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ある男の話
迷宮。
洞窟のような閉鎖的な空間に魔力がたまると魔力を吸って変質した鉱石や苔などができ、それらさまざまな「不思議」を求めさまざまな生き物があらわれる場所のことである。
そのような場所には当然のようにさまざまな理由で迷宮探索を商売とするものもでてくる。
男も迷宮探索を生業としていた。
それも死者からの追剥というほめられそうにないことをして、である。
しかも男は分け前が減るからという理由で仲間を作らなかった。だがここは弱肉強食の世界である、死が身近にあるならば集団からはぐれた弱者から先に死んでいくのは当然のことである。
無抵抗のものばかり相手にしたせいでそれを忘れた男は、獲物をあさるという行為に慣れすぎ半ば無意識で獲物に近づくと影にいた毒蛇に咬まれて男はあっけなく死んだ。