バフ料理とデスイタマエ
一方そのころ、ワイナビ四天王は「土気色のツカレタヨーネ」がジョニーに討たれたことに衝撃を受けていた。
「ファファファ……土気色のツカレタヨーネがやられたようだなチクショウ!」
「クカカ……奴は四天王の中でも中途半端に強いぜ」
「ホホホ……すごい強いわけでも、ましてや弱いわけでもないから……」
「クカ……コメントに困るぜ!!」
「ファファ……奴はお母さん思いで、毎年カーネーションをコンビニで買っていくタイプのやつだった。そんな奴がやられるとはなああああ!!!!」
「ホホホ……黙って他人のゴミを持って帰るタイプだったわね」
「クカカ……それが奴の負けた原因とは思いたくないぜ!!」
「ファファファ……先走ったのは奴の過失だ。だが、このままにはしておけん、板前のジョニーに、この件も含めて、ケジメをつけさせるのだ!クソッタレ!」
「「おう!!!!」」
そう、意外とワイナビ四天王はちゃんと人間関係が出来ていたのである!
ツカレタヨーネの死に際し、彼らは結束を強めた。
「クカ……ファビョランテは熱くなりすぎだぜ、さすが火病といったところか。
「しかしオニ娘のミタケもそうだが、あの板前も問題だぜ」
彼らは非戦闘職であるジョニーによって、ツカレタヨーネが倒されたことにより、ジョニーの認識を改めることとなった。
「ファファファ……案ずるな、それに関しては計画があるっつってんだろ!」
「ホホホ……一体どんな計画を思いついたのかしら」
「ファファファ……奴らはその料理が力の源。ならば簡単だ――」
ファビョランテはその邪悪な計画を残った四天王に打ち明ける。
その計画の邪悪さは、四天王の二人をもってしても耳を疑う者だった。
「クカカ……さすがの俺も引くぜ」
「ホホホ……あのね、食い物をネタにするとすぐにネットで炎上するのわかってる?そのへんの線引きはちゃんとしなさい?」
「ファファファ……なんとでもいうがいい!勝てばよかろうなのだ!」
こうして邪悪な計画は進みはじめる!
板前のジョニーに、悪辣な計画を携えた四天王の影が迫っていた!
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★★★
ジョニーはトリの肉と卵を携え、「輝きの白」のギルドハウスへと戻った。
そしてそのままキッチンへ入ったジョニーは、さっそく料理に取り掛る。
肉をドカンとまな板に置いたジョニーは卵を割り、ハシで溶き始めた。
「おー、ジョニー、今度は何作んの?」
「おいおいミタケはさっき串焼き食ったばかりだろ?」
「料理が違えば、収まる所も違うんだよ!で、今度は肉だけじゃなくて、卵も使うんだろー?どんなのか教えろよー!」
「しょうがないにゃあ……」
「今回は親子丼だなー、あ、米炊くの忘れてた。そっちもしなきゃ」
「ほうほう親子丼とな?いいじゃんいいじゃん!」
下ごしらえをサクサクすすめているジョニーに、ミタケが答えを特に期待していないような風で、ある質問をしてくた。
それはジョニーにとっても、なるほどそういえば?と思うものだった。
「しっかしあれだなー、ジョニーの料理のバフって何で付くんだろうな?」
「ほら、他の料理……例えば食堂とかコンビニのお菓子でバフなんかつかねーぜ?」
「そうなのか?」
「おう」
ふぅん、そういうものなのか……?
そういえば、なんでバフなんてものが付くんだろう。
「ホッホッホ、昔は職人の手料理に、料理バフが付いたのは普通じゃったんじゃがのう……」
俺らの会話に混ざったのは、冒険者カードを作ってくれたじーさんだった。
「えー?じゃあなんでなくなったの?不便じゃん」
「実際不便になったのう。味はするが、食ってもなーんもならん料理ばっかりになってしまったんじゃ」
このじーさんがが言い出した事は確かに奇妙だ。
料理からバフの効果だけを、誰かが取り除いたみたいじゃないか。
そんなことができるのか?
「じーさん、そりゃあ料理を喰ったら力が出るのは当たり前だろ、いつから料理はそんなスカスカな存在になっちまったんだ?」
「――デスイタマエじゃよ……!」
「なんだその小学生が考えたみたいな名前」
「実際、その存在に気付いた小学生が付けた名前じゃからな」
「マジでそうなんだ……」
「とにかく、デスイタマエはあるとき急に現れた。そしてどうやったのかもわからんが、世界中の料理からバフ効果を消し去ったのじゃ。それはもう10何年は昔になるかのう……?」
「じゃあ、それ以前は普通にバフがあったのか」
「うむ。」
「でもジョニーが使えるんなら別にそれでいいんじゃねーの?それにバフなんかが別に無くったって、ジョニーの飯もうまいし!ウチ、ジョニーの飯が好きだぜ!」
「……トゥンク!」
「ジョニーは別に好きじゃねえ」
「酷い!!」
「うむ……しかしであれば、これは困ったことになるかもしれんのう」
「何がだ、じーさん?」というミタケの声に、じーさんは恐怖にふるえ、いや普通に年のせいでプルプルしながら答えた。
「デスイタマエがお主の存在を見逃すはずはない……ヤツがバフ料理の効果を消したのは他でもない。バフ効果をもつ料理、それを独占する為なのじゃ」
「きっとヤツに見つかれば、ただではすむまい……」
俺はしんとした空間で、コトコト音を立てる鍋に気付き、噴きこぼれる前に火を止めた。デスイタマエ、そんな奴がいるのか。
できれば会いたくないものだ。
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