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MEMORY・15 機能説明

「それで、生活に支障のある程に壊れた場所があればアラームがなるように設定しておきました。今朝のもアラームは鳴っていたと思いますが、どうですか?」


「え、あ、うん。その玉子焼きって塩?砂糖?」


 真一が呆れた。

 いや、うん。聞いてなかったよ、めんご?


「塩砂糖です。辛甘いですよ」


「甘辛いんじゃなくて?」


「ええ。それより、聞いていないのでしたら後でメモリ再生をして聴いておいてください」


「メモリ再生? 何それ?」


「メモリ再生は……あなたが体験した記憶が海馬に蓄えられることから、そこ……海馬から記憶を検索して完全に再生できる能力を付加してみました。上手くいったかは分かりませんが、目を閉じて今の話のきっかけを思い出してください。情景が再現されるはずです」


 言われてわたしは目を閉じる。

 閉じた目の中で今さっきの情景が流れだす。

 わかった。これってこの身体になって最初に見たわたしの殺害された現場のヤツ。

 アレがメモリ再生だったのね。


 わたしが見聞きしたものなら、例えわたしが聞き逃していても、記憶には焼きついている。

 もし、これが人間なら、忘れるという現象が記憶を失わせてしまうけど、このメモリ再生はより鮮明に周囲の音も拾って記憶されている。

 例え私自身が聞こえてなかった声とかであっても、記憶に刻み込まれていれば音声まで再生してくれるのだ。

 だから……


「ねぇ、ホントに知らないの?」


「ええ。武琉に誘われたって聞いただけで私は知らないわ」


 こんな風に近くの声を拾ってくれる。って、何今の会話!?

 わたしは目を開いて真一を見た。


「どうしました?」


「人がいる。入り口のほうだけど、わたしたちの話聞かれてないかな?」


「それはないでしょう。メモリ内でしか声が聞こえてないのなら囁き声などだったのでは? おそらく距離が離れすぎていて肉声は聞こえてないはずです。ですが丁度いいですね」


 真一がそぼろと炒りタマゴ付きのご飯を頬張って、


「その人が今いる位置をそこから割りだしてみてください。サーモグラフィーなどで調べたりできるはずです。これも絵麗奈さんが使おうと思うことでできます。うまく使えるかどうかは私には分かりませんので報告してください」


 つまり起動テストでもする気?

 まぁ、真一は機械の身体じゃないからテストしたくても私から聞くしかないのか。

 わたしはサーモグラフィーなるものを使おうと念じてみる。

 瞬間、視界が変わる。青と赤と黄色の世界。人型熱反応が二つ。ここからは十メートルもない。


「ええと、やっぱり屋上への入り口付近に二人いるね」


「では次に人物検索をかけてみてください」


 わたしの近くにある赤い熱源が喋る。

 真一なのに真一に見えない。ああ、サーモグラフィーで眼鏡が眼鏡に見えないからだ。

 あ、でも意外と眼鏡って低温ね。耳元とかはちょっと黄色だけど。

 サーモグラフィーを切って検索をかける。

 相手は見えないけど目の前にいるのが分かっていればでてくるらしい。

 知ってる人なら……なんだけどね。


【UNKOWN 人間 ♀ 詳細 UNKOWN】


 ……まぁ、結果は分かりきってたけどさ……


【岸川茜 人間 ♀ 詳細?】


 あら、隣のクラスの茜ちゃんだ。


「二人のうち、一人はあんたも知ってる子だったわ。ほら、隣のクラスの茜ちゃん。永久君と仲が良かった」


「そうですか。では説明に戻りましょうか」


 ……それだけ!?


「使い方は理解できたみたいですし、彼女たちがこちらに来ようと害はないでしょう。ですから放っておきます。さて、セーフティモードの説明をしておきましょう」


「セーフティーモード?」


「はい。絵麗奈さんだけでは回避できそうにない危険な事態に陥った時に機械が自動で解決してくれる機能です。この度のようにトラックなどに衝突などしないようにと付けておきました。ただ。それに伴い追加したオプションが……少し調子に乗りすぎてしまいまして」


「調子に乗りすぎたって……あんた何付けたのよ?」


 わたしの問いに、俯きかげんでニィっと嫌な笑みを浮かべる。眼鏡も怪しく光っていた。


「いえ、大したものでは。ただ……対戦車用対抗策は必要なかったと反省しています。ですが、ご安心を。ロケットパンチは付いてませんので」


 ……何を付けたのよ一体?


「次はあなたのコーティングです」


「なにそれ?」


「そうですね。たとえば感電を防ぐラバーコーティングや耐熱加工と言えばよろしいでしょうか?」


 なるほど、つまり、ある程度の暑さなら耐え切れるようにとかそんな加工の説明ね。今までの話じゃ温水には耐性が殆どないんだっけ。


「ちなみに、耐電についてはかなり力を入れましたが、耐熱はまったくといっていいほどありません。100度もあれば動かなくなって融解を起こします」


「はぁぁッ!?」


 何よ、融解って! わたし溶けるのッ!?


「あまり大きな声をだされては……お二人が気づいてこちらに来られますよ」


 真一のムカつくほどに落ち着いた言葉に納得いかないながら押し黙る。


「どういうこと?」


「つまりですね。熱いところでは熱暴走を引き起こすということです。例えばサウナとか火事現場に突入したりした場合ですが……」


「サウナはともかく火事現場突入はめったにないと思うけど」


「とにかくです、そうした場合、内部の温度が下がりきれずに熱暴走が起こります。処理が遅くなり、体の動きが緩慢に、さらに体内で発火の恐れもありますし、精密部が変形、融解を引き起こすでしょう。一応、人が耐えられるくらいならば大丈夫かとは思いますが……それ以上の熱は危険です」


 ……お風呂もサウナもこれから一生入れそうにないわね。

 シャワー浴びるの大好きなのに。

 これは早急に改善してもらわないとだわ。

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