Memory...005
「確か五年前だな」
「あー、そうかそうか。お前がちょっとだけ戻ってきた時だっけ?」
あまり興味も無かったんだろう。また女のケツを見ながら会話をするレオンに俺は溜め息が出た。気にしていても仕方がない。
「そういえばレオン、仕事は?」
「ああ、なんとか。お前はどうなんだ?」
「可もなく不可もなくってところだな。適当に働いてるよ」
「お前は昔から何事も無難にこなすから羨ましいよ」
「地元の上場企業に就職した奴がよく言うぜ……」
「お前だってIT関係の仕事で大成功してるんだろ。お互い様だぜ」
「まあ、お互い順風満帆ってことで……」
「おう!」
レオンとフィストバンプをして他愛ない会話を小一時間程した後、俺たちはレオンの住む家へと移動することにした。ここから車で十分ほど進んだ所にレオンの家があるのは覚えていたが、車は先に実家に置いてきていたため、俺はレオンの車の助手席に座った。
窓を開けて入り込んでくる風が心地良かった。
「そう言えばレオン、ジェシーは?」
レオンは笑いながら気楽に返事をした。
「ああ、数年前に出ていったよ。あんたとはやっていけないってさ」
「引き止めなかったのか?」
「引き止めたって女は出ていくだろ?」
口角を上げてニヤリとするレオンに俺は苦笑した。
「まあ、それもそうか」
「人間も動物も変わらない。交尾して満足すればそれでいい。居心地が良いなら残るし、悪いならその場を立ち去る。理性があるって言っても他の生き物と何も変わらない。俺より他の奴の方が良かったんだろ」
「とんだ言い草だな」
「ハッハ、そんなもんだろ?」
「まあ、お前らしいよ」
「ありがとよ」
レオンは気分良さそうに運転を続け、俺は赤レンガの街並みを眺めながら通り過ぎていく人達の顔を眺めていた。
久しぶりに会うとこんなにも会話が途切れるのかと思ったが、別に無言の空間でも居心地が悪いわけじゃなかった。