MEMORY・43 殺した相手は?
4月17日日曜日 午前1:20
わたしは真一と家に辿り着くと、家の前でさよならをする。
真一とキキが自宅に消えるのを見守って、家に帰らず商店街へと足を向けた。
商店街に着くと、あの茶封筒に書かれていた最後の文字……いや、数字を思いだす。
【TEL対象:時逆鎖無 #7 発信】
そう、彼の電話番号。
『よう、そろそろ来ると思ってたぜ』
受話早々そんな声が返ってくる。
『ニュースで知った。オッサンのことは残念だった……とぐらいしか言えねぇ。月並みだけどな』
「場所は?」
短く答える。
『覚悟はできてるか。俺としちゃ教えたくないけど、まぁやるだけやろうか』
付いてくる気……かなこれは。
「分かったわ、どこで会えそう?」
『今から商店街の方に行く、そのあたりで落ち合おうぜ』
「ええ。分かったわ」
電話を終えてしばらくすると、鎖無君が路地裏から現れる。
「こっちだ、付いてこいよ」
わたしは鎖無君と共に路地裏に消える。
積み上げた荷物の上に寝転ぶ猫を跨ぎ、通り抜けた先は、一度だけ来た裏商店街。鎖無君の横を歩きながら、わたしは尋ねる。
「鎖無君は無事だったんだ」
「オッサンが入り口だけ聞いて連れて行ってくれなかった。だから中がどうなってるとかはわかんねぇんだ」
「そう……」
わたしは小さく答え、周りを見る。
正直周りを歩いている人々は恐ろしい。
怒鳴られただけで竦みあがるだろう。でも、その人たちが鎖無君を避けるように歩いてる。
「そういえばさ、鎖無君はよく襲われないよね」
「一年前に事務所二、三個潰したせいじゃねェかな」
……なんの事務所?
「んなことより、ほれ、あそこにあるのが噂の相川運送だ」
と、指差す先には周りよりちょっと大き目の古めかしいビル。右側に入り口と、左は地下駐車場に続くトラック用の入り口。外装から見たところ四階建ね。
「ありがと、もういいわ」
「あ? 何を言って……」
【手刀 目標を気絶 威力自動制御】
振り向こうとする鎖無君の首に高速の手刀を叩き込む。なんか凄い音したんだけど、ほんとにこれで気絶だけよね?
気絶した鎖無君を表の商店街に連れだして、適当に人の邪魔にならないとこに寝かせておく。
作業を終えると、わたしは再びビルの前に戻ってきた。
【見取り図展開 オートマッピング作動】
一番上の四階が社長室。階段で上がっていくしかないわね。
何人か人がいたけれど、叫ばれたりする前に眠っていただいた。
できるだけ騒ぎを大きくしたくない。
黒い鉄の塊向けられるのも夢に出てしまいそうで嫌だしね。
会長室のドアの前に来ると、深呼吸一つで気分を落ち着かせて、わたしは目の前のドアを開いた。
「ん? 誰……ホントに誰だね君は」
ちょっと驚いた声で、目の前にいた男が声を荒げる。
厳つい顔のおじさんだ。年は四、五十代。
「お聞きしたいことがあって、やってきました。相川将蔵さんですか」
「いかにも。だがこちらには言わねばならんことは何もない。悪いが帰ってくれ」
軽くわたしをあしらって、奥へ引っ込もうとする相川会長に、わたしは勝手に話し始めた。
「相川螢」
ここからは、失敗は許されない。
「知ってますよ、居場所」
わたしの言葉に相川会長は足を止めた。
「なんだとッ!? ど、どこに」
わたしに歩み寄ってきた相川会長に、別の名前をぶつける。
「新見高志。この方……当然知ってるんじゃないですか? この辺りを嗅ぎまわっていた探偵ですから」
「何が聞きたいんだねっ。それより、螢は……螢は無事なのかッ!?」
「ええ。今はようやく落ち着いている頃かと。それよりも……なぜです」
「なぜ? 何がだね」
「なぜ……なぜ新見さんを殺したのっ」
憎しみを込めた目で睨みつける。
この人はどうしてこんなに平然としていられるのだろう?
人一人殺しておいて、なぜ落ち着いて見えるのだろう?
「ち、ちょっと待ちたまえ。確かに探偵が私の元にきたが、組員の名を聞いてきただけでだぞ!? なぜ私が殺さねばならんのだ」
え? 組員の名を……聞いただけ?
「じ、じゃあ、娘さんが家出した理由って」
「それが分かったらこれほど思い悩むはずがあるか、どこだね、どこに娘はいるのだ!? 頼む金ならいくらでも払う、娘を、娘を返してくれ、私の大切な娘なのだっ」
と、全く動かない表情で……もしかしてこれでも悩んでる顔なのか?
表情筋もっと動かした方がいいのでは? 練習しないと厳つい顔のままで誰も近づいて来ないよ? あ、でもここではこっちの顔の方が相手に表情読まれなくていいのか。
んー、やっぱり娘さん心配してるならその顔をしてほしい気がするなぁ。睨みつけるような顔のままなのはちょっとどうかと思う。




