Memory...002
「だってこいつ気持ち悪いんだもん!」
周りの子どもよりも一回り大きい男の子が言い訳を述べた。俺はある程度男の子を砂を払ってから、目を洗ってくるように伝えて男の子を行かせた。
五人居る子どもたち一人一人に指差しで俺は静かに怒鳴った。
「俺からしたら全員、一緒に見える。全員、子どもだ」
「違う! あいつは気持ち悪いんだ!」
「気持ち悪いって、何が気持ち悪いんだ?」
「何がって、一人で笑ったり、何考えてるのか、分からないし……」
男の子の勢いが少しずつ弱まっていく。
「じゃあ、君たちは一人で笑うことはないのか?」
「それは……でも、あいつは気持ち悪い!」
「ああ、はいはい……」
子どもに正論でぶつかると全てすっ飛ばして結論を出すから嫌いなんだ。
「元々君たちは友達か?」
「う……」
「友達だったんだろう? なんでこうなったんだ?」
「なんでって……」
子どもたちはその「何故」を振り返るが、その答えを見つけられずにいるようだった。
「あの砂をかけられた彼を見て君たちはいじめだと気付かないのかい?」
「……」
「友達になるきっかけも、嫌いになるきっかけも、それはすごく些細なことだ。だが、少しの些細なきっかけが人を殺すことだってあるんだ」
「……」
二人が半泣きになると、他の子たちも次第に言葉の重みを理解して泣き始めていた。
「君たちに憧れの人はいるかい?」
重い空気の流れる中、その質問にだけは全員がイエスと答えてくれた。
「もし、誰かに意地悪したくなったなら、憧れの人に心の中で聞いてみろ。僕の行いは、私の行いは正しいですかって。分かったか?」
子どもたちに目線を合わせて胸に拳を添える。
泣いてしまい答えられない子どもに俺は念を押した。
「分かったか? 返事は?」
「……う、うん」
男の子が声を振り絞って返事をし、俺は他の子どもたちを一人ずつ見つめた。
「他は?」