Welcome to xxx. プロローグ③
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灰色のコンクリート剥き出しの天井。
埃っぽいので空気まで灰色しているのではないかと思う。
自分の体が思うように動かない。動いていた時の当たり前にできた諸々が出来ないことに苛立ちを覚える。
デスクワークをしていて凝った肩を気休め程度に叩くことも、背伸びをして体を伸ばすことも今では満足にできない。
目が覚めても思うように上体を起こせない朝を迎えて、もう、六年になる。
なぜこうなったかは、もちろん理解しているし、納得もしている。
しかし、私も一日一日を生きる女だ。
女は感情的な生き物だ、などとまるで男が理性的な生き物みたく聞こえるのは癪なのだが、こうして毎日のようにその現実が目の前に立ちふさがると、否応なく癇癪を起してしまう。
どうして、この腕は自分の体を抱くことも出来ないのか。
どうして、来体を支えるべき二本の足で立ち、歩くことが出来ないのか。
どうして?
どうして?
挙げていけば切がない。
しかし、そう思うたびに今、私を訪ねてきた男の存在がその癇癪をかき消す。
今の私は罪に背を向け、罰から逃げて、ただ生かされる存在なのだと―。
時間だけが無情にも過ぎてゆく。