MEMORY・37 彼女の真相
4月16日土曜日 午前8:30
わたしの学校は土曜日にも授業がある。
いや、授業じゃなくて補習という名に変えてあるんだけど、どっちみち午前中はそれで潰れる。
最近話題の世界史も強制的にここで補習されている。まぁ授業にでていればいいだけなので、四科目の英語は出席確認を取った後に出席していた人数の半分以下になる。皆出席だけとって遊びにでているわけだ。
学校に来ると、今日は永久も来ていた。
清彦と一緒に他愛無い会話、アニメキャラで一番好きなのはという題目で激論を繰り返していた。
わたしと一緒に登校した真一も、その会話に強制的に連れ込まれる。
「やはり赤と三倍なのが僕程ではないがすばらしいと思うね。彼を置いて他にはないよ」
「そうかなぁ、僕はやっぱアイヌ系だな。鷹と狼を操るんだよ、一番可愛いと思う」
「マダム城内はどう思うんだい?」
「私ですか? さて、アニメは殆ど見てないので……あの金髪の騎士ですか? アルトリウスを女性化したキャラクターですが騎士道というものは良いと思いますね」
「あはは、城内君はホントに金髪好きだね」
「僕が僕を好きなのには負けるだろうがねェ」
……殆ど見てないとか言ってるわりに話に入ってるし。
何を話してるのか全くわかんない。まぁ、話に割り入る気も無いけどね。
さて、今日の道中にわたしがだした質問、真一は言ってくれるだろうか?
「そういえば、この前、城内君にそっくりのがゲームにいたよ。ほら、あの北欧神話題材にした奴」
「そうですか? それは興味深いですね。で、真田君……」
眼鏡光る。真一が昨日の永久について聞く気だ。眼鏡の光具合でなんとなく分かった。
「もしよければ、あなたと岩倉君の関係に付いて教えていただきたいのですが。緒方君。あなたにも、妹の……キキと出会ったことに付いてお聞きしたいですね」
瞬間、空気が固まった。
「おやおやおや、いきなり何を言うんだいマダム城内。話の腰を折るのは美しくないよ」
「そ、そうだよ、ほら、もうすぐ先生も来るし……」
「それは失礼。では後ほどお聞かせください」
そして最後にこう付け加える。
「自分にやましいことがないのなら、逃げないでほしいものです」
残された二人は互いに顔を見合わせて……意味が分からず首を捻っていた。
うん? なんか全然やましさを感じないぞ? 言い方間違えたんじゃない真一?
4月16日土曜日 午後0:20
殆どの生徒が帰った後で、わたしと真一は、残ってくれた二人の下に集まった。
「やっぱり朧月さんか……城内君使って昨日聞きそびれたこと聞こうとしたでしょ」
「わかった? だって気になっちゃってさ。あんなもったいぶる様に言う永久君が悪い」
「そういうわけです」
「そのついでに僕にも被害が及んだんだね? まったく、酷い流れ弾もあったものだよ」
呆れたように肩を落とす清彦。
「実はさ、わたしの事故調べるついでに岩倉武琉と柏木稔の……どしたの永久君」
なに? 顔面蒼白で目を見開いてる? わたしの言葉に反応したよね、今。
「い、いや、続けて……」
「ええ。さっき言った二人のことを調べてくれって七瀬奈菜さんと岸川茜ちゃんに頼まれてね。いろいろ調べてるの」
「それで僕と岩倉君の関係を?」
「そゆこと。ついでにキキの話から緒方君にも聞きたかったわけ」
「今までの会話内容から察するにミス岩倉の彼女のことだね」
二人はしばらく考え、そして、
「そうだね、茜が調べてくれって言ってたんなら教えるよ」
「僕も、隠すほどのことでもないからね」
「僕と岩倉君は……友達つながりなんだ。そう、稔繋がりだよ」
柏木君繋がり?
「あそこにいたのは呼びだされたからなんだ。女の子だったかな。知り合いだった気もするし聞いたことない声だった気もする。多分変声機でも使ってたんだろうね。探し物が見つかるって言われたんだ。まぁ探してたのと違って岩倉君だったけど」
あそこに永久が行くように仕向けた奴が犯人?
「じゃあ、あの犬の飼い主、岩倉君の彼女は? 七瀬さん……じゃないよね」
「ああ、その彼女ならそこにいるじゃないかい」
は?
緒方の指した方向を見る……そこにいるのは永久だった。
「彼女のように親しい間だから彼女と呼んだのさ。いや、そんな勘違いを起こさせるとは僕も罪深い。ああ、でもそんなとこも大好きだよ、僕ッ!」
「あはは、犬の飼い主なら僕だと思うよ、うん。よく四人で一緒に遊んでたからソレを見た緒方君が勘違いしたんだよ」
……ちょっと待て。それじゃ何?
キキが襲われた犬の飼い主は永久?
しかも彼女とかじゃなく親しい間柄で永久が女の子っぽかったからってだけ?
緒方に期待したわたしがバカなわけ?




