Welcome to xxx. 第一章スローライフ、ただ過ぎてゆく時の中で③
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遠足前にウキウキしすぎて眠れない奴がいれば、爆睡して寝坊する奴もいる。少なくとも俺は遠足単体ではテンションは上がらない。水族館に行くって以外では。
「しゅ、しゅいません。この手が悪いんです。この手がリモコンを中々離さないから」
「いやあ、美しかった。ほら、駅前に新しく出来た医院あるだろ?そこの女医さん見てきたんだよ。写メも撮ったし。『PEEPHULLE』にアップしよう。ほら、ジュンも見て見ろ!これはいい。すごくいい!!」
結局、現時刻は午後八時五十三分。
遅れてきたのはタケとヤス。
今は電車の中。半フルボッコにされた二人は現在、暴力込の説教中だ。漫画のウンコみたいなたんこぶが出来上がっている。
「みっちゃん、そろそろ降りる駅だし。二人も反省してるよー」
俺は一人イヤホンで音楽を聴きながら説教を聞いていた。
『次はー三石―三石―』
三石駅は切鷹から六駅だ。ここらは完璧に住宅街で碁盤のように家が建っている、かもしれない。
俺達はUターンしてきたサラリーマン、キャリアウーマン、そして塾帰りの学生に混じり改札を出た。
「はいはい。それじゃあ、本日のメインイベントを始めるわよ」山田さんが駅の前の広間で元気に言う。
「何がメインイベントだ。こっちにはバッドイベントだっつうの」
「ああ、今度から予防接種はあそこに行こう。いや、今この傷ついた心をあそこで見てもらうのも悪くない」
「うるさい!あんたらは少し黙ってなさい!!これがチーム分けのくじね。つゆりから引いていって」
「うん」
「次は皆倉君」
「おう」
「次は馬鹿二人」
「ちっ」「了解」
「最後はあたし」
どうやら端に色が塗ってあり同じ色の人同士で分かれて探索にあたるつもりらしい。俺は緑色だ。
他の緑色は塩谷さんだ。
山田さん、ヤス、タケは赤色。
「それじゃあ、この班分けで行くから。はい、皆倉君」
「ん?なにこれ」
手渡されたのは肩にかけられる小さいリュックみたいなものだ。
「いろいろ入ってるから。もしもの時は使っちゃってよ。つき合わせちゃったお詫びみたいなもんよ」
「ありがとう」
今更ながら手ぶらで来ていたことに気付いた。まあ、家に何かあったってわけでもないが。
「どうせ、警棒とかアラームとかだろ?甘いな。敵は変態だぜ。なあ、ジュン」
ヤスが渡してきたのは黒い塊。エアガンだ。しかし、普通のエアーハンドガンよりもずっしりくる。
「お前、これ電動か!」
「ふふふ、そうよ。電動ハンドガン、ヘッケラー&コックUSP。毎秒17発のフルオート。これを全弾撃たれたら、どんな変態でもノックアウトだぜ」銃を構え得意げに言う。
「あんたねぇ、こんな危ないもん持ってきてー」呆れ顔で山口さん。しかし奥には嬉々としたものが控えている。
「それじゃあ、出発。もし暴漢を見つけたら電話して合流。帰りは状況に応じてそのまま解散ってなるかもだけど、くれぐれも怪我だけはやめてよね」
みんな笑顔で別れ、ようやく暴漢撲滅作戦が始まった。