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邪眼のイビルアイ

「フフ……まずは私から行きましょうか」


 まずイビルアイが進み出た。

 そしてその目をカッと見開いたかと思うと、金色の瞳がまるで別の生き物のようにギョロギョロと上下左右に動きまくった。


 このことからイビルアイは「何その目キモッ」の異名も持っているのだ。


「「うわキモッ」」


 余りのキモさに、ジョニーとミタケもリアクションがついハモってしまう。


「この攻撃を受けてもそんなことが言えるかな?」

「見えたぞ、見えたぞぉぉぉ!!!!」


 イビルアイのスキル、「邪眼」がジョニーとミタケの弱点を捉えた!

 しかし……!


「ジョニーとミタケやら、大分複雑な家庭環境のようだな」


「あぁ……!それがどうした!」


「へっ、痛みには慣れてるぜ」


「……その痛みには慣れるべきではない、君にはどうしようもなかったことなのだ」

「心配するな、私は踏み超えて良いラインとそうでないものくらいわかる」


「イビルアイの野郎、手前ェ、日和(ひより)やがったなッ!」


「バカ者!冗談にして良いモノと悪いものがある!ギャグものなら特にな!」


「ホッホウ、イビルアイのやつ、露骨に好感度を稼ぎだそうとしましたな」


「ハッ、無駄なことをしやがるッ」


 イビルアイはザコガリ師匠とマウントナイトの(そし)りを受ける。

 しかし本人の過失でない不幸をネタにすることは、彼のポリシーに反するのだ。


「『漆黒の黒』にあんたみたいなのがいるとはな……」


「勘違いするなよジョニー。私はSNSや感想欄の炎上が面倒臭いために、ネタを選んでいるだけだ。お前のためではない」


 イビルアイはジョニーを(にら)んだまま、その口を開く。


「なんかお前いつも上下白の同じ服だけど、他の無ぇの?」

「彼女とかに服選んでもらえば?」


「グワーッ!」


 イビルアイの致命的一撃がジョニーを襲った。


 板前であるジョニーは、基本的にいつも同じ白い服だ。彼にお洒落な服などわかりようもない。ファッションに関しての話は、まさに彼のアキレス腱だった。

 

 そしてもちろん彼女もいない。年齢=彼女いない歴であるジョニーに対して、女性とのお付き合いやその話なんてできようはずがない。

 まさに異世界の話である。


 チクチク言葉による往復ビンタでジョニーの精神力は限りなくゼロになった。


「クソッ……!なんて強烈な一撃だ!」


「フフ……どうやら大分ヒザにキているようだな」


「あ、ジョニーって彼女いねぇんだ?ほーん」


「何ミタケさん!?えぐるのやめて!オレの心が死んじゃう!」


「ああ、うん。でもジョニー、悪口だけで人は死なねぇからな?」


「フフ……それはどうかな?」

「健全な肉体には健全な精神が宿るという。つまり、精神をサツガイすれば、肉体も滅ぶというわけだ」

「貴様の冒険者カードを見てみるがいい」


「何っ?!」


 ジョニーは自分の冒険者カードを取り出して確認してみる。

 するとそこには「状態:ディスられ(軽傷)」とあった。


 そしてジョニーのステータスは、軒並み20%ダウンしていたのだ!


「これは!!」


「フフ……そのステータスがマイナス100%になった時が、お前の死ぬときよ」


「割とマジでやばかった」

「どうしよ?」


「ウチにいわれてもなー?」


「フフ……貴様は恋愛をネタにされると弱いと見た」

「私の攻撃はまだ終わっていないぞ」


「グッ!」


 イビルアイの猛攻が始まった。

 童貞で彼女の居ないジョニーにとって、その攻撃は苛烈を極めた。


「彼女とか女関係の話をすると、お前すぐ不機嫌になるよな」


「グワァァァァァァ!」


「普段すげー話に絡んでくるのに、髪とか服の話になるとすげぇ無口になるよな」


「ギョボオオオオォォォォォ!!」


 物理的攻撃を一切受けていないにもかかわらず、何故か血みどろになるジョニー。


 しかしジョニーはイビルアイから攻撃を受け続けたことで、あることに気が付く。

 イビルアイが彼女やファッションをネタにしたディスり発言をするたびに、彼の拳から、血が(したた)っているのだ。


 それに彼がする話には、うわべだけのような、どこか空虚さがある。

 ここでジョニーはピンときて、反撃に出る事にした。


「なんかイビルアイ、お前の言う事、具体性がないよな?」

「なんていうかさ、上っ面だけって感じ」


「ギクゥ!!」


「女の子が好きなファッションブランドとか、何か言ってみ?」


「ヌゥ……!」


「まさか、お前も彼女がいないのか……?」


「ウォォォー!!!!」


 ジョニーのカウンターがきれいに決まった。


 そう、イビルアイも彼女などいなかった。彼は使うネタを見誤ったのだ。

 カウンターを食らったイビルアイは、全身から血液を噴き出して倒れた。


 彼は諸刃の剣を使い過ぎた。ジョニーをディスった反動がイビルアイにもダメージとして蓄積(ちくせき)されていたのだ。

 

 ――それはなぜか?


 ジョニーを傷つけるための言葉を投げつける時、その言葉を最初に握りしめていたのは、他でもないイビルアイ自身なのだ。


 彼はジョニーを攻撃しているつもりで、知らず知らずのうちに自分自身を攻撃していたことに気が付かなかった。


 いや、気づいていたが、気づかないフリをしていたのだ。


 そうでなければ、いびりなどできない。

 自分の事を棚に上げなければ、偉そうに他人をディスることなどできない。


 ロクでもない人生から目をそらすには、さらにろくでもない人間を探すしかない。

 そして、その歪んだ考えがイビルアイを狂わせた。

 歪みは次第に大きくなり、一押しですべてが崩壊するほどになっていた。


 全てはイビルアイの自業自得であった。


「お前は強かったよ、イビルアイ。だけど……間違った強さだった」


「カ……ハッ」


 イビルアイは吐血し、息絶えた。

 そしてその指先は乾いた大地に「彼女が欲しい」とだけ書き残していた。


「なんて醜い争いなンだッ!」

「ホッホウ、争いは同じレベルの者の間でしか発生しないというしの」


「イビルアイめ。くだらん口だけの男よ。だがこうなれば俺が出るしかないなッ!」


「お主も人のこと言えたもんじゃないがの」


 イビルアイの死体を踏み超え、マウントナイトがジョニーの前に歩み出た。

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