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「高貴」と「狂気」

「・・・これ、美味しすぎません? もっと欲しいですわ」


 目の前で、ハンバーガー(税込110円)を嬉しそうに頬張るエル。ちなみに、エルという名前は俺がつけたあだ名だ。というか、ここに集まる連中は基本的に俺がつけたあだ名でやり取りしている。

じゃあ、なんでエルって名前にしたかというと。その理由は至って簡単で、こいつがどこぞの国の王女様らしいからだ。だからロイヤルから連想してエル、簡単だろ? ちなみに後で調べたら、ロイヤルのスペルはLじゃなくRだったんだけどな。


「あぁいいぞ。好きなだけ食べてけ」


 けど、100円のハンバーガーで満足する王女様ってどうなんだ? でも考えてみれば、安いからダメな物って訳ではないしな。ましてや、今まで触れたことのないものなら、その価値なんて分かりようもないか。 


「あら、ありがとうございます。気が利きますわね」


 そう言って、机の上のハンバーガーに手を伸ばすエル。

 が、ピシッとその手が叩かれる。もちろん、俺がやった訳じゃない。

 その犯人は俺の横に座っているこいつだ。


「ちょっとハルキくんに迷惑掛けないでよ。全く意地汚いんだから」


 が、どうやらエルがハンバーガーをお代わりしようとしたのが気に食わないようだ。

ちなみにこいつのあだ名は織姫。ネーミングの法則が違う気がしないでもないが、そこはご了承ください。だって、見た目が日本人ぽくて出会ったのが七夕だったんだからしょうがないだろ?  

それとこいつは偉い人の付き人みたいなことをしているらしい。詳しくは知らないけどな。

話は逸れたが、何故か織姫はエルと仲が悪い。何かあれば直ぐに揉めるから困る。まぁエルは多少我儘な性格でもあるから、真面目な織姫には引っかかる部分も多いんだろう。

余談だが織姫はアイとも仲が悪い、まぁあいつの場合はユウくらいしかまともに接してくれていないような気もするが。


「いや別に俺は気にしなー」


 とはいえ、今回は俺も許可しているわけだし全然問題はない。そのことを織姫に伝えようとするが、ピシャリと途中で遮られてしまった。

 そしてにっこりと諭すかのように優しい声色で話す。


「ハルキくんも、優しいのは分かるけど迷惑な時はきちんと言わないとだめからね」


 どうやらこいつには俺が無理をしていると思われたらしい。どうも織姫は俺に対して過保護な気がしてならない。


「別に迷惑じゃありませんわよね?」


「あぁそうだな。織姫、俺がいいって言ってるんだ。別に気にすることないぞ」


 一方のエルは、さも当たり前かのように俺に問いかける。まぁ、別に本当に迷惑とは思っていないから、問題はないんだけど。


「まぁ、ハルキくんがそう言うなら。でも迷惑だったら言ってね。ハルキくんの周りにはワガママな子が多いから」


 ・・・確かにそれは否定しないが。でも、お前もベクトルは違えどワガママではあるからな。そこのところ気を付けて欲しいが、口には出せないな。・・・あとが怖いし。


「好き放題言ってますけど、あなただって相当だと思いますわよ」


 と思ってたら、この王女様は容赦なく言いやがりましたね。頼むから揉めないでくれよ。


「私のどこがワガママなの? え、外見だけじゃなくて頭の中までおかしいのかな」


 ほら始まったよ。言っておくがエルの外見はそこまでおかしくはないからな。どっちかというと織姫の服装の方が外では注目されると思う。五十歩百歩だけど。

 ちなみに、エルはいかにもお嬢様みたいな風貌だし、織姫は巫女服というかメイド服を混ぜたような、よく分からない服を着ている。


「はぁ。そうやって一々突っかかってくると安い女だと思われますわよ。淑女たるもの、どっしりと構えてませんと」


「え、淑女? もしかしてあなたが。全く笑えちゃうね、ハルキくんもそう思うでしょ?」


 いや、俺に振らないで欲しい・・・。どっちに付いても火傷することになるじゃん。でも、どっちかというとエルの方が淑女感があるのは間違いない。絶対に言わないけどな。


「いやー俺には分からないな、ハハハ」


「ハルキ、男らしくありませんわよ。こういう輩にはガツンと言ってやらないとダメですのに」


「ハルキくんのこと悪く言わないで。大体、ハルキくんは私の悪口なんていう訳ないから」


 後が怖いからな。心の中だけに留めています。とはいえ、この雰囲気は何とかしないとな。


「まぁ取りあえず落ち着けよ。織姫もハンバーガー食べろよ、俺のあげるからさ」


「え、ハルキくんが私に。ありがとう! 大事に食べるね!!」


 ふぅ、どうやら落ち着いたようだな。どういうわけか、織姫は俺が何かあげると大人しくなるからな。・・・なんだかペットみたいなやつだな。


「全く安い女ですこと」


 ぼそりとエルが呟く。

 おい、余計なこと言うんじゃない。お前も黙ってハンバーガー食べてろ。幸いなことに織姫には聞こえていないようだからよかったが。


「ハルキくん、これ初めて食べたけど美味しいね。ちょっと味が濃い気もするけど。私、普段は自分で作ったものしか食べないから新鮮」


 どうやら織姫はハンバーガーが気に入ったようだ。これで、取りあえずは安心だな。人間、好きなものを食べている時は機嫌も良くなるものだからな。


「そういえば織姫は料理が上手だもんな。前に作ってくれた料理も美味しかったし」


 まぁ、その時は一緒にいたユウにほとんど食べられてしまったんだが。今になって惜しく感じちまうな。


「そんなそれほどでもないよ。でもハルキくんさえ良ければ、また作ってあげるね」


 くねくねと織姫が満更でもないように言う。是非、作ってほしいがその時はユウしかいない時にお願いしたいもんだ。織姫と二人きりはちょっと怖いし、他の奴らだと暴走する可能性があるからな。その点、ユウは基本的に無害だし腕っぷしも強いし安心だ。


「あぁ、その時は頼むよ。ところでエルは料理とかするのか? 王女様って言うくらいだししないか」


「確かに、私は料理はしませんわね。基本的に出てきたものを食べるだけですわ」


 まぁ、王女様ってそんなもんだよな。なんて頷いていると、織姫が勝ち誇ったような顔をしているのが分かった。どうやら、俺がさっきの争いを再発させてしまったのかもしれない。






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