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20.猫の憤り

 教授が1か月間の謹慎処分となり、授業の手伝いがなくなりやることが無くなった私はふらふらと廊下をあるいて、暇を潰していた。


 どうやら生徒たちには教授が謹慎処分になった理由が悪い方向で伝わっているらしい。


 なんでも、あの騒動の黒幕は実はブリートン教授で、カンニングをした生徒が許せなくて生徒がわざと薬草を盗める状態にしておいて、自ら退学になるようにしむけたらしいと噂されているようだった。


 失礼極まりない。確かに教授は不正には厳しい人だが、教育熱心だし、助けを求めてきた生徒に手を差し伸べることができる人だ。


 恐らく、1ヶ月の謹慎処分は表向きだけで、教授はこの事件の黒幕を突き止めるために動こうとしているのだと思う。昨晩は何かを調べているようだったし、今朝は早くから物々しい形相で部屋を出ていった。きっと校長も犯人を調べさせるために教授を謹慎処分にして授業から外したんだろう。


 ―教授のこと何も知らないくせに


 陰口を言う生徒にぷりぷりしながら廊下を歩いていると、聞き覚えのある声が私を呼んだ。


「おーい」


 こちらに向かって手を振っている男子生徒。あれはいつか出会った恋に悩めし青年、フィリップだ。


 隣には彼が恋する女子生徒、アリシアもいる。彼女は私に向かって綺麗に微笑みながら小さく手を振った。非常に可愛い。


 私は2人のもとにてくてくと駆け寄った。フィリップは私が近くにくると手慣れたように私を抱き上げる。自然と彼の顔が近くになった。


「君のご主人が大変なことになっているから、どうしてるのかなぁって心配してたよ。よかった。元気そうだね」


 そう言って彼はぐりぐりと私の頭を撫でてくれる。絶妙な力かげんで繰り出されるマッサージ攻撃に私はふにゃふにゃになった。…あ、そこもっと…。


 そんな私を見ながらアリシアはふふっと朗らかに笑った。そして「いいなぁ、私も撫でたい」と言う。


「撫でてごらんよ。この子は大人しいから大丈夫だよ」


  そう言ってフィリップは私を撫でやすいようにアリシアに差し出した。猫を撫でたいという人間の気持ちがよくわかる私は、彼女が撫でやすいように大人しく身を預ける。


 アリシアは恐る恐るといった様子で私の身体を撫でた。少しぎこちないところはあるが、女性特有の小さくて柔らかい手が毛を空いていく感覚は心地よい。


「ふわふわだね。撫でていて気持ちいい」

「分かる!凄く毛並みがいい子だよね。ブリートン教授って生き物に関心なさそうだけど、意外とちゃんと世話をしているんだなぁ」

 

 いや、この手並みの手入れに関してはミセスクリスティの功績なんだなぁ。教授が私の毛の手入れをするのは材料として、フィスの毛が欲しい時だけだから。それ以外はちゃんとお世話してくれているけどね。美味しいご飯も提供してくれているし。


 そう言えば、この二人どうしてここに居たんだろう。以前あった時よりもお互いの距離感が近い気がするし、これはもしやくっついたとか?


 フィリップをじっと見つめていると、視線に気づいたのか彼はこちらを向いた。視線が合うと照れくさそうに微笑む。


「ふふふ、君のおかげで僕たちこうして仲良くなれたんだ。最近では、休み時間にそれぞれのおすすめの本の話をしたりしているよ」


 おお!それはなかなかいい感じじゃん!このまま両想いになれるといいね!…そう言えば何だか、フィリップの顔つきも以前よりキリっとして逞しくなった気がする。恋をすると人って変わるんだね。なんだかとても幸せそうだ。


「ねぇ、この子がここに居るってことは教授、近くにいたりするのかな?」

「あ、確かに。…ねぇ、ブリートン教授って今どこにいるか分かる?」


 教授の居場所?二人とも教授のことを探していたのか。でも、一体教授に何の用なんだろう。二人ともあまり教授に接点がないと思うんだけど…。


 私も教授がどこにいるのか分からないんだよね。偶に教授の残り香がする時があるので学内にはいるんだろうけれど。


 如何せん、沢山の人が廊下を行き来しているから、匂いが混ざっていて分かりづらい。こういう時、言葉が離せないのは非常に不便だ。どうやって二人に伝えればいいんだろうか。とりあえず、私は首をふるふると横に振って教授がいないことを示した。そんな私を見て、フィリップは残念そうな表情を浮かべる。


「そっか。分からないのか」

「どうしよっか。もう少し探す?」

「そうだね。今日は授業もないし。教授には早めに相談した方がいいと思うし」


 相談?二人の中で何かあったのかな?でも、なんで教授に相談なんだろう。二人の担任はクラットン教授だと思うんだけど。


「ちょっとね、君のご主人様に相談があってね。さっきまで探していたんだよ」

「もしかしたらブリートン教授は他の人にはめられているかもしれないの。私、あの先生はどうしても悪い人だとは思えないのよ。あんなに熱心に魔法を教えてくれた人が生徒を退学にさせようとするとはとても思えなくてね。色々とフィリップ君と話していたんだけど、その日、怪しげな動きをしていた人物を見かけたのを思い出してね。急いでブリートン教授に知らせなきゃって思ってきたの」


 それってもしかして、黒幕の正体が掴めるかもしれないってこと?!


 黒幕の正体がわかれば教授が悪く言われることもきっとなくなるに違いない。よし、それなら早く教授を見つけ出して黒幕の正体を突き止めよう!


 私はにゃあと泣いてからちょうど顔の前にあったフィリップの胸にすりすりした。彼は驚いたような顔をしたけれど、直ぐにとろけたような表情で微笑む。

 

「もしかして、君もご主人様を探しているの?…よし、なら一緒に探しに行こうか」


 こうして私たちはブリートン教授を探して、学内を探検することになったのだった。

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