なんでも許すから。
逃げられないから、現実っていや。
見えない。愛しい人の姿が何処にもない。
逃げられないから、現実っていや。
聞こえない。恋しい人の声が何処にもない。
必然の予感。つま先立ちの言い逃れには意味はない。
逃げられないから、現実っていや。
すがりつくように、か細い電話のベルを数え続ける。
逃げられないから、現実っていや。
幕引きの予兆、怖いほど知っている。
呼び出しのベルがいつもと違うタイミングで止まる。
逃げられないから、現実っていや。
聞き慣れた声が、未知のリズムに乗って押し寄せる!
聞き慣れた声が、嫌な現実に突き落とす!
夢って、なんでも許すから、好き。
知っていたのに、気づかない振り。
夢って、なんでも満たすから、好き。
支えられてるのに、恐慌に挑む振り。
夢って、目隠しするから、好き。
遠くに聴こえる喧騒が、置き去りにされた孤独を思い出させる。
夢って、痛いところを舐めてくれるから、好き。
地味な幸せさえ連れ戻せないと知ったから。
孤独は、話し終わらない通話が切れてから始まるから。
怯えていたけど、こうなることは夢見てたから。
幸せは分け合えるけど、苦しみは相応にのしかかる。
もう、内緒にできない、隠せない。
もう、なんでも許すから、ここにいて。
逃げられないから、現実っていや。
空腹でさえ、遠い死を感じさせるから。
心地よい眠りでさえ、永遠の眠りを感じさせるから。
今、ありふれた幸せは儚い声で騙られる。




