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迷宮の王をめざして  作者: 健康な人
一章・鉄の王編
20/72

珍品

修正しました  1/1

 湖で討伐者から逃げた後はジズドが言ったように湖竜が住む湖から見ることができた山に行ってみた。

 特に何かがある訳ではなく山に住んでいる生き物も普通の動物ばかりだった。


 他にも大平原の方での人の出入りが多くなっていた。

 よく武装した人間が大量の物資を持って大平原の方に向かっている。

 何かあったのだろうが迷宮都市とは逆の方向なのでまだ確認に行くことはできない。

 この買い物が終われば一度何があったのか見に行くのもありだろう。


 しかし雪が降るころと言われたが思ったよりも長いものだ。

 この体は休息を必要としないから移動時間が短縮でき食いものも気にしなくていいと今までは便利だとだけ思っていたが待つという行為ならばなんでもすぐ終わってしまうのでこれほど不便なものはないだろう。


 ジズドはまだ時間があるのだから別の場所に移動しようといっていたがその案は却下した。

 移動の時間がある以上自由に動ける時間は時間は意外に短い。

 だというのに一度死者の都まで戻っていたのだ。

 何もない山を完全に探索するのが精いっぱいというすごく微妙な時間しか余らなかったのだ。

 ちなみにこの山だが何もなかったとはいえ一応は山なのでかなりの時間をここで過ごすことになった。

 

 見かける生き物の数も次第に減っているのだからそろそろ約束の時期なのだろうがまだ雪は降っていない。

 そろそろ仕入れているだろうと思って行ってみるとまだ仕入れていないなどということになれば面倒になるかもしれない。

 以前のように必要以上に慎重になることはないが湖で襲ってきた討伐者のことがあるので無意味に人前出るのはやめた方がいいと思ったからだ。



 山の探索が終わりしばらくは巨神の足跡周辺で過ごしていたが雪が降ってきたので迷宮都市に向かう。

 この時期に動くと足跡でこちらの動きを知られてしまうので隠れるのをやめ外套を羽織り整備された大きい道を歩くことにする。





 迷宮都市につくとまっすぐ店に向かう。

 店に入りロウを見つけるたので紙を渡そうとすると向こうが俺に気づいたらしく声をかけてくる。


「おう、あんたかい。雪が降り始めたのは最近なのにずいぶん早くきたな。まあものは仕入れてるぞ。ついてきてくれ」


 以前のようにロウの後に続き部屋に入る。

 今回は部屋に入った瞬間目につくようなものはなかった。

 どうやら巨大な剣と盾は売れたらしい。

 どんな奴があんなもの買っていったのか少しだけ気になるな。


「あんたのおかげでかなり自由に商品を扱えたんでな。今回はいつもよりおもしろいもんが揃えてあるって自信を持って言えるぜ?まあまずは見てくれよ」


 そういってロウは部屋の隅に置いてあった布を取る。

 大きな鏡が見えるがこれがなんだというのだろうか?


「まずはこの悪魔の鏡だ。なんとこの鏡は生きててな。こうやって割ってもすぐに直っちまう」


 そういい鏡を割る。

 そうすると鏡が割れるような音ではなく生き物の断末魔のような鳴き声が聞こえる。

 そして鏡は少しの時間をかけて元に戻ってしまった。


「なんでも大昔の魔術師が悪魔を使い魔にしようとして呼び出したもんらしい。だが呼び出せたのは見ての通りただの鏡だ。綿密な術式と高価な触媒、長い時間をかけて呼び出したのがこれじゃ納得できないって怒った魔術師が売っちまったもんらしい。最近金が必要なとこが多いらしくてな。売りに出されてたから俺が買いとっておいたってわけだ」


 生きている鏡など確かに珍しい。

 しかし最近金が必要になって売りだされるとはずいぶん運がいいな。


「珍しいだろ?しかもこの悪魔の鏡の最大の売りはこうやって合わせ鏡にすると…」


 そういい別の鏡を持ってきて合わせ鏡にすると鏡と鏡の間に自分が現れる。


「これで鏡同士の間に自分が映る訳だ。まあ触れないから見ることができるだけなんだが。だがおもしろいだろ?」


 確かにおもしろい。

 役には立たないだろうがこれほど珍しいものはそうないだろう。

 満足し首を縦に動かす。


「これの良さがわかるなんてさすがだな。だがまだあるぞ。次はこいつだ」


 そういい机の中から本を取り出す。


「この本はある有名な魔術師が持ってる魔術書の写本だ。これも最近金が必要になって魔術師が居る国が売り出したもんだ。まあすごそうに聞こえるがあくまで今売りだしてる魔術書を見やすくまとめたもんだから魔術書を持ってるような連中にはほとんど売れなかった。しかも変なプライドのせいで高く売り出したもんだから初めて魔術を学ぼうとした金を持ってない連中じゃ買えなかったわけだ。ものは良かったから一応買っておいたってわけだ」


 魔術書か。

 魔術のことなんてさっぱりだが有名な魔術師が持ってる魔術書なら価値はあるだろう。

 それに魔術師の知り合いがいないから手に入れようと思って手に入れられるものではないからこれはこれで価値があるだろう。

 アリエルかジズドが理解できなければ紙束に早変わりだな。


「次で最後だが実はこれが一番高くてな。欲しがるやつがいないからめったに出回らないんだが珍しいと言えば珍しい。これだ」


 そして取り出してきたのはどう見てもただに苗木だった。

 これがなんだというのだろうか?


