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私って物語に必要ですか  作者: 那花しろ
18/21

逃げたとき

あの日、アボットに森の中の池に連れていかれ、舟が転覆した。


(やばい、これは、ヤバイ!)


手足を動かしているのにどんどん沈んでいく、ドレスが水を含んで重く、沈んでいく。

水を飲まないように口を閉じて、上へ上がろうと水中から上を見るが、なかなか、思う通りに動かない、体力をつけ鍛練したといっても、12才の少女の体力だ、たかが知れている。


(生きるって、生きていくために頑張ったのに)



手を伸ばし水中から空を見た、キラキラと輝いている。


(?んっ?)


キラキラが近くに寄ってきた。

それは段々と人の形に変わっていく、目の前に薄く透けて見える女性が微笑んでいる。


ゴボッ、驚きのあまり口を開けて叫んでしまった。


「何?幽霊!」

ガボッゴボッ

(息が、苦しい・・・)

目の前の幽霊?が、そっと手を伸ばし私の体を抱きしめるように包んでくる。



触られている感触はないけど、何だか安心する、その、幽霊の顔を見つめるとフワッと笑いかけてきた。


抱きしめられていると苦しくない、息ができる?


そのまま上に上がって、池の外に出してくれた。



「ゴホッゴホッ」

少し水を飲んでしまった。

振り返ると池の上に幽霊さんは微笑んで立っている。


「ゴホッ、た助けていただきありがとうございます。」

お礼を言い、急いでその場を離れようとしたが、濡れたドレスはとて重いわ、動きにくいわでワタワタしていた。


突然、体がふわりと浮いた。

「!?」

振り返ると池の上の幽霊さんが、私に向かって風を送っていた。



その、暖かな風が体を持上げドレスを乾かしながら目的の場所まで運んでくれた。

(おぉ、すごい・・・)

池の幽霊さんが助けてくれなかったら、私も池の幽霊になってたと思うと、ゾッとして振り返り感謝しながら深々と頭を下げた。



隠してあった着替えを出して身支度をし、抜け穴から、外に出て、食堂に向かって走り出した。



食堂でダンたちにこれからは、ここに住む事を伝えた。

その後はアーニャが侯爵家の事を日々教えてくれた。






「・・・と、いう事になりました。」

アーニャからの報告で、ローデリアとアボットの婚約とローデリアが侯爵家の養女になると知った。

(これで、悪役侯爵令嬢の誕生ね。)

物語が進んで行くことに安堵しつつも自分が居なくなった物語に寂しくも感じていた。


新しい生活は楽しく、忙しく過ぎていった。








「ねえ、メレディ、あなたはハイゼルたちが、見付けなければ戻って来ないつもりだったの?」

お母さまが悲しげな瞳で私を見つめている。

小さくコクリと頷いた。


「メレディ、私のメレディ」

ぎゅと抱きしめられた。

「戻ってきてくれて嬉しいわ、ハイゼル、ソイネルありがとう。」


私は親不孝をしようとしていたんだ、生きていれば、いつかは会えるからと思っていたが、何も知らずに急に消えられれば、心配するし、心が追いついていかない、逆に置いていかれる事を考えたら、怖くて、悲しくて、心臓がドクドクしてきた。お母さまをぎゅと抱きしめた。



「それにしても、よく池に落ちて一人で逃げられたわね。」


「えっ、あっはい、鍛練してましたから、あははっ。」


(幽霊さんのことは言わないでおこう、只でさえ心配させてしまったのに、幽霊を見ましたなんて、言えない。)


ニコニコしながら、お母さまが、兄たちに

「2人とも本当にありがとう、私になんの相談もなく消えたメレディを連れ戻してくれて。」

母さま、怒っていらしゃいます?


「食事も喉を通らないほど、心配している私に何も教えてくれず、仲間外れにして、見付けてくれたのですものね。」


仲間外れって

「少しぐらい相談してくれてもいいものを・・・」


お母さまがブツブツいいだしました。

チラリとハイゼル兄さまを見ると、困った顔でソイネル兄さまと顔を見合わせている。


「母上にはメレディを確認したらお話をしようと思っておりました、別に隠していたわけでは、なっ、ソイネル。」



困り顔のお兄さまたちも素敵です。








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