巨神の足跡
修正しました。 1/1
もうこの街でやることはないので最後に湖竜を食いに行くとしよう。
湖竜もそうであるが水辺にすんでいる生き物は地上で生活している生き物に比べて非常に狩るのが難しい。
それは水中では息ができず動きが鈍るからである。
水辺で戦う以上どんなに優秀な討伐者でも少しのきっかけがあれば簡単に水の中に落ちる。そうなれば重い鎧を着ていると溺れて死ぬし、そうでなくてもなれない水中で息継ぎを気にしながら絶対的に相手の有利な場所での戦闘を強いられる。
だからこそ慣れたものですら簡単に死んでしまうのだ。
だが今の俺ならそんなものは関係ない。
ただ巨神の足跡はかなり大きな湖らしいので水の底でしか行動できない俺にとっては難しい狩りになるだろうが死の危険は付きまとわない。
(水のことなら私に任せろ。水の中を自在に動くぐらいはいつでもできるからな)
ようやくアリエルが動いてくれるらしい。
地竜に比べると湖竜は基礎的な能力で劣るので今回は楽に食えそうだ。
巨神の足跡はなかなか遠い場所にあった。
ずっと歩いていていたが一度夜になってもまだ着かず次の夜になってようやく着くことができた。
聞いていた通りかなりの大きさである。
こんな大きな足跡をつけるやつがいれば山だって埃を払うように更地にできるだろう。
外套を鎧の中にしまい水の中に進む。
水に入れば湖竜が出てくると聞いていたが出てくる気配はない。
水の中を探すほうが早そうである。
さらに深い場所をめざして水に沈んでいく。
(私が水の中で動き回るからレクサスは見つけた湖竜を狩れ)
アリエルがそういうと俺の体が水の中を飛ぶように移動する。
かなりの速度が出ておりこれなら日が昇るまでに湖の中を回れるだろう。
(やはり昔のような速度はでんな。まあないよりはましだろう)
昔はもっと速かったのか。
水竜ともなれば水の中では無類の強さを誇っていたのだろう。
深い場所を移動していると湖竜を見つけた。
見た目は鱗のない魚の頭から蛇が生えているようなものだった。
体は大きいが首が長く細い。
あれならば浅い場所にいるやつを水中からの強襲で食うことができるだろう。
湖竜はこちらに気づくとその巨体で突進してきた。
俺は突進をもろに受けるがもいつものように吹き飛ばされることなく湖竜に張り付く。
さすがはアリエルである。
張り付いたまま食おうとしたが地竜の時のようになかなか食えない。
今回は柔らかすぎて噛み切れないような感じである。
食おうとされたことに対する反撃のつもりなのか俺の周りの水が圧縮されていく。
体が動かしにくくなったことでようやく気づけたわけだが。
見ることのできない攻撃というのは厄介なものだな。
アリエルが一度距離を取ってくれる。
距離が離れるとともに体が自由になっていく。
(もうお遊びはいいだろう?さっさと買った剣を使って解体してしまえ)
今までずっと素手だったから素で忘れていた。
腰に布で巻きつけておいた剣を構える。
ちなみにこの剣は鞘がないため常に抜き身である。
いつか鞘を作らないとな。
湖竜が再び突進してくる。
しかも今度は口をあけての突進である。
どうやら噛み砕くつもりらしい。
だがアリエルは突進をうまく避けると湖竜の腹に向かい移動する。
アリエルは簡単にやっているが戦闘中に相手の腹に近づくなんてそう簡単にできるものではない。
さすがである。
湖竜の腹に剣をつきたてると湖竜の突進の勢いのまま剣が腹を裂いていく。
そして腹の傷が広がっていくにつれて相手が食いやすくなっていくのがわかる。
大きい肉を食いやすい大きさに切っていく感じである。
大きな体を持つ湖竜からすればこの程度の傷では致命傷には遠い。
だが今なら食えると確信を持てる。
今なおも傷を広げている剣から湖竜を食っていく。
湖竜は必死に暴れてなんとか俺から離れようとしているが腹に食い込んだ剣がまるで意志を持ったかのように刺さったまま抜けない。
当然俺が剣を離すこともあり得ない。
こうなってしまえば湖竜はすぐに食えた。
