家族
気を失った(ふり)をしている私を、ソイネル兄さまが抱上げ、使用人たちに指示をだし、お母様もそれに続く。
チラリと目を開けてソイネル兄さまを見る。
(ソイネル兄さま、かっこいい)
前世だと中学生ぐらいだよね・・・やだ、私ってば中学生にときめいてる?
私がそんなことを考えながら、見つめられていると、ソイネル兄さまは抱上げ直し顔を近付け、耳元で囁きた。
「気が付いた?ん?熱か?」
(かっ顔が近い)
「いいえ・・・気を失ったのは演技です、なので、もうおろして・・・重いでしょ」
「いやだ、重くなんてないよ」
ニッコリ笑顔で抱上げたまま歩いている。
恥ずかしくて赤くなっている顔を両手で隠して、ソイネル兄さまに部屋まで連れていってもらう。
「おい!ソイネル待て!」
2人の後を追おうとしたとき、腕を掴まれ立ち止まる。
「?」
振り返ると、ローデリア嬢が腕に掴まっていた。
「何をしている?離してくれないか」
「お、お兄様、私とっても怖かった・・・」
腕にすり寄り、体を押し付けてくる
「おにいさま?、ローデリア嬢に兄と呼ぶことを許した事はないよ。」
冷たくいい放ち腕を振り払う。
呆然とハイゼルの後ろ姿を見ている。ローデリアの横をジョシュが冷ややかな目で見て通り過ぎる。
部屋の中にはセイデイルとローデリアだけが残った
「あーローデリア嬢・・・」
セイデイルに呼ばれ、慌てて笑顔で振り向いた。
「メレディ様が無事で何よりでした、毎日、神へのお祈りが通じたのだと震えました。」
両手を胸で組み潤んだ瞳でセイデイルを見つめながら微笑む
「本当にそうだね、ありがとう、ところでローデリア嬢・・・」
と、話し始めたその時、ノックに続き執事のライターが「お着きになりました。」と伝えてきた。
「そうか、ローデリア嬢お迎えが来たようだよ、今まで通り母上の元に戻れるから安心してくれ、悪かったね、知らなかったとはいえ、あんな男の婚約者にしようとして、しかも、親元から離してまで。」
セイデイルは立ち上がり、ローデリアを扉まで連れていく。
「えっ?」
訳がわからずセイデイルを見上げる。
「そのドレスはそのまま着てくれ、それとも、恐ろしい事を思い出して、嫌かな?」
婚約式のために仕立てた上質なドレス。
「あっあの、侯爵様と私は既に養子縁組が承認されている筈。」
「ん?確かにライターに提出を頼んだが、あの後、ハイゼルが預かっていて、提出していなかったのだよ。」
にこやかにローデリアに話しかける。
ドレスをつかんでいる手に力が入る。
ローデリアが小さく震えている。
「アボットが怪しいとハイゼルが調べていてね、ローデリア嬢のためにも養子の件は待った方がいいと、言ってね。」
「・・・・」
「どうかしたかな?」
俯いたローデリアにセイデイルが声をかける
「そ、そうですか」
やっと絞り出して答えた。
「ローデリア様、どうぞ」
ライターが扉を開けて外へと促した。
メレディの部屋の窓から外へ出ていくローデリアを見ている。
(あんな小狡い女が私の妹になるなんて、ゾッとする。)
ハイゼルは体を押し付けられた腕を払う、汚れを払うように。
「それにしても、メレディは何処でどうしていたの?1ヶ月もの間」
母が疑問に思っていたことを聞いてきた。
「メレディは市井で生活していたんですよ。」
「えっえっ!?」
侯爵令嬢として、12年間生きてきた、メレディが市井に居たことに驚き、大きな瞳をさらに大きくしてメレディを見た。