「こいつは魔力を吸って育つ月の木って名前の木だ。名前の通り育てば月に届くんじゃないかって大きさになるらしい。ただそれほどでかい木があったのは迷宮都市ができたばかりのころの話で今じゃそんな大きさの木はどこにもないらしい。しかも魔力を吸って大きくなるってのは魔力がなけりゃ育たんてことでな。普通に植えるだけじゃほとんど成長しないらしい。俺がまだ若いころは物好きどもがお抱えの魔術師どもに育てさせてたんだが一向に大きくならんってことでみんな飽きちまってな。最近の流れに乗って売っちまおうってことになったわけだ」


(月の木か。私も以前はよく育てたものだ)


 アリエルが反応したか。


 どんなものなんだ?


(ロウの説明の通り魔力で成長するだけのただの木だ。まあ魔力さえあればすぐに大きくなるから面白半分でどれだけ大きな木を作れるか試したり戦いの後吹き飛んだ森の修復なんかに使っていたな。私の住んでいた山では珍しくなかったがこのあたりにあるのは珍しいな)


 無頂の山に生えている木か。

 ならこれも珍しいのだろう。

 すべて見たがやはりロウはいいものを仕入れるな。

 多めに持ってきていた金貨袋を渡し紙を見せる。


 この金は報酬で次の仕入れ分の金はこっちだ。しばらく来ないかもしれんから多めに渡しておく。またこちらが満足する品を仕入れてくれたら仕入れ分と同じ金を払おう。


「まいど…しかしこりゃずいぶんと多いな。小さい町の蓄えくらいはあるんじゃないか?」


 まあ元は大国の宝物庫に入ってたものだからな。


「こんなに渡されても何を仕入れりゃいいんだよ…いっそ討伐者でも雇って…」


 ぶつぶつ言いだしたな。

 俺には必要ないといえさすがに渡しすぎただろうか?


「おっと悪いな。あんたしばらくは来ないんだろう?こっちも気合を入れて仕入れてくるから次こそはあんたを驚かせて見せるぜ」


 どうやらロウは仕入れに時間をかけるつもりらしい。

 鏡を持ち上げ月の木の苗を持つと両手がふさがってしまう。

 鏡は持ち上げるために触った時に鳴くかと思ったが静かだったな。

 さっさと死霊兵に持ち帰らせるとしよう。


 店から離れ人気のない場所で筆頭君を呼ぶ。

 鏡はいつものように部屋の中に、月の木は火山竜に吹き飛ばされた場所の近くにでも植えておくように伝える。

 これでようやく手が空いたので魔術書を読むことができる。

 魔術書を読むが何を書いているのかさっぱり分からない。

 字が汚すぎて読むことすらできないとは思わなかった。


 すべてめくり終わったが俺にはさっぱりだったな。


『私も少ししかわかりませんでした。しかし魔術というのは難しいものですね。文章にしているというのに結局のところ使う時は感覚で使うらしいですよ。術や詠唱はその感覚を固めたり強化したりするためのものらしいです』


(門という魔術が役に立ちそうだ。転移ではなく思い浮かべた場所に飛ぶことのできる魔術らしい。これなら転移の宝珠など必要なくなるな。)


 その話が本当なら門という魔術はすごいな。それだけでも買った価値があるぞ。


(一応難しい理屈があるようだがな。まあ問題ないだろう)


 ならさっそく飛んでみよう。


(門の術式に組み込めるほど思いの強い場所はまだ二か所しかない。巨神の足跡と死者の都だ。どちらに行く?)


 死者の都は分かるがなぜ巨神の足跡なんだ?…まさか湖竜がうまかったからではないだろうな?


(そうだが何か問題があるのか?)


 まあ問題はないわけだが…これは今後役に立つのか怪しくなってきたな。


 とにかく飛んでみるか。巨神の足跡に頼む。


(まかせろ)


 アリエルが返事をすると目の前の空間が歪む。

 透明なのだが向こう側が歪んで見えるという不思議。

 これをくぐれば別の場所に行けるのだからこれが場所同士をつなぐ門なのだろう。


 さっそく門をくぐる。


 すると目の前には街並みではなく湖が広がっていた。

 これは便利だな。


(なるほど便利なものだ)


『そうですね。これなら主要な場所さえ覚えておけば自由に動き回れますよ』


 これ以上持っていても意味がないので筆頭君を呼びいつもの部屋に置いておくようにいい本を渡す。


 ようやく旅を再開できるわけだがどこをめざすか。雪が降っているから以前のように自由に動くことはできないだろうが。


(それなら氷の女王がすんでいる場所に行かないか?)


 氷の女王?


(なんでも氷の女王と呼ばれている魔族が美しい氷の世界を作っているらしい。以前は興味がなかったから無視していたが今は気になるのでな。たしか雪が降っていないと出入りできない結界を張っていたはずだから時期的にもちょうどいいはずだ。どうでもいいが女王自身もかなりの美しさだという話だぞ)


『おもしろそうな話ですね』


 だな。行ってみるとするか。



 アリエルに場所を聞くとどこの山でもいいので山で吹雪の時に山頂に向かって進むことがその場所に入る条件らしい。

 どこの山でもいいならここから見えるあの山に行くとしよう。

 雪が降ったせいで場所は分からなくなるだろうが一応探索したので大きく迷うことはないだろう。


レクサスは魔術書を読んだ時字が汚いと思いましたがそういう字だっただけで字が汚いわけではありません。

ジズドは少しだけ読めてアリエルはすべて読めました。

ただアリエルの主観で使えると思ったものが門の魔術だけでした。

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