だがやはりというかあまりうまくなかった。
(うまいな。もっと探すぞ)
どうやらアリエルは満足したらしい。
ここには火山竜みたいな化けものはいないしアリエルが満足するくらいまではやりすぎない範囲で好きに食うとするか。
その後多くの湖竜を食ったのだがさすがに食いすぎたのか湖を回ってもあまり湖竜を見なくなった。
さすがに全部食ってしまうのはまずいしこの辺でやめておこう。次はまたこの街に来た時にとっておこうじゃないか。
(すべて食えばまた湖竜の生息場所を探すところから始めないといけないからな。うまかったものだからついつい食いすぎてしまったぞ)
浅い場所まで移動してもらいそこから地上をめざす。
さてここからはどう進むべきか。
『とりあえずあそこに見える山に行けばどうですか?何かあるような気がします』
気がするだけなのか。
まあ今はそれでいいか。
そんなことを話していると光弾が飛んできた。
ほぼ無意識で回避を選択する。
「ようやく見つけたぞ。金貨百枚の危険種、食らうもの」
どこから攻撃されたのだろうか?声はするのにどこから声がしたのか全く分からない。
「この街の連中が噂してたもんだからまさかと思って探してみればまさかほんとにいるとはね。俺らはずいぶんついてるな」
何人いるのだろうか?
全く分からない。
というかまさか俺を狙うようなやつに見つかってしまうとはな。
「油断するな。特徴を聞いた限りじゃやつには半端な攻撃は通用しないらしい。光弾は避けたからまずはそれで攻めるぞ」
「わかってますよ。任せてください」
光弾で攻めるようだ。
なら光を警戒しておけば回避できるだろう。
そう思っていたが二人が急に表れ槍で攻撃してきた。
光に注意を払っていた俺はその攻撃を避けることができなかった。
槍は一瞬で朽ちたが攻撃した二人組はすぐに視界から消える。
どうやら何らかの魔法を使っているらしい。
「光弾の話をしたら光弾を警戒してましたね。やっぱりこいつは…」
「報告にあったとおり知性があるんだろう。この会話の意味も分かっているのかもしれん。」
「それってまずくないですか?」
「いや、むしろ本当に知性があるかどうかの確認になっていい」
最初の攻撃や会話からこいつらは俺を討伐しに来た討伐者だと思ったのだが…。
こいつらは最初から俺の様子見に来たということだろうか?
それとも最初から知性があると判断してこうやって心理戦を仕掛けているのだろうか?
なんにしても姿が見えない以上後手に回ってしまうな。
一気にやってしまえない以上このまま俺のことを観察されるのはあまりうれしくない。
俺としては俺のことは少し強い悪霊くらいに思ってくれるのがちょうどいいからだ。
何かがわかってしまう前に逃げるか。
『たしかに姿は見えないが逃げていいのか?』
どうせこの場所にはもう用はない。ならこっちのことを調べに来たかもしれん連中と長く戦うのは避けたい。対策法なんて見つけられたらもしかしたら殺されるかもしれないからな。
(私は湖竜を食ったからもうここに用はないからなんでもいいぞ。こんな手間だけかかってうまくもない連中を食うのは面倒だしな)
『でもこちらの情報を渡さないようにして逃げるなんてできるのか?』
湖から出てきたところを攻撃されたということはおそらく水の中で行動できるということはばれているだろう。なら水の中に入ってそこで転移の宝珠を使って一度死者の都に帰る。
『知性があるってばれますよ?』
光弾の話をしながら槍で攻撃してくるようなやつらだ。おそらく最初からある程度はあたりを着けていたんだろう。今までの攻防はある程度分かっていることの確認の意味しかないはずだ。
(面倒なことをいろいろ考える種族だな)
まったくだ。
とにかく相手が何か行動を起こす前にさっさと逃げるとしよう。
全力で湖に向かって駆ける。
特に何かを仕掛けてくるということはなくそのまま水の中に飛び込む。
アリエルが湖の深い部分まで移動してくれる。
ここまでくれば問題ないだろう。
