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13話・到着!!魔王城

13話・到着!!魔王城


「……そ、そろそろだな」


「そ、そうなんですか? ラクレットさん」


「……」


「う、うん」


「い、意外と速かったですね」


「……」


「ま、まぁ、ね……」


 ぎこちない会話、そして再び訪れる静寂。


 次に言葉発せられるのは、ドラコが着陸してからだった。


「あそこに見えるのが、魔王城だ。久しぶりに来たがやっぱ威圧感凄いな」


「一応、魔族領で一番偉い人の居城ですから……なんか全然住まずに人間領に帰った人もいましたが」


「今、戻ってきたんだからいいだろ」


「王座を取られそうになって、慌てて戻って来ただけですけどね」


「なんだよ、恨みでもあるのか」


「そりゃないといったら嘘になりますけど、別に気にするほどの者ではありませんし、あの暴れん坊の新魔王予定よりは好きですよ」


「それ、どれくらい好きなのか分からねぇな」

 ラクレットが頬を掻きながら苦笑する。


「まぁ、子供が欲しいくらいには好きなんじゃないですかね」


「そりゃお前、別に俺でなくともいいやつだろ」


「ええ、まぁ、そうですね」


 魔王所の前に降り立ったドラコを見た橋番は驚いて戦闘態勢に入っていたが、ラクレットとシキの顔を見るやいなや、それを解いた。


「今の反応からするに、まだあいつは着いていないって事だな」


「ええ、そうですね」


 ラクレットとシキは久しぶりに戻ってきたという感覚だったが、キャッタは始めて見る魔王城から、物凄いプレッシャーを感じていた。それも仕方ない。


 魔王城は、事実、とてつもないオーラが放たれており。魔族でも、弱い部類の者は中に入るのを躊躇ってしまうほどだ。


「さあ、二人とも行くぞ」


「ええ、分かりました」


「………」


 ラクレットは堀にかかった橋を渡って振り返ると、キャッタがいなかった。


「あれ、おーい、キャッタ」


「え、あ、は、はいっ!」


 魔王城に圧倒されて足が止まっていたらしい。


「行くぞ」


「わ、分かりました」


 キャッタが駆け足で橋を渡って来た。


「大丈夫か? 今からでもドラコの背中に戻るか?」


「いえ、大丈夫です、えっと、ちょっと緊張しちゃっただけですから。もう大丈夫です」


 そうして辿り着いた魔王城の城門。


 紆余曲折はあったが、ラクレットに着いていけそうだとキャッタは一息ついた。


「悪いな、門を開けてくれ」


「これは、シキ様、魔王様、了解しました……」


 門番は魔法を唱える。その魔法によって大きく分厚い扉はゆっくりと動いて行き三十秒ほどで開門した。


「ありがとう」


「いえ、仕事ですので」


「じゃあ、行くか」


 三人が城内へと歩みを進めていくと、キャッタの前に槍が突き出された。


「待てッ!!」


「……え?」


「お前が入るのを許すわけにはいかない」


 その槍に殺気は感じられないが、殺気の有無を感じられるほどキャッタの練度は高くない。穂先を突きつけられて思わず尻餅をついてしまった。


「なんでだ?」


 ラクレットが門番を睨みながらそう尋ねる。


「魔王様、シキ様。既に戦った後か前かは承知しておりませんが、ご存じでしょう、グラートが新魔王となろうとしています。そして、その可能性は十二分にある。であるならば、あなたの知り合いであっても、今は魔王城に人間を招き入れることは見過ごすわけにはいきません」


「なるほど、グラート派閥ってことか」


 ラクレットが戦闘態勢を取り、それを見たシキもファイティングポーズをとった。


 門番はラクレットの戦闘の意志を見て一瞬たじろぐがすぐに気を持ち直した。


「い、いえ、そう言うわけではございません。ですが、魔王決定の戦い起きようとしている。もしくは起きている状態、それも、片側が人間排斥の考えを持っているのであれば、ここに人間を入れるのは危険ということです」


「ん? なんだ、キャッタの心配をしているのか?」


「え、ええ、そうです。元より、私は前魔王様の方針を引き継いだあなたを悪く思ってはおりません」


「だとしたら、まぁ、そうだな、仕方ないか、俺だって常に守ってやれるわけじゃないしキャッタは……」


 戻っていろ。ラクレットはそう言おうとした。


「戻りませんっ!」


 だが、それよりも先にキャッタが立ち上がりそう宣言していた。


「私の身を案じているなら大丈夫です、私だって自衛くらいならできますから」


「だが、魔王様は例外として人間の力では限界がある……あちらの派閥の魔族に目をつけられたら大変だぞ」


「大丈夫です。もしそうなったとしても後悔はしませんから」


 キャッタと門番が睨みあう。その間に割り込むようにしてシキが入って来た。


「はいはい、そこまで、そこまでにしましょう」


「しかし、シキ様」


「彼女がいいといっているのですから、ここは見逃してくれませんか」


「ですが……はぁ、分かりました」


「ええ、ありがとうございます。ゆ……魔王様が引き続き魔王を続けることができた暁には次の給料日には少しだけ色を付けて」


「それは、応援をしないといけませんね」


「ええ、応援してください。平和を望むのはきっと間違ったことではないはずなので」


 門番が槍を下げたのを確認した後、シキはキャッタの手を握って引っ張った。


「さ、行きますよ、気を引き締めてