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第一話 元魔王と転生

 私は自分で育てたと言っても過言ではない勇者ちゃんに追い詰められていた


「ねぇ勇者ちゃん、やっぱり私と世界を壊さない?」

「なんで私が貴女なんかとそんなことをしないといけないの?」


 弱いものは好きだ健気に頑張るから、だから私はこの勇者ちゃんが好きだ。か弱い頃から私に挑んできてその度に私に返り討ちにあっている、そんな可愛らしい存在なのだ

 それに姿も可愛くて私好みだし、何より強い、過去私と対峙した勇者達よりも格段に強い、それこそ私を追い詰めるくらいに


「ここで貴女を殺す」

「あはっ確かに貴女は強くなった、それはもう最初に私に挑んできた時よりも。でも、まだ足りない、身体能力が、魔法が、速度が、頭脳が、何もかもが最強である私を倒すには足りない。でも貴女は強い、魔族の王で最強である私をここまで追い詰めた。ねぇやっぱ私と世界を壊そうよ、どうせ一度貴女を迫害した世界なんて要らないでしょ?」

「いや、違う。たしかに一度私は世界から迫害された、でもそんな私を救ってくれる人がたくさんいた、だからそんな人たちのために貴女を殺す」

「そうか……お前はお前の居場所を見つけたのか……良かったな」


 そう言った直後勇者ちゃんの手のひらから見たことない魔法が放たれる。あれは私が教えた物でも、使った物でもない、知らない魔法、私の知らないところで成長していることを嬉しく思う反面、さみしく思う


 これに当たったら死ぬ、本能で分かるこの魔法を食らったら死ぬと、あーあもっと勇者ちゃんと遊びたかったなー


「ははっ強くなったね……勇者ちゃん……今度会った時は仲良く…しようよ……」

「くっ……なんで…貴女が……そんな嬉しそうな顔をするんですか?」


 なんでだろうなぁ~ほんとになんでだろうな……ほんとに……


 私がそう考えているとい…し…きが……


 —————————————————————————————————


「なぁアリス赤ちゃん抱っこしてもいいか?」


 ん?ここは?明るい、いつも勇者ちゃんと戦っていた魔王城じゃない、つまり私は死んだのだ、だがここが天国とも地獄でもない、と思う。ではここはどこだ?


「いいわよー落とさないでね、落としたら死んじゃうんだからね」

「わかっておる」


 そのような声が聞こえたと思えば体が謎の浮遊感を感じる


「ディティー、フュディーお前らは可愛いな」


 違う私はディティーやフュディーなんて名前じゃない私の名前は■■■■■■のはず……あれ?名前が思い出せない……


 あぁそうか。もう何百年と魔王、大魔王、としか呼ばれなかったから、忘れてしまっていたのか……なんかさみしいな……


「じゃあそろそろいこっか国民のみんなが貴方たちを待っていますからね」


 国民?つまりここはどこかの王城、そして私はこの国の王族に転生というものをしたらしい、果たして私は人間なのか、それとも魔族なのか、はたまた別の何かなのか、一体なんだろうな……それももう少しでわかるといいのだが


 私の母親に当たるであろう人物に抱きかかえられ、どこかに向かう。そこには大勢の人間がいた。つまり私は今人間の王族ということになる


 大量の人間を殺して快楽を得ていた私が人間の王か……運命というのはなかなかに面白いもんだな


 私が考え事をしている間に式典のようなものは終わっていたのだった


 —————————————————————————————————


 私が人間の王族に転生して早十五年、分かったことが何個かある、まずここは私が死んで150年の月日が経過しているということ、昔とは違い魔法至上主義の世界ということ、そしてあの時私を殺した勇者ちゃんは子供を作らずに、そして技術の継承すらもせずに死んだということ、そして最後にこれが一番大切なのだが、私はどうやらあの頃よりも魔力量は何十倍にもなってはいるが、使っていた魔法が一部使えなくなり、火力が10%未満まで下がっているということ、身体能力は当時とほぼ同じと見ていいだろう。そんじゃそこらの一般人はこの身体能力で殺せるから


 だがこの魔法至上主義の世界で私は落ちこぼれ、色々な種類の魔法を使えるが、それでも、平均の火力より弱く、それと対照的に双子の姉のディティーは私よりも多くの魔法を使い、平均の火力を軽く上回る。私とは違って才能に満ちあふれている、ほんと羨ましい話だ


 それはそれとして、だ

 私は落ちこぼれ王女、つまり


「落ちこぼれといえど王族、お前をさらえば大金持ちだ!お前らやるぞ!」


 とこの様に日課の散歩をしていると、ちょくちょく野蛮な族が私をさらいに来る、迷惑な話だ。まぁそのおかげで元魔王としての実力が鈍らないでいるかもしれないから、そこだけは感謝している


「さぁ野蛮な族よ、私は全力を出さない、精々頑張って私を捕らえることだな」



 勝負はすぐに終わった、少しだけ魔王としての力を発揮して数秒、野蛮な族達はほぼ息をしていない状態だった。こいつらもまた弱かった私に本気を出させることができなかった。そうだ、殺しておかないと。こいつを見逃して今度お姉様に手を出されたらとても面倒だから


「さ~てかーえろっ」


 我が家で愛しのお姉様が待ってるはず、襲われて疲れたしお姉様に癒してもーらおっと

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