転移の宝珠を使うがどうやら発動までには時間があるようだ。
少し待つと転移が発動する。
今のような安全な場所なら気にならない時間だが戦闘中に発動はできないだろう。
はじめて使ったがこういった便利なものにでも意外な弱点はあるものなのだな。
転移の光に包まれ光が収まると視界にぼろぼろの城が映る。
どうやら死者の都に戻れたようだ。
ふと街中を見ると死者の都の中に大量の死霊兵がいることに気づいた。
どうやら筆頭君はうまくやってくれたらしい。
『ここまで戻ってしまったな。これからどうするんだ?』
どうすると言われても今回は本当に何も考えないまま逃げたからな。
迷宮都市の店に行きたいが雪が降る時期まではまだまだ時間がある。雪が降る時期に迷宮都市周辺にいなければならないのだから迷宮都市周辺から大きく移動はできない。
とりあえず迷宮都市に向かって後は適当な場所を探索しようじゃないか。もしかすると森の迷宮のように意外な場所にある迷宮を見つけることができるかもしれないからな。
(それはいい考えだな。こんな場所にいるよりよほど面白い)
一応俺が拠点にしてる場所なんだからこんな場所なんて言うなよ。
せっかく戻ってきたのだからと迷宮核と石化能力を持つ蛇の目を確認するがどちらも部屋の中にあった。
なかったら困る訳だが筆頭君はきちんと仕事をしていたらしい。
伝わるかどうかは分からないが筆頭君を呼び命令を守りよくやったと言っておく。反応がなくとも初めての手下なのだから大切にしたい。
もしかするとこういったことをすることによって俺は化け物ではない、と自分に言い聞かせているのかもしれないな。
筆頭君に死霊兵を作り終わったら崩れている壁や城を適当な石を積んで穴だらけな状態を直すよう言っておく。
一応の確認のため石を積ませたが穴をふさぐだけなら問題なさそうだ。
地竜の顎で手に入れた地竜と死んでいた竜の死霊兵を見たが想像以上にすごかった。
地竜の死霊兵は作った時に見たがこうやって並べて見るとずいぶん凶悪なものに見える。
今は7体しかいないがこれを増やしたら強そうに見えて面白いかもしれない。
正体不明の竜はさらにすごかった。
頭蓋は半分ほど吹き飛び翼も片方がない。腕や足こそ残っているものの巨大な爪は折れているものもあり、胸の部分の骨はほとんどが折れている。肩の部分の骨も大きなひびが入っており生身であったなら動かすことはできなかっただろう。
(これは飛竜だな。飛竜種の原形みたいなやつらだが火竜が現れてからはやつらの劣化種扱いされてな。事実飛行速度とブレス以外はたいしたことない連中だからより大きな体と強力なブレスを使う火竜よりは弱いがな)
飛竜か。地竜の顎に飛竜種が棲んでいるのも元は飛竜が住んでいて火山竜との戦いに負けてあの洞窟を追い出された結果なのかもな。
(その可能性は高いだろうな。とにかく翼をもがれブレスの使えない飛竜など大した戦力にはならんだろうな)
それでも地竜よりは強いだろう。
それに見た目は強そうだしな。
人間相手に呼び出せばビビってくれるだろう。
(たしかにこの状態でも地竜よりはましだろう)
やはりそうらしい。
なんにしても死者の都の戦力はかなりのものになっただろう。
これなら死霊兵を呼び出すことで大体のことはなんとかなりそうだ。
ついでに鉄屑と化していた武具をジズドの形状変化の魔法で棒のような形にまとめる。
その鉄の寄せ集めの棒に剣を刺しさらに形状変化の魔法をかけ鞘を作る。
鞘は剣に合わせ飾りがほとんどないようにした。
筆頭君に今までと同じように過ごすよう伝え死者の都を出る。
雪が降るころに迷宮都市にたどり着くように移動しなければならないので今までのようにある程度有名な場所をめざすわけにもいかない。これといった場所ではない所をふらつくことが増えるだろうからとにかくいろいろな場所に行くことにしよう。
この話の後は冬まで主人公組の話が飛びます。
それにともないジズドの口調を安定させます。
この話の時期は夏の終わりごろです。




