MEMORY・24 再生検証
『そういやさ、ここ……また死人がでたらしいぜ。うちの学校からだってよ。二tトラック辺りと正面衝突らしいんだ。今月入って三人だろ? 呪われてるんじゃねぇかって噂まで飛び交ってるらしい』
このあたりだったはずだ。この会話の後くらいに直人が口にしたんだ。
『よく知ってるわねぇ、ニュースも新聞も見もしないくせに』
『永久の奴に聞いたんだよ。あいつこういうことに詳しくてよ』
永久か……なんであんなとこいたんだろ?
そういえば、あいつ何か持ってたわね。後でそれも調べてみるかな?
……いいや、明日直接聞こう。
『へぇ~真田君がねぇ。意外だなぁ』
『んあ? なんだぁ?』
ん? ちょっと待った。
わたしの考えに反応するように情景が停止する。
さっき……いた。
確かに何かが山側に入っていった。
丁度、角から現れてすぐだ。山に消えていった。
もう一度良く見たい。
そう思った瞬間、景色が巻き戻る。
やっぱりいた。女の子。
遠目からだけど確かに山に入ろうとしている一瞬が見えた。
顔が良く見えないな。もっと近く……
視界が狭まる。見える。
女の子の顔。体。服装。こんなこともできるのか。防犯カメラより鮮明じゃん。
年の頃は小学校一、二年といったところ。
髪は黒に近い茶色……かな? 肩にかかるぐらいの短めでウェーブがかかっている。
頭に赤い大きなリボンも付いてる。
服はいいとこのお嬢様……って程ではないけどかなり高そうな服だ。
表情は、怯え……かな? 多分。解像度っていうの? 映り具合で表情まではちょっと分かりにくい。でも、追われたいたと思えばおそらく捕まった時のこと考えて怯えてるんだろう。
この子を……追っていた? なんで?
でも、この子はもう見つかったんだろうか? それともまだこの辺りをうろついている? 別の場所に移動した?
どれかは分からない。でも、彼女を探すことが一番近道な気がする。
あの二人組みは既に一人やっている。
そう言っていた。とすれば、その現場を見た少女の口封じ……なのだろうか?
いや、それだとお嬢という言葉はちょっとおかしい。
少女とこの二人組は知り合い。それなら親しげな知り合いの少女としてお嬢と呼んだり……いや、むしろヤーさんとかだったらその娘さんのこととかお嬢とか呼びそうよね。
明日……探してみよう。この女の子。
「絵麗奈ぁ~風呂沸いたよ」
外部から聞こえるお姉ちゃんの声で思考が止まる。
ゆっくりと目を開けると、わたしはベットから起き上がった。
さすがにパジャマ姿で降りて行く訳にはいかないか。服に着替えないと。
パジャマを脱ごうとして、ふと思いだす。
―――漏電の危険もあるかと―――
パジャマをトサリと落とす。
そうだった。わたしがお風呂に入るとわたしにダメージが……
止めだ。絶対に入らないようにしないと。でも、毎日入らないと不潔に見られるし……どうすれば?
さすがに二日連続でお姉ちゃんに蹴られたくもないし、何か言い訳考えないと。
「今日は真一に風呂に入るなって言われてるからパァ~ス」
まぁ今日はこれでいいか。
「あらら、私も大事見て入らないことにしてるのに、沸かした意味ないじゃん」
お姉ちゃんが階段上ってやってくる。
「それは……仕方ないでしょ」
「先に言って欲しかったな。水道代とガス代の無駄じゃない。母さんたちの仕送りはアンタの通学資金だから私が働かないといけないのよ」
「いいじゃん二、三十円もいかな……」
「しゃ~らぁっぷ。それ以上言うと私はアンタを時を止めてでも消さねばならなくなるわ」
う、うあ……お姉ちゃんの後ろになんか無駄無駄言ってる幽霊みたいなものが見える気がする。気のせいだけど凄い殺意だけは確実に感じるよ。この、バケモノめ。
「いい? 生活費を払ってるせいで同年代の友達と遊びに行くことも飲みに行くこともできないわけよ。わかる? 遊ぶ金が余らないのよ。合コンもいけないの。彼氏欲しいの! だからこれ以上一銭たりとも無駄にしないでね? 絵・麗・奈」
「は、はい……」
こ、恐い、お姉ちゃんの笑顔は恐すぎる。
次に無駄遣いしたら確実にキレるなぁお姉ちゃん。
飲みに行きたいくらいストレス溜まってるみたいだし。
「よぅし、分かったら早く電気消して寝ちまえぃ妹よ」
わたしはお姉ちゃんの見ている間に電気を消して布団にもぐりこむ。
お姉ちゃんの気配がなくなるまでじっと布団の中で耐えてるうちに、そのまま寝入ってしまった。
機械でも眠るのね。
いや、こんな思考してる時点で本当に寝てるのか疑問だよ。
実は記憶だけ素体に入れられただけの機械人形だったりとか、しないわよね?
さすがにちょっと恐怖を感じたわたしだった。




