「予想」と「予知」
ひょんなことから始まったユウとの同居生活。
もっとも数時間しか経っていないけどな。
ちなみにアイは邪魔になるからという理由で強制的に帰らされていた。なぜか妙に抵抗はしていたが。
そんなこんなで二人きりになったわけだが。
「ハルキさん、チャンネル変えないでくださいよー。今、いいところなんですか」
ご覧のようにだらけきっていた。ユウはテレビの時代劇にはまったのか延々と見ている。なんでも、ちょんまげをしている人間が真剣に演技をしているのを見ると無性に笑えるらしい。ただそれって、楽しみ方としてはどうなんだ??
「分かった分かった。ところでお前、いつまでここにいる気なんだ?」
「うーん、とりあえずハルキさんの安全が確保できるまでですね。あの新入りの子が襲ってくるかもしれないし」
「シャムがか? 流石に心配しすぎのような気がすると思うけどな」
どうもユウはシャムのことを警戒しているな。まぁ、さっきも殺気が云々言っていたから、それが原因なんだろうが。どうも俺には、あいつが悪いやつには思えないんだけどな。
「それならそれで別にいいんですよー? こういうのは警戒しておいて損はないですから」
「まぁ、お前がいいなら、それでもいいけどな。でも、時間がきたらどうするんだ?」
「それまでに織姫ちゃんがいたら代わりますよー。織姫ちゃんでも対処できると思いますからー」
織姫が? むしろあいつはシャムとか気に入りそうなタイプだと思うけどなぁ。
「ちなみに織姫がいなかったら?」
「・・・その時はその時です。でもその心配はいらないと思いますよ?」
「なんでだ?」
「行動するならゲートが繋がっている今のうちにします。向こうからしたら次があるか分かりませんからね。少なくとも私ならそうします」
「こういう時のお前の勘って当たりそうで嫌だわ」
「敵意には私は敏感ですからねー。自慢じゃないですけど十中八九当たると思いますよ?」
て言うことは、間違いなく襲われるってことじゃないかよ。言っておくけど、ここ賃貸だからな。追い出されたら泣くぞ? まじで。
「勘弁してくれよ…。一応聞くけど、ユウならシャムが襲ってきてもすぐに取り押さえられるものなのか?」
「まぁ、問題ないと思いますよ? ただ、ここ狭いですからねー。もしかしたら、ぐちゃぐちゃにはなっちゃうかもしれませんけど」
いや、その言葉は聞きたくなかったなー。
「部屋を荒らさずに何とかしてほしいんだけど、どうにかできるか?」
「私もできる限りそうしますよー。ただ絶対ではないですからね?」
「それでもいいから頼むよ。あんまりやりすぎちゃうとこの部屋を追い出されるかもしれないからな」
「ハハハ、ハルキさんにはお世話になってますからね。そうならないように頑張りますね」
是非ともお願いします! 流石に住むところが無くなるのは勘弁だぞ。
「でも、相手が爆弾とか使ってきたら諦めてくださいね? 流石に衝撃波とかからは守ってあげれないですから。多分、わたしは大丈夫ですけど」
「怖いこと言うなよ。ホントに起きるかもしれないだろ?」
「まぁ、こんなところでそういうの使ったら相手もただじゃすみませんからね。その心配はあまりしなくてもいいと思いますけど」
「だったらそういうこと言わないでほしかったな」
こういうのって下手に声に出すと実現しちまいそうで嫌なんだよ。言霊とかを信じているわけではないけどな。
何てことを考えていると、ピロピローとチープな電子音が部屋のなかを駆け巡る。
「おっと、ハルキさん良い頃合いですね。ご飯にしましょー!」
「お前はいつもそればっかりだな。まぁ、別にいいけどな。」
さっきの電子音はちょうど米が炊けた音だ。あまりにユウがお腹空いたと連呼するものだから用意してたんだった。
レトルトのカレーくらいしかないが、ユウは何でも喜んで食べてくれるからな。用意する方としては楽で助かる。もっとも、食費の負担が増えるのは素直に痛いが。
と、そんなタイミングで、ガタガタと押し入れが震える。
「・・・やっぱり私の勘が当たりましたね?」
「いや、まだ分からないだろ?」
「ハルキさんも往生際が悪いですねー。とりあえず私の後ろにでもいてくださいね?」
何ともないことを祈ってはいるが、きっと良くないことが起こるのが想像できてしまうのが、嫌なところだ。