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MEMORY・13 機械初登校

「バブル吸収加工?」


「腹の弾力を再現するのに内部の精密機械が痛みやすくなるので取り付けてみた衝撃吸収用の弾力性のある泡です。常に皮と内部の間で衝撃を吸収できるように循環性の泡発生器を取り付けたのですが……普通の生活で受ける程度の衝撃には十分に対応できるんですがね。澄夏さんの膝蹴りは吸収できなかったようです」


 お姉ちゃん……アンタなにもんだ?


「処置をしておきましょう。下の階に行ってください」


「下の階ね……もしかして裸になったり?」


 ちょっと冗談っぽく言ってみたのだけれど、真一の眼鏡がキラリと光った。

 あれ? もしかして正解?


「では下でお待ちください」


 何か嫌~な笑みを浮かべる真一。

 う、嘘でしょ? ねぇ、嘘だよね? 冗談だよね?


「衣類は籠にでも入れておいてください」


 わたしが部屋を出ようとしたとき、真一が不吉な言葉を呟いた。

 それでも、バブル機能というものを修理しておかないと、アラームが五月蠅いし。

 瀬に腹は返られないかも知れない。

 ああ、でも、真一に見られるなんて地獄以外のなにものでもない。

 確実に嫌な思い出ベストファイブ中最上位に位置することは間違いないだろう。


「用意はできましたか」


 カプセルのあるあの部屋で、上着に手をかけようとした瞬間、その声が背後から襲ってきた。

 ビクリと身をすくませ、ゆっくりと振り返る。

 楽しそうに笑むキキだった。


「あ、アンタねぇ、驚かさないでよ」


「真一の声を真似てみた。ボイスチェンジ機能。驚いた?」


「機械だから本物みたいだったわよ。で、何しにきたのよ?」


 キキはわたしに近づいて、一つのドアを差す。


「あそこが処置室。メンテルームに入りきらなかったから」


 つまり、わたしが今から行くところってことね。


「安心して、処置は私が行う。真一じゃないから」


 キキが冷めた声で言う。

 わたしはものすごく気が楽になった。

 小柄なキキに処置されるってのも不安ではあるけれど、真一に見られるよりはマシである。


「そ、そうなんだ」


「真一の方がよかった?」


「いえいえいえいえ、滅相もございません。我が義妹の実力を信頼してるわよ」


「そう? じゃあ真一に止められた増設をしてもいい?」


「増設?」


 ドアに向かいながら、隣を並んで歩くキキに尋ねる。


「胸ミサイルとロケットパンチ。あと自爆装置。私には付いてないから、付けてみたいの」


「お断わるッ!」


「即断? 無駄な丁寧語がついてます姉さん」


「ワザとよワザと、遂にアンタも真一と同じ部類に入ってしまったようね。義姉さんは悲しいわ」


 悲しんで見せたけど、キキは全く気にした様子もなく、作業に取り掛かる。

 相手にされなかったショックを抱えながら、わたしはキキに治療を受けた。


 4月14日木曜日 午前8:30


 メンテナンスを終えたわたしは真一と学校に向かった。

 わたしの学校は公立春風高等学校とかいうどこにでもありそうでなさそうな名前の学校だった。

 校舎は三つ。


 校門から校庭を経て真っ直ぐ行ったところにある校庭と校舎を分け隔てているコンクリートのおっきな階段を登って目の前が第二棟。

 それから渡り廊下を介した左側に第一棟と右側に第三棟が並行に並んでいて、校門から校庭を越えて第三校舎より右側に、これまた校舎と並列に並んで第一体育館、武道館、図書館、食堂が連立している。第一棟の向かいにはクラブ棟とプール。それから第二体育館。

 校舎を挟んだ校門の反対側には裏門がある。


 わたしは二年なので第一棟。

 丁度体育館への渡り廊下の近くに下足場があるので、校門から左に折れて校庭突っ切りコンクリートの段を上がっていかなきゃならない。

 なんていうか建設構造に難ありだよね。


 校舎は全部三階建てで、二年三年はこの第一校舎。

 一年だけがなんでか知んないけど第二校舎に特別教室と一緒に入れられている。

 ちなみに第三校舎は職員室など教員関係が多い。


 2‐Dを目指して真一の前を歩く。

 真一の話じゃわたしのことは何にも伝わってないだろうとのことで、わたしも安心して学校に行ける。なんで死んだあんたがここに!? みたいな事を言われないですむってこと。

 学校に着くと上履きに履き替え、廊下を歩く。

 その間真一はわたしの横で無言でついてくるだけ。


 やっぱりこっちから話を振らないと一っ言も話そうとしない。

 何考えてんだろうね。頭の中見てみたいよ。

 2‐Dの教室のドアを開く。その瞬間。


「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁッ!? 朧月が化けてでたぁぁぁッ!」


 教室内がパニックに陥った。いや、なんで伝わってんの!?


「おい、眼鏡……?」


 わたしは後ろの真一に問いかける。


「どういうことかな……これ?」


「さぁて、私には全く。どうやら絵麗奈さんが死んだという警察の発表でもあったのでしょうね。そこまで私も管制などできませんよ」


「そう……つまりただの役立たずってことね」


 真一が落ち込むのを背後に感じながら、わたしは自動人物判別システムを切って阿鼻叫喚の教室へと足を踏み入れた。全員の名前出るの何とかしてくれないかしら?

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