスさんが持ってる迷宮核はどうなっているんですか?それと比べると分かるかもしれないですよ?』


 たしかにそうだな。

 いつか使うと思いずっと持たままであった迷宮核を取り出す。


「一体それはなんでしょう?」


 これも迷宮核だ。


 そう言って迷宮核を手渡す。


(そう言えば反応は一つと言っていたな。竜玉の迷宮核と最初に置いておいた迷宮核のどちらが消えたのだ?)


 …その通りだな。

 放置していた俺が悪いのだがいつから死者の都はここを用意したはずの俺にもよくわからん場所になったんだ?

 …まあいろいろと完全に忘れていたわけだが…。


「これが迷宮核ですか…たしかに何かの核のようには感じますが城の上で感じたものとは違いますね」


 やはりこの核は迷宮核として活動していない状態なのだろう。

 同じ条件でない以上比べることはできないだろう。

 やはり直接確認に行くしかないか。







 部屋に行き迷宮核を置いていた場所を確認する。

 迷宮核は一見何の問題もなくそこに存在している。

 ただしそこに二つあるはずの迷宮核は一つしかなかった。


(大きさは竜玉に見えるな)


 たしかにそうだがとにかく確認が先だ。


 メディア、お前の感じた違和感の正体はこれか?


「そのようです。それとさっき見せてもらった迷宮核と違い活動しています」


 どうやら死者の都はいつの間にか迷宮になってしまっていたようだ。

 まあそれ自体は問題ない。

 迷宮化自体はいつかやろうと思っていたことだ。

 予定外ではあるが死者の都の討伐が本格的になっている以上以前考えていた問題点は気にしなくてもいい。

 だがここに迷宮核は二つあったはずだ。


 もう一つの迷宮核はどこだ?


『…レクサスさん、迷宮核を迷宮核に近付けてくれませんか?』


 別にいいが急にどうしたんだ?


『私が鎧に黒鉄を取り込んだことがあったでしょう?もしかすると迷宮核同士が融合したのではないかと思いまして』


 そう言われればそんなこともあったな。

 その可能性はありそうだ。


 迷宮核を取り出して部屋に置いてある迷宮核に押しつけるように近付ける。

 すると手に持った迷宮核が一度脈打つように光った後部屋に置いてあった迷宮核に取り込まれた。


「レクサス様、今迷宮核が光った時一瞬ですが活動状態になりました」


(私も知らなかったが活動状態の迷宮核同士はお互いが融合して一つとなるようだな。しかもどちらか一方が活動状態でなくともお互いが近くにあれば活動状態になるのか)


 つまり近くにある迷宮核は融合して一つになると言うことか。


(そうなるな)


 もしかしたら迷宮核同士の共振は融合するための相手を探していたものなのだろうか?

 だとしたらなぜ他の迷宮では共振が起こってここでは起こらなかったのだろうか?

 まったく訳が分からん。

 頭が痛くなってきそうだ。


 …もう難しいことを考えるのはやめだ。

 残った迷宮核を死者の都の迷宮核に押し付け融合させる。

 これで迷宮核四つ分だ。

 迷宮核に格のようなものがあるかは不明だが死者の都の迷宮核が他のそれと比べ特別になったのは間違いないだろう。



(よかったのか?)


 どうせいつかはやるつもりだった。予想外だが今がその時だったといだけの話だ。


 そうだとも。

 どうせいつかは迷宮を作るつもりだったんだ。

 急な討伐、予想外の木と悪霊と悪魔、ルフ要塞を作っての本気の討伐と少しも考えてもいないことが続いたんだ。

 もうごちゃごちゃ考えるのはやめだ。

 この特別製の迷宮核とメディアの世界とつながった【場】でなんとかしてしまおう。

 その方が分かりやすいというものだ。


 そんなことよりさっさと壁を修理するためのものを集めに行くぞ。それとメディアは月の木を調べたいんだろう?俺の方は大したことはしないからそっちを優先していいぞ。


「ありがとうございます。ご厚意に甘えさせてもらいますね」


 やはり月の木が気になっていたのだろう。

 さて、俺は今度こそ修理するためのものを探してくるか。



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