牢屋での目覚め
「...ぉ...て..........起きて!!」
「ぅん?ここはどこなんだ?」
薄暗いレンガ造りの牢屋のような所で目覚める
[転移者No.8 今すぐ牢から出なさい]
頭に知らない声が響く
「君のことだよ 早く行かないとひどい目にあっちゃうから起こしたんだ」
レンガ造りの壁の向こう側から中性的な声が聞こえる
「お前は?」
「いいから行って!」
「分かった じゃあ戻ってきたら教えろよ?」
牢から出ながら整理してみる
日本に核が落ちて自分はあのデバイスを使ってこの世界に来た 或いは間に合わずに死んだからここは死後の世界 前者だと仮定して話を進める
[そのまま真っ直ぐ歩きなさい]
この声は頭の中に直接響いてくる割に隣の部屋にいたあいつにも聞こえてた 漫画によくある念話を無差別に聞こえさせたのだと予測してみる 仮にもゲームだと母さんは言っていた
[目の前の扉を開けなさい]
指示通りにドアノブに手をかけるとドアノブが光り がちゃりと鍵が開く音がした。
扉を開けるとレッドカーペットの一番奥に中世的な服装をした女性と両サイドに複数名の甲冑を着た人達がいた。
[ようこそいらっしゃいました 私は 私はジェフィル王国第2王女のカイナ=ジェフィルと申します]
そう口も開けずに言ったのはおそらく一番奥の女性だ。 表情でわかった。 その隣には怪訝な顔をした老いた兵士がいる。
[あなたは誰なのですか? 本当ならここは人の身でないイレギュラーがくる場所のはずなのですが]
「イレギュラー?」
[ええ 実はあなたより以前にも一人だけあなたのような理性ある人がここを通って行きました おそらくあなたも牢で会ってるはずです]
王女は困ったような顔をする
「まずはイレギュラーがなんなのか教えてくれないか?ここに来て数分と経ってないからな」
[よいでしょう イレギュラーというのは]
そう言い彼女は話し始めた。
イレギュラーというものはこの世界に不定期に場所もランダムに現れる人間のことらしい。
と言ってもその人間は理性がほぼなく、本能だけで生きているため、非常に凶暴だとか。
しかもなぜかは分からないがイレギュラーは人の身を外れているため身体能力がかなり高いらしい。
「さっきそのイレギュラーが牢屋で現れるような口ぶりだったが矛盾してないか?」
[それは我々が自分たち国土の範囲に限ってですがイレギュラーのスポーンする場所を固定する事に成功したからです そして更に隷属の刻印をスポーン時に刻んで我々に従うようにしました]
「すると俺にもその刻印は刻まれてるってことは隷属させられてるってことかよ 見ての通り俺はイレギュラーじゃないんだから解いてくれよな!」
[分かりました]
すると彼女は口を開いて何かを唱え、彼女の指先から黒いオーラが放たれて英斗の胸に向かってふわふわ飛んで行った
「これで解けたのか 助かったぜ それで」
『“跪け”』
(なんだ?体が勝手に...ッ!!)
「ふふふ...お馬鹿さん。 誰が理性を保てていない転移者だけがイレギュラーだと言ったのかしら? もちろんあなたもイレギュラーよ あはは!!」
自分の意思に反して体が勝手に動いていた
「でかしましたぞ姫!これでジェフィル王国も一歩安泰に近づきましたぞ!」
隣に立っていた老兵がそう言った
「ふふふ...転移者No.8さんには折角ですので教えて差し上げましょう!私たちがイレギュラーたちに普段使ってる隷属刻印は知性が高いと効き目が悪いのですわ だからさっき人間用の奴隷刻印に書き換えたのですわ!
あなたはジェフィル王国の奴隷になり上がったのよ 光栄に思いなさい!」
(迂闊だった...ここは日本じゃないってことを忘れていた それに言葉が通じるようになっている...?)
『“牢へ戻れ”』
「また明日からこき使ってやるわ!それまで休みなさい」
レッドカーペットを通る途中、横を見ると兵士たちの目はみな光を失っていた