『獣たちの礎』へ
「ここが『獣たちの礎』?こいつぁ……」
「なあ、ジョニー、ウチが見る限りなんだけど、ココって骨しか無くねぇ?」
そうなのだ。
俺とミタケは、デスイタマエに言われた場所である『獣たちの礎』へとやって来たのだが、ここにはモンスターらしいモンスターはいなかった。
その代わりにあったのは、骨、骨、骨そしてたまに皮だ。
ベヒーモスのような巨獣、ドラゴンといった竜、そしてあらゆる生物の骨と皮だけがそこにあった。
生きている者の姿はない。
彼らが遺した巨大な白い骨だけがここにある。
「おいおい!あのデスイタマエってやろー!ジョニーをハメやがったな?!」
「いや、それはきっと違う……」
「えぇ?だって食えるもんなんか、なんもねーじゃん!」
「だからだよ、ミタケ。ココに食えるものなんか何もない。だからこそデスイタマエは、ここで取れる素材で料理をつくってみろっていったのさ」
「うーん?」
「バフ料理を説明するときに、デスイタマエは言ったろう?バフ料理を作ることだけに夢中になった料理人たちは、骨の丸焼きや、ゴーレムのステーキを出したって」
「ああ、確かそんなことを……ってことは?」
「ああ、奴はココにある骨を使って、バフ料理で食えるものを出せ。そう言っているのさ。ようは、俺に挑戦状をたたきつけているのさ」
「なるほどな!」
「しかし見事に骨ばっかりだなー?」
「だなぁー?」
オレたちは獣たちの礎を見回してみるが、人っ子一人いない。
ほんとうにここにあるのは骨ばかりだ。これでどんな料理を作ったもんだろう?
「骨のサラダ、骨のステーキ、骨のムニエル」
「なんかダメそーだなぁ……あっウチらオニの料理はどうだ?骨使うのあるぜ?」
「マジ?骨まで食うのオニって?」
「おう!いや、おうじゃないか?こう、なんてーのかな……煮る!」
「それは、骨を使ったスープみたいなってこと?」
「そうそう、ウチらオニって誰でも酒が好きなんだけど……食い物つまみながら酒を飲むと、すぐに腹いっぱいになっちゃって、宴会の後の方では、酒が飲めなくなっちゃうじゃん?」
「まぁそうだわな。腹いっぱいになる為に飲み食いするんだから」
「だから肉をこそいだ後のスープで、まず腹を温めながら酒を飲むわけ。水気の多いもんを食いながら飲むと、酔いが回るのが遅くなるからたくさん飲めるしな!」
「で、スープで腹を温めると、ごっついのを食う準備が腹にできるだろ?」
「なるほど、それってコース料理だな。意外とオニって文化的だった」
「戦の後の宴会だと、捕虜の肉を削いで刺身にして、最後に骨をスープにして麺を入れて仕上げにするっていうのを宴会のときには……」
「前言撤回、メチャクチャやべー連中だった」
「いやいや!肉削ぎはもうウチが子供のころには、もうやってなかったから!」
「聞いただけで、見たことねーし!そんなグロイの食えるかよ!!」
「ふぅ、オニにも人権意識があってよかった」
「なんでも親父の世代に動物愛護団体の抗議が激しくなったとかで」
「オニにとってのヒトってそういう扱い?ビビるわ」
「あー、《《ふつーのオニ》》の認識は、ヒトがイルカとかクジラに持ってるスタンスに近いぜ、たぶん」
「あー、好きな奴は好きだからまあ別に食えばっていう感じ?」
「せやね」
「ねぇ、こわくなってきたんだけど?ミタケさんと酒の出る食事してたら、そのうち指が何本か無くなってたりしない?」
「保証はできねぇな!」
「よし、ミタケに酒はぜったいに出さないことに決めたわ」
「冗談にきまってんだろ!ジョニーの指なんて食うか!」
「なので、酒も出してくれよな!」
「ほんとぉー?」
「ジョニーの指食ったら、料理がでなくなんだろ?」
「絵師の腕を喰ったオニじゃあるまいし」
「似たような事例がポンポン出てくるのがマジでコエーんだけど」
「だってオニだし。」
「それ言われちゃぁな……」
「まぁオニにそういう伝統的なスープがあるなら、それで行こう」
「おう、飲むの久しぶりかも」
「あれ?ミタケさんってあんま年末年始家に帰らないほう?」
「だなー、まあいろいろあって」
「そうか。俺も色々あるほうだわ」
「……んじゃまあ、しゃべってても始まらんし、始めるか!」
「おう!」
俺たちはまず骨の加工に取り掛かることにした。
とりあえず手直にあった竜の骨に、ミタケがその鉄塊のようなグレートソードを振り下ろすのだが……。
<ガキィン!><ガチン!>
「駄目だジョニー!ぜーんぜん歯が立たねぇ!」
「ミタケさんのパワーでもだめかー」
まず難題となったのが、巨獣や巨竜の骨を採取する作業だ。
羽や指のような細い部位でも、その骨は大きく頑丈である。ミタケがその鉄塊のような剣でぶん殴っても、なかなか取る事が出来ない。
なんせ指の骨でも、俺の胴回りくらいの太さはあるのだ。
この作業の困難さがわかるだろう。
俺の板前スキルをふるって見ても、イマイチ効果がない。
まだ骨を食材として見ていないせいか?
うーむ、ならここは……。
「ミタケ、持ってきたアレを使おうぜ」
「だなー、ウチの剣でとるのは諦めて、ロケランつかうかー」
なのでここは、カイ○ズでかってきたM72 LAWという使い捨ての対戦車ロケットランチャーを使う。いくら頑丈な骨とはいっても、現代の戦車の複合装甲ほど頑丈ではないからだ。
<ドッゴォォォ!!>
さすがは200mmの装甲をつらぬくロケランだ。
骨にぶち当たって弾頭が炸裂すると、骨の白く硬かった表面がバラバラに吹き飛んで、スポンジのような見た目の骨髄がむきだしになった。
「やったぜ」
「料理の為にロケランを使ったのは、オレたちが初めてかもわからんな」
「あとはこの骨髄をあつめればいいのか?」
「あぁ、ちゃっちゃとやっちまおうぜ!」
俺はミタケと協力して、竜、そしてベヒーモスの骨髄を集めた。
これをスープの材料にするのだ。
あとは途中で狩った野菜も使ってスープにするといいだろう。
よし、やってやるぞ!見てろよデスイタマエ……!




