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「よして、そんな、とんでもない」
「いや、受け取っておくれ。いいからいいから」
「そんな。でも……」
「今月は客が多くて儲かったんだ。僕のことは何も気にしなくていい」
「…………」
「ん、どうしたんだい?」
「わたし……」
「うん、言ってみな」
「……。わたし、夫と別れたほうがいいのかしら」
「…………」
「あなたは、本当はそうなることを願っているんでしょう?」
「はは、まさか」
「うそ。じゃあなんでこんなこと」
「いや待って待って、ああ、じゃあ恭子ちゃんはどうするの? まだ小学生でしょ」
「あなたにはその気がないの?」
「…………」
「そうじゃないのなら、もうこんなことはやめてください。有り難いけれど、心が、複雑に絡まりあって、苦しく締め付けられるんです。こんなことなら、いっそ貧しいほうがいいかもしれない」
「ご、ごめんなさい……。そんな風に思っているだなんて」
「本当に、そうする気はないの」
「…………」
「…………そう。ごめんなさい。いつかこれまでの分を返しますから……」
「そんな、それは、貰ってください」
「……いえ。ごめんなさい。失礼します」
(一体、僕は何がしたかったのだろう。ただあの人に幸せになって欲しかっただけのに。
僕にはそんな、荷が重すぎる……。
中途半端な気持ちでした結果がこれだ。まさかあの人を苦しめていたなんて。
もう、僕にはあの人に近寄る権利すらない。一体、僕は何がしたかったのだろう……)




