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MEMORY・42 決意と共に

 4月17日日曜日 午前0:01


 すでに深夜を過ぎた時間、わたしは真一とキキを引き連れて峠の一番下の直角を調べていた。


「塗装……見つかるかな?」


「見つけるのでしょう?それとも、諦めますか?」


「バカ言わないでよ!」


 新見さんはわたしを危険から遠ざけるためにわたしの替わりに危険な場所を調べてくれた。

 そして殺害された。

 ……許すもんか。

 相川将蔵。こいつだ。こいつを調べたせいで新見さんは……だから、わたしが暴きだす!


「あった。真一、姉さん。多分これ。姉さんの殺害された場所に残ってたのと同じ車種の塗装が落ちてる」


 直角に曲がった曲がり角の端っこギリギリでキキが塗装を見つけた。


「なるほど。血痕が見つからないわけです」


「車に突き落とされた形よね……下がすごいことになってそう」


「行きますか?」


「行くわよ当然」


 下りれる場所を見つけて、崖下にやってくる。

 緑に囲まれた中に大地に広がる黒い染み。わたしはその近くまで歩み寄ると、しゃがみ込む。

 真一がその場で十字を切り、祈りを捧げていた。


「探偵は他人を生かし……自分も生きて帰るって……言ってたのにね……」


「人間だって生き物だもの。死ぬ時は死ぬわ」


 キキの言葉を無視して呟く。


「信条……か……」


 上を見上げたそのときだった。

 瞳に反応する何か。材質は木。いや、紙? でも形も色も違うもの。

 茶封筒が木に引っかかっていた。


「キキ、アレ。木に引っかかってるやつ」


「……了解。取ってくる」


 即座にロケット噴射でキキが飛び上がる。茶封筒を掴みあげて戻ってきた。

 わたしは受け取って……あれ、茶封筒と重なっても一つある? 手紙? 

 ラブレターっぽい封筒がある。

 まぁ、とりあえずこっちだ。わたしは茶封筒の中を見る。


 新見さんの字だ。

 調べ上げた組織の構成員。会長室辺りにある地下への直通エレベーターの隠し場所。

 そして相川将蔵の愛娘の名前。相川螢。

 さらに最後に書かれていたのは……

 そして手に入れた情報。わたしが轢かれた状況、なぜそうなったか、相川螢の証言で知った。証拠も揃った。

 わたしを轢いた犯人はもう……逃さない。


「あとは……ここの場所ね」


「姉さん、場所は書かれてない」


「そうね。もう、お手上げだわ。諦めましょ」


 落ち着いた声でわたしは立ち上がる。

 静かに立ち上がったわたしに、危機が小首を傾げた。


「どうしたの? 場所くらい調べるけど?


「いいのよキキ。帰りましょう」


 納得の行かない顔のキキの頭にポンと手を置いて、わたしは帰路に着く。

 しぶしぶキキも後に続き、真一は無言のままにキキに続いた。

 気のせいか、眼鏡がキラリと光った気がする。不気味だから光らせんなキモ眼鏡。


 新見さんはわたしのせいで死地に向かったようなものだ。

 わたしの私怨に巻き込んでしまった。

 これ以上私怨に人を巻き込んじゃいけない。


 それは……真一も同じことだ。

 キキに言えば必ずあいつも出張ってくる。

 これはわたしだけの問題だから……


 場所は既に知っていた。

 やるべきことも知っていた。

 やるべき力もここにある。

 なら、やれることをやるだけだ。

 わたしはわたしの独断で……制裁を行う。できるだけボッコボコにして警察に突き出す。

 必ずだ。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――


「と、いうわけで、絵麗奈さんが行ってしまわれました」


「アレでバレてないと思ってるのかしら? 相変わらず頭は弱いわね姉さん」


 誰も居なくなった道を、怪しい白衣の男と紫の少女が歩く。


「やれると思う?」


「一応フォローの準備だけはしておきましょうか」


「私は多分やらかすと思う。捕獲武器の仕様を要請」


「許可しましょう」


 絵麗奈が誰かを巻き込まないようにと考えるように、彼らもまた、絵麗奈の為にと動きだす。


「姉さん、こういうとき絶対ポカやらかすから。まったく手のかかる姉です」


「ですが、そういうところが彼女の魅力なんですよね。私は好きですよ?」


「真一は姉さんにゾッコン過ぎ。また一体作ってるでしょ」


 うっと呻く真一。図星であった。


「一度設計図は作りましたからね。予備です予備。け、決して自分で使う物ではありません」


「どうなっても知らないわよ?」


 真一はとても気不味そうにキキから視線を逸らした。

 そんな彼らが向う先は商店街。

 否、その場所から向かえるという裏商店街とでも言うべき場所であった。


 どうせ向う場所は同じ。彼女が好きに暴れられるように、バックアップは必要だろう。

 必要がなければそのまま帰ればいいのだ。

 けれど、二人は彼女を信頼していた。きっと、やらかすと、確信していた。

 だから、迷うことなくフォローに向うのであった。

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