アボット②
家が決めた婚約者など要らない、私の愛する方はローデリア嬢だと、何度も何度も手紙を送った。
そんなある日、ローデリア嬢が私の幸せのために教会に通って祈りを捧げている。と手紙に書いてあった、直ぐにその教会に向かった。
ローデリア嬢が、来ているか分からなかったが、私たちは運命で結ばれている、必ず会える。
教会の扉を開けて思った、ローデリア嬢は私の運命の相手だと、教会の中には更に美しく輝くローデリア嬢がいた。
私に気が付くと、驚いた顔をして此方を見つめていた。
「ローデリア嬢」
ゆっくりと彼女に近付く、ローデリアは慌てて立ち上がると、逃げるように私を通り過ぎようとした。
彼女にやっと会えたのだ。逃がすわけにはいかない。腕を取り捕まえた。
「逃げないでくれ」
「いけませんアボット様、二人でお会いしたことがメレディ様に知られたら、どんな、酷い目にあわされるか。」
赤い美しい瞳が涙で潤んでいる。
「何も手出しはさせない、安心してくれ。」
ローデリア嬢の手を取り並んで座る。
「アボット様の手、とても温かいです。」
ローデリア嬢はそう言うと手を自分の頬にあてた。
「アボット様が、いけないのです。」
ふふっと笑いながら手に頬擦りしている。
「ん?」
初めて触れるローデリアの肌は滑らかでとても気持ちがいい。
「会ってしまったら私は、この思いを止める自信がありませんでした。ですから、あまりお返事を返さず、静かに過ごしておりましたのに。」
ローデリア嬢が私を見つめながら囁く。
ドキリとした、12歳の少女にこれ程色気があるとは。
「こうして直接お会いして、触れてしまうと、どうしても、欲が出てしまいますわ。」
肩に凭れながら呟くように話す。
「私・・・メレディ様に貴族令嬢として、劣っているとは思っておりません。」
「ああ、ローデリア嬢は私の知る方々以上です、もちろん学園にも貴女以上の令嬢を私は知りません。」
「それでも・・・アボット様とは家格が違います、私の家は子爵です。侯爵家が望んでいるのはバルモティ侯爵家の娘です、幾ら思いが通じようとも、子爵家の私はウェルソン侯爵家から反対されるでしょう。」
「ローデリア・・・」
「思ってしまうのです。メレディ様が居なくなれば、私がバルモティ侯爵家の娘だったらと、そんなことを心の中でも思ってしまう私は、とても、とても、醜くい。アボット様にこんな醜い私は見せたくなかった。」
肩から右腕から、ローデリア嬢が離れていく、途端に冷たくなっていく。
「醜くなんてない、ローデリア嬢は美しい。」
そっと両肩を掴んでこちらを向かせる、美しい瞳が涙で潤んでいる。
「私に考えが有ります、ローデリア嬢は私を信じて待っていて欲しい。」
「アボット様・・・・」
胸にすがり付くローデリア嬢を抱きしめる。
まだ、アボットです。




