アボット③
それからはバルモティ侯爵家に何度か通った、メレディは、人形の様に只そこに座って居るだけで楽しくもない、やはりつまらない令嬢だった。
二人で散策していると森が見えた。
「あの森は、日陰があり涼しそうですね。」
森に近付いていく
「アボット様、そろそろお時間です。」
「・・・・・そうですか、それではまた。」
メレディ嬢と別れた後、
森に向かった、私の付人をしている男に止められた。
「いいから、一緒に来い。」
中は綺麗に整備されてた、森林公園のようだ、少し進んで行くと池があった、木々の間から光が入り、とても美しい池だった。
池の水は冷たかった。小さな舟が岸に止めてあった、静かで美しいこの場所をメレディ嬢の最後の場所に決めた。
バルモティ侯爵家に訪れる際に付人の男に、あの舟に穴を空けるように命令した。
「アボット様、舟はバルモティ家の物です、穴を空けるなんて、出来かねます。」
反抗的な態度に頭にくる
「お前は言われたことをすればいいんだ!黙ってやれ!」
「・・・」
メレディ嬢の誕生会。この日を最後の日に決めた。
誕生会当日、久々に会ったローデリア嬢は、一段と美しく輝いていた。
この美しい少女が自分の物になる、考えるだけで、ゾクゾクしてくる。
メレディ嬢の側には兄のソイネルとメイドが付いて回っている。
様子を伺っていると、ソイネルが離れた。
私の側で控えている付人に手にしているお茶をかけた。
「!!何をなさいます、アボット様?」
「その格好で側に居られたら迷惑だ、見苦しいから、メレディ嬢のメイドに頼んで落としてこい。」
「アボット様・・・」
唖然と見ている
(ちっ、察しが悪いな、この件が片付いたら、この男はクビだ)
「早く行け!」
男が話しかけて、メイドが対応している。
「メレディ嬢」
「ア、アボット様・・・」
「少し散策しながら、2人でお話でもしませんか、メレディ嬢」手を出し、笑顔を向ける
「メレディ嬢?」
「あっ、は、はいっ」
手を取り立ち上がらせ、二人で森に入っていく。
舟に乗せるのにちょっと手間取ったが、指示した通り穴が空いていて徐々に沈んでいった、穴が小さいのか、時間が掛かっている。
(あいつ、やっぱり役にたたない、もっと穴を大きくしておけば、早かったのに)
イライラしながら見ていると、メレディが急に立ち上がった。
「!!」
直ぐにバランスを崩し池に落ちた。大きな水音が辺りに響いた。
(気付かれる!?)
辺りを見渡した、人が来る様子もなく、また、静かになった。
(沈んだか・・・)
額に汗をかいていることに気付き、汗を拭いパーティーに戻った。
知り合いの輪の中に、そっと紛れた、ずっとその輪に居たように振る舞った。
セイデイルが、メレディを見なかったかと、聞いて回っている。
もちろん、私は知らないと答えた。
気が付くと男が私の側に戻っていた。
(いつから居たんだ?)
しばらくして、メレディが具合が悪いのでパーティーはお開きになった。
応接室で、一通りせつめいを受けると、祖父が私を殴った。
私とローデリアのために、メレディが死んだからといって、何なんだ、頭にくる。
だが、お祖父様には私たちのために、もう一仕事してもらわないと。
屋敷に戻った後も母は私が殴られたことに腹をたてていた、祖父はメレディが居なくなった事で、バルモティ侯爵家との繋がりが持てないことに頭を抱えていた。
10日たち、前バルモティ侯爵個人から、支援の申し出があった、祖父はそんな一時的なものでは、納得していないようだ。
バルモティ侯爵家は娘が一人しか居ない、我が家も男しかいない。婚姻に因る縁を結びウェルソン侯爵家を磐石なものにしたいようだ。
「お祖父様、ご相談が」
祖父にバルモティ侯爵家の親戚のローデリア嬢の話をした。
お祖父様、父上は了承してくれた、母上は子爵家からの嫁は家格が合わないと言っていたが、侯爵家に養女にしてから婚約する事に納得した。
メレディが見付からず、一カ月が過ぎた頃バルモティ侯爵家より、ローデリアの養女の件と、私との婚約の二つの案の承諾の文が届いた。
そして、本日バルモティ侯爵家と婚約を結ぶ。




