日常の最期
今日も一日ただただ学校で教師が黒板に書いた言葉をノートに写すだけの作業だった
人生で一番活発な10代後半を受験で潰すのが勿体無くて仕方ないとすら思っていた
「映画みたいに急にゾンビだらけの世界にでもなってくれないかぁ? なんなら地球滅亡でもすればいいのになあ」
そんなことを思うほど今の生活に不満を持っている
そんな日の学校帰りにオカルト好きの母親が家にいた
「ちょっと英斗みたかい?今朝の新聞」
「見てねえよ 遅刻寸前だったんだから朝ご飯ですら食えてなかったんだから」
「ゲーム好きのあんただったら絶対欲しくなると思うけどねえ ほら これよこれ」
その新聞を見ると
[TR-Mind]〜 現実に疲れたあなたへ!全く別の世界へ案内します そう、このデバイス一つで 〜 意識転移装置
(税込) ¥ 9,800,000〜
「たっか!!!確かに欲しくないわけでもないけど流石に買うやついないだろ...」
「そういうと思ったよ」
そういう母親はニヤニヤしながら黙ってこっちを見ている
「母さんまさか...」
「そのまさかだよ そろそろお父さんが帰ってくると思うんだけどねえ 一応ゲームの類のものだからあんたも気にいると思うよ」
確かに意識を機械に転送する装置とかオカルト好きの両親が見逃すわけないけど本当に買うとは思ってなかった というか一応ゲームなんだ
「ただいまー買ってきたぞー!」
「まじで買ってきやがった....」
帰ってきた父親もオカルト好きで脇に白いダンボール箱を抱えていた 親父は色々話しながらリビングに入る
「こういうのは説明書を先に見るのが楽しみなんだよ あ 英斗は受験勉強でもしてるんだな がっはっはっは!」
「分かったよ あとで俺にも見せろよ親父」
そういって自分の部屋に戻って父親に見せてと頼んだ約束も忘れ 夕食も食べずに 勉強が終わるとすぐに寝てしまった
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ブゥゥゥゥゥゥゥッゥウウウウウウン
「うわぁっ!!!!」
夜中の2時 突如として外から身の毛もよだつような低音が聞こえてベッドから落ちる
「いってぇ 頭打った.... 何が起きてるんだよまったく...」
そう思いサイドテーブルに充電させてたスマホを取り出す
[“国家不明”からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難してください]
「そんな無茶な うちは木造だしどうするんだよ うわぁ...死んだわ」
周りの家々にも頑丈そうな家はなく 現代日本に地下がある住宅はほとんど無いわけで近くに落ちた場合 助かるわけがなかった
(そうだ 親父と母さんを起こしてこないとな)
そう思って両親の部屋に入ると誰もいなく
真っ暗な部屋にPCの画面が付いており 部屋が若干照らされていた
「もう起きてるのか?だったらリビングにいるはず」
リビングに行ってみるも誰もいなく 更に言うと駐車場に車も駐車されてなかった
(こんな時間にどこに行ってるんだよ 電話するかー?)
そう言って電話をかけてみるもそれも出ない
全てを諦めて部屋に戻って寝ようとすると両親の部屋から漏れ出すPCの光が再び目に入った
(そういえば親父が買ってきてたデバイス触ってみるか PCにちょうど繋がってるし)
両親のPCに触れてみると画面に
[英斗 君を見捨てたわけじゃない このデバイスを使って生き残るんだ 私たちはもう既に使った 次は君の番だ]
メッセージを読み終わる頃には外は騒がしく パニックが起こり始めていた
(えぇ....)
何もしないわけにはいかないのでPCに繋いであった古くさいラジオのような見た目をしたデバイスについた窪みに右手の人差し指を差し込んだ
「チューニング?チューニングってなんだよ?番号とか知らないぞ」
両親が何か書き置いてないか探し始めるが何もなかったのでダメ元でアナログ時計の午前2時に向いてる針の角度と同じ角度にデバイスのつまみを回すと緑色のランプが点いた
すると夜空がミサイルで明るくなり 轟音が鳴り始めた
「頼む、はやく起動しろぉぉ!!」
すると指先にチクっとした痛みがして意識を落とす
ほぼ同時に英斗の住む周辺一帯が更地になった