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19.教授と校長

 教授が向かったのは最上階の奥にある校長室だった。動く螺旋階段で最上階まで昇り、ダミーの扉を避けて正しい扉を数枚通った先に存在するこの部屋は限られた者だけが入室できる場所だった。正直、私一人では絶対にたどり着けない自信がある。だって、ダミーの扉は毎回位置が変わるのだ。間違った扉に入ると最初の扉に戻されてしまう。


 部屋の入り口にはオークの銅像が置いてあって、部屋の近くに人がやってくると動き出す。なんでもこのオークは校長室の見張りを行う門番らしい。オークはこちらに近寄ってくると、睨みながら手を差し出してくる。迫力が半端ない。私は思わず尻尾をくるんと丸めて教授の後ろに隠れた。


 教授はそんなオークを気に留めることもなく、手慣れたように懐から瓶を取り出すと中に入っている丸い粒を取り出す。キャンディーだ。そして、それをそのままオークの手のひらにのっけた。


 オークは渡されたキャンディーを舐めると首を横に振った。どうやら、味が気に入らなかったらしい。それを見た教授は別の色のキャンディーをオークに差し出した。オークはそれを口に入れると満足そうに頷く。今度は味が気に入ったらしい。ニッと笑みを浮かべると校長室の扉を開けてくれた。教授はようやくかといった様子で瓶を懐にしまうと、スタスタと部屋の中に入っていく。私も教授の後に続いて部屋の中へと進んだ。


「難儀じゃったな、シュトル」


 部屋の中に入ると、白髪の杖をついた老人が私たちを待ち受けていた。老人の言葉に教授はムッとしたように眉をひそめる。


「知っていたなら、もっと早くに言ってほしかったですな、ダイナス校長」

「ふぉっふぉっふぉ。のっぴきならぬ事情があったんじゃよ」


 校長は苦労をかけてすまんかったのと言いながら、教授にソファへ座るように促した。手に持っていた杖をトンと床に打ち付けると、テーブルに3つのコップが現れる。中に入っている黒い液体からは湯気がたっていた。猫である私はコーヒーが飲めないので、代わりにミルクを出してくれた。


 穏やかでまるで皆のおじいちゃんみたいな存在であるダイナス校長。詳しいことは分からないが、とても凄い魔法使いなのだと生徒が話しているのを聞いたことがある。ブリートン教授との関係性は今一つよく分からないのだが、名前で呼ぶレベルには親交があるようだ。


「どうやら、裏で手を引いている者がおるようでの」


 ソファにゆっくりと腰掛けながらそう述べる校長に、教授は不穏な空気を察し、真剣な眼差しを校長へと向けた。


「あの生徒、クラットンとよく接触をしていたそうなんじゃ」

「クラットン?あの者は魔導騎士学に精通していないはずですが」


 クラットン教授って、この間ブリートン教授が代打で出てた授業の担当教授だよね。あの問題を起こした生徒は元々教授が担当していた生徒だし、今はミセスクリスティの科にいる生徒だからクラットン教授との関りはないと思うんだけど。


 二人とも私と同じことを考えているのだろう。訝し気な表情で会話を続けている。


「それがわしも引っかかってな。昨今、クラットンが特定の生徒に声をかけて、何やら組織を作っているとの噂がある」

「組織?」

「秘密のクラブと生徒の間で言われているそうじゃが、何とも気掛かりでの」


 うわぁ。秘密のクラブ。すっごい好奇心がそそられる名前だなぁ。一体、何をやっているクラブなんだろう。


「実は先ほど、あの部屋に侵入者が入ったんじゃ。校庭の事件に気を取られ気づくのが遅れてな。残念ながら侵入者には逃げられてしまったのじゃが…」

「何ですと?!」


 校長の言葉にブリートン教授は物凄い形相で反応した。あの部屋って一体どの部屋なんだろう。なんか入られると困る部屋がこの学校にあるのかな。


「幸い、わしの結界魔法が解けなかったようで、あれがとられることはなかったが」

「あれの存在を知っている者がこの学校にいるということですか」

「そういうことじゃな」


 なんだかよく分からないが大変なことが起きているようだ。校長と教授の顔が段々と曇っていく。


「おそらく、今回の件と無関係ではないだろう。校庭で騒動を起こすあいだに、何者かが裏であれの復活を狙っている」


 もう私の脳内は?でいっぱいだ。あれって何?何が復活するの?


 会話についていけない私を他所に、二人の会話は続いていく。


「クラットンを尋問しますか?」

「いや、まだ早い。証拠がない限り、奴を捕らえるのは無理じゃろう。何しろ、あやつは魔導騎士庁の人間じゃからの。下手に手を出せば、証拠を握りつぶされかねん」

「なんとも面倒な…」


 校長の言葉に教授はこめかみを抑え、深く息を吐いた。校長も困ったように頭をひねっている。


「とにかく、黒幕の正体を突き止めなければ。シュトル、其方の方でもクラットンに注意しておいてくれ」

「かしこまりました」


 その後、今回の事件について話し合いが行われ、犯人の生徒は退学になることが決まった。他の生徒の命を危険にさらした罪が重いらしい。教授にも監督責任としての罰が下りるらしく、1か月間の謹慎が決まったのだった。

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