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MEMORY・49 真犯人判明

 4月18日日曜日 午後4:00


 わたしは真一と共に教室へとやってきた。

 もちろんキキの身体のままだ。わたしの身体はまだ治ってない。

 なのでキキはお留守番である。帰ってきたらマグロ味のエヴァープロフィト作れと真一と交渉していたのでマグロ味のアレが多分出来るんだろう。わたしには飲ませないでほしいと思う。

 教室には、放課後までに真一を通して話を伝えた人物が一人。

 一つの机に座ってわたしたちを気だるげに待っていた。


「初めまして、キキです」


「ええ、で? 私に何の用?」


「自首して。七瀬さんを貶めるのもそろそろ止めてあげて」


「は? いきなり何?」


 しらを切る彼女に、わたしは告げる。

 もう、逃しはしない。犯人は犯人として今ココで暴きだす。


「もう、全部わかってるよ。岩倉武琉の彼女さん。ううん。岸川……茜さん」


 机の上の人物を見上げ、わたしは醒めた目線を突きつける。


「なによこの娘? キモ眼鏡。これはどういうこと?」


 キッと真一を睨みつけ、岸川茜は机から飛び降りる。


「絵麗奈さんの代理ですよ。彼女が岩倉武琉の事件を解いたのですが、小用でこれなくなりまして、時期は早い方が良いかと。彼女の妹のキキです。事情は全て知っています」


「何が事情よ? 私が武琉君殺し? 何言ってんの?」


 憤る彼女を無視して、わたしは黒板に名前を書いていく。

 キキは背が低いせいで黒板には届かない。なのでわたしの身体を真一が黒板に届くように抱えあげてくれる。恥ずかしいけどバランスの悪い教壇の上に立つよりはマシだった。


「まず、岩倉武琉の第一発見者、真田永久について。この前、わた……姉さんと真一で真田永久と緒方清彦に質問をしました。そのとき、真田永久はこう言いました。『探しているものがあそこにあると連絡があって向かった』彼はさらにこう言ってます。『岩倉武琉が憎かったと』それはなぜか? 真一は考えました。もし真田永久が岩倉武琉の彼女であったならと」


 わたしは永久君の名前と岩倉武琉の名前をカップリングする。


「確かに動機はあった。憎いと言ってるんだから当然。でも、彼の探し物は別にあった。だから、実際はこっち」


 カップリング線に大きくバツをして、替わりに別の人物と繋ぐ。


「岩倉武琉が真田永久の彼氏ではなく。柏木稔が真田永久の彼氏。真田永久の探し物は彼氏である柏木稔。そしてそれを峠越えに誘って一緒に死んだ岩倉武琉が憎かった。でも、この仮定だと一つだけ矛盾が生じるの。つまり、柏木稔の彼女が二人いることになってしまう。でも実際は岩倉武琉を好きな人が二人。柏木稔の恋人は一人。じゃあ、その矛盾する女、岸川茜は一体何?」


 そう。岸川茜に彼等の捜索を依頼されたとき、七瀬奈菜の彼氏が岩倉武琉で、岸川茜の彼氏が柏木稔。これが間違った前提だった。

 ところどころで何かがおかしいはずだわ。

 永久君が岩倉君と知り合ったのは柏木稔を媒介としてだ。


 岸川茜の携帯に貼られた恥ずかしいプリクラ。

 なぜ中途半端だったのか? 柏木稔と取ったプリクラがアレだけだったのだろう。

 あれは仲良し四人組で取ったプリクラ。

 あの反対側には本当の彼女である真田永久が恥ずかしそうに俯いて映っている。


「なんの……冗談よ? 永久君が稔の彼女? はぁ?」


 岸川茜は理解不能といった口調でわたしをバカにしている。

 でも、それは今のうちだけだ。

 すでに……わたしたちは永久に確認してある。


「真田永久には人に言えない秘密があった。それは自分が男性でも女性でもないということ。永久君にとってそれは小さい頃からのコンプレックス。だから誰にも秘密のはずだった。でも、もしそれを知った人がいたら? それが小学生だったら? 当然イジメの対象だ」


 人間っていうのは残酷だ。自分たちと何かが違う。それだけで排斥対象へとなってしまう。

 特に性差別などについて知識も乏しい小学生。自分たちと違うからと彼は排斥対象になってしまっていた。でも、そんな彼を彼だからと理解して、助けてくれた味方がいた。


 永久を守っていた三人の男女。一人は岩倉武琉。

 そして永久を一生自分が構うと告白めいたことを言ってのけた男、柏木稔。

 そしてもう一人の女の子。彼女を含めた四人は小学校から今までずっと仲が良かった。


「そのイジメを止めて永久君を助けた三人」


 そこまで言ったとき、岸川茜の表情に変化が起こった。

 目を見開き、わたしを直視する。


「あんた……何を知ってるのよ?」


 わたしは彼女の問いに答えず、ニヤリと笑みを浮かべる。


「一人は岩倉武琉。もう一人は柏木稔。そしてもう一人の女の子」


 七瀬奈菜は言っていた。岩倉武琉のもう一人の彼女は小学生時代の知り合い。

 だから……


「その少女こそが岩倉武琉のもう一人の彼女。いえ。近すぎて未だ彼女になれていなかったんだっけ?」


「ま、まさか……永久が話したの!?」


 わたしは入り口のドアに目をやって、


「もういいよ永久君。七瀬さん」


 わたしの言葉に辛そうに項垂れたまま部屋に入ってくる永久君と七瀬さん。

 七瀬さんを連れてくるのはどうかと思ったんだけど……この事件を調べ始めたきっかけは彼女の目の前で犯人に謝らせること。連れてこないわけにはいかないもの。

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