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黒い想い

 マタミンとハーケンは、屋根も何もない吹きさらしの場所でテーブルについて座っていた。彼ら二人はグンマーの冷たい風にあたりながらも、それで冷え込むどころか、熱っぽく怒りを撒き散らしていた。


「ったく御三家の奴ら、そろそろ連中を始末してるはずだが……連絡の一つもよこしやがらん、ったくホウレンソウは社会人の基本だろうが」


 マタミンはカタカタと膝を揺らしていた。

 が、コレは寒さによるものではない。


 ジョニーたちに向けてアサシンとして飛ばした「漆黒の黒」御三家の完了報告を、今か今かと待ち受けて苛立っていたのだ。


「そう急くなマタミン。ここは電波が悪いから、そのせいかもしれん。なにせここはグンマーだからな。軍用無線機でもなければ、通信もままならん」


「クソッ!現れた瞬間、その場で眉間をぶち抜けばよかったんだッ!」


「マタミン。おぉマタミン」


 ハーケンはにこやかな表情をマタミンに投げつけると、そのままに胸ぐらをつかんでテーブルに顔を叩きつける。ハーケンはドカッ!ドカン!と、そのまま数度にわたって木のテーブルでマタミンの顔を殴打し続けた。


「俺たちは法律に違反するようなことは何一つしていない。冒険者ギルドはタダの人材派遣業だ。ヤクザでもなければ暗殺組織でもない。カタギの前で言葉は選べよ?」


「わ、わかった、わかったから離してくれ」


「よし、お行儀よくな」


 酔っ払ったハーケンの姿からは想像もつかないが、彼はこのように暴力的で恐ろしい振る舞いを唐突にする。マタミンがペコペコしているのは彼の勘気の恐ろしさを知っていたからなのだ。


「しかし、どうするんだ?」


「何がだ?」


「このままジョニーが帰ってきてだぞ、もしデスイタマエに勝っちまったら、ウチでバフ料理を独占することができねぇじゃねぇか」

「このくだらん料理勝負とやらに、わざわざ俺たちが乗ったのは、そのためだろ?」


 そうなのだ。


 ブラック冒険者ギルドを経営する彼らが、ただの料理勝負にかかわるはずがない。

 彼らの行動原理は搾取と支配であり、何かしらの「儲け」がなければ、動いたりはしないのだ。


 いまの「漆黒の黒」では、デスイタマエが厨房に立つことによって、冒険者たちにバフ料理が提供されている。お陰で前年比マイナス400%を予測していたギルドの売上は猛烈な勢いで改善されていた。


 しかしこのまま「輝きの白」でバフ料理が出されてしまったらどうだろう?

 きっと「漆黒の黒」はジョニーがいる「輝きの白」冒険者の地力でかなわない。


 輝きの白は老人ばっかりのギルドだったはすだが、何故か最近、どこからともなくLV80代の冒険者がやってきて、ブイブイいわせ出している。


 もともと新卒を使い潰すばっかりで、クラッシャー上司しかいない「漆黒の黒」では、LV30台の冒険者ですら数えるくらいしかいない。

 ワイナビは少しマシだったが、四天王を失い、戦力の空白化が著しい。


 このままではマタミンもハーケンもじわじわとシェアを奪われるだろう。


 そしてそれの原因はジョニー、ジョニーの作る料理だ。


 なので冒険者ギルド……いや、それが産む金のために、なんとしてもこの二人は、ジョニーを始末したかったのだ。


 彼らの思惑は、デスイタマエの「バフ料理」を絶滅したいという思惑とは別だ。

 しかし方法、つまりジョニーを倒すという点が一致した。


 ジョニーを始末したいマタミンと、バフ料理を抹殺したいデスイタマエ。


 両者の思惑はまるで違えど、ジョニーを倒すという点で、意見の一致をみて、彼らは今回の料理勝負に至ったのだ。


「しょうがねぇ、コイツは使いたくなかったが」


 ハーケンは懐からあるものを取り出した。


 それは四角い箱であった、その表面には未知の言語で何か文字が書かれており、文字の下にはひっくり返った象の絵が書かれていた。


「なんだねそいつは?」


「コイツは殺象剤(さつぞうざい)よ」


「全く意味がわからんぞ?」


「まあ聞けやマタミン。暴れ象って聞いたことがあるか?」


「暴れ象?なんだねそいつは」


 マタミンは聞き慣れない言葉の意味をハーケンに尋ねるが、彼はやれやれといった様子で、マタミンを小馬鹿にするように吐き捨てた。


「お前ってやつは、本当に学がないね」


「わしは金にならんことには興味がわかんのだ」


 マタミンはアゴ肉を膨らませてムッとしたが、先程暴力を振るわれた手前、言葉を返しはしたものの、大人しく聞き続けることにした。


「まぁいい、暴れ像ってのは文字通り、暴れる象だ。象ってのはおとなしいようで、案外凶暴でな?一度人が弱いもんだと覚えると、楽しみのために人を襲うのよ」

「そいつが暴れ象ってやつよ」


「それとその箱が何が関係するんだ?」


「まあ続きを聞けマタミン。」

「とある国じゃぁ、象ってのは神聖な動物として扱われていてな?」


「神様としても扱われている象をおいそれと殺すことができんのよ。そいつが何人も人を殺している、殺人暴れ象だとしてもな?」


「じゃぁどうするんだ?――ってまさか」


「そう、そのまさかよ。そこで出てくるのがこの『殺象剤』よ。たまたま置いてあった毒の入ったエサを、暴れ象が食って死ぬぶんには……ただの事故だ」


「へへへ……事故じゃぁ、しょうがねぇ」


「あぁ、こいつをジョニーに食わしてやれば、ヤツはイチコロよ。試食だ何だ言って、デスイタマエの料理にコイツをふりかけてだな……?」


「ククク、もうカスの御三家なんかいらねぇ!俺たちだけでもできらぁな」


「おうよ、じゃあ一服盛るのはお前に任せたからな」


「えっ」


「じゃ、たのむぞマタミン、お前にしかできない仕事なんだ」


「お、おう?ならしょうがねぇな」


 こうしてジョニーの何も知らないうちに、二人による邪悪な陰謀は一線を越えた。

 料理勝負が始まる前に、マタミンは殺象剤を一服、小袋に取り分けて隠す。

 はたしてどうなるのだろうか?


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