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夏休みといえば、怪談話が定番ですね。特に日本では、お盆の時期と重なる夏に怪談話をする習慣があります。

 

 夏休みといえば、怪談話が定番ですね。特に日本では、お盆の時期と重なる夏に怪談話をする習慣があります。これは、祖先の霊を弔うと同時に、怨霊の物語を語ることで、夏の暑さを忘れようという風習からきていると言われています。


 夏に怪談話をする理由

 お盆の時期:日本では、お盆の時期に先祖の霊が帰ってくると考えられています。そのため、お盆の行事と怪談話が結びつき、霊を慰めたり、供養したりする意味も込められています。

 暑さを忘れようとする:江戸時代には、芝居小屋が娯楽の中心でしたが、冷房設備がないため、夏は非常に暑かったそうです。そこで、怪談話で涼しさを求めるようになったという説もあります。

 怨霊の物語:怨霊の物語を語ることで、無念を晴らしたり、供養したりする意味合いも含まれています。



 学校の怪談:夏休み前に学校で起こる怪奇現象を描いた物語。映画やアニメ、小説など、様々なメディアで親しまれています。

 四谷怪談:江戸時代から語り継がれる日本の三大怪談の一つ。貞女お岩の怨念を描いた物語で、歌舞伎や映画の題材としても有名です。

 牡丹燈籠:江戸時代の人形町を舞台にした怪談で、こちらも三大怪談の一つに数えられます。幽霊の女性と武士の恋愛を描いた物語です。

 番町皿屋敷:江戸時代に起こったとされる怪談で、お菊という女性が井戸に投げ込まれる話。

 小泉八雲『怪談』:小泉八雲が日本の怪談を世界に紹介した作品。ろくろ首、雪女、耳なし芳一など、様々な怪談が収録されています。


 『行方不明になったOOの末路』


 大学まで進学した私は、アウトドアが好きだったので登山部へ所属した。そこで同級生のA、B、C(いずれも仮名)と仲良くなり、卒業してからも4人で暇があれば集まってアウトドアを楽しむ関係が続いていた。

 ある年の夏。私達4人は中級者向けの少し険しい山へ、日帰りの登山をする事にしていた。登山は久しぶりだが不安は無かった。これまでの経験があるからだ。しかし例え熟練者だったとしても、予期しないトラブルが起きるのが自然であり、山なのだろう。

 途中までは順調だったのだが、異変はあまりにも突然だった。あれよあれよと急激に濃い霧に包まれ、腕を伸ばすと指先すら見えない危険な環境へと変貌。これはもう移動も無理だな、と思った矢先だった。「うわっ!」

 突然、誰かが声を上げた。そして何かが斜面を滑り落ちるような音がする。

「おい!大丈夫か!」

 確認するとCがいない。どうやら斜面を滑落したらしい。今すぐ助けたいが、これは下手に動くと私達も危険だと判断。その場に留まり霧が晴れるのを待った。

 Cは一体どこまで落ちてしまったのか。大声で呼びかけても返事は無い。怪我せずに無事であれば良いが…。

 結局霧は一晩中晴れる事は無く、私達3人は山中で一晩を越した。翌朝に天気は回復したが、Cを探すので登山どころではない。結局、私達の力ではCを発見できず、一度下山して救助をお願いする事になってしまった。

 その後、いくら捜索してもCの足取は不思議と全く掴めなかった。捜査に加わっていた方に尋ねてみると「まるで突然消えた」かのように、痕跡が全くないのだそうだ。斜面も確かに急ではあったが、どうにもならない程ではないので、方角さえ合っていればCもすぐに戻れたはず。突然に濃い霧が出た、というのも、当日の天気からは考えにくいらしい。ずっと快晴だった。

 それから4年、時が経った。経過した年月を考えると、残念ながらCとはもう生きて再会は無理なのだろう。残された私達はそのショックと責任から立ち直れず、しばらくは山から離れていた。しかしそれでも、残されたからには前を向かねばならない。せめて、何か手掛かりになるものでも発見出来れば…。そう決意した私達は、因縁のあの山へ再び足を踏み入れてみた。

 とは言え、これまで何度も捜索して発見できていないのだから、私達が行った所で進展があるはずもない。必死の活動も空しく、やはり私達では何の役にも立たなかった。一体、Cはどこに居るのだろうか。

「おい、あれなんだ?」

 見晴らしの良い尾根で休憩をしていると、Aが声をあげた。言われた方向を見てみると、木々の少し上を何かがゆっくり移動している。鳥にしては丸いし動きも遅い…見た目からすると風船?こんな山奥で?何だろうと双眼鏡で確認した瞬間、私は全身の血がサッと引き、震えが止まらなくなった。絞り出すように見たものを伝えようとしたが、上手く声が出ない。「C…くっ…くっ…び…くび…」AとBも確認すると、皆で真っ青になり無言で顔を見合わせた。

 それは間違いなく、Cだった。信じられない話なのだが、Cの頭部だけが宙に浮かんで空中を滑るように移動していたのだ。その顔は無表情で虚ろ、生気が全く感じられない。顔は血の気が無いどころか、完全に灰色。これは幽霊なのか、化け物なのか…。いずれにせよ、Cはもはや人間ではない事だけは間違いなかった。

 私達は恐怖で捜索どころではなくなり、急いで下山した。途中、Cの生首が追いかけてくるのではないかと思い気が気ではなかったが、無事に戻る事が出来た。3人の間で、あの日見たCの生首は悪い幻覚だったという事にしている。

 私達はあの日、何を見たのだろうか?Cの身に一体何が…。


 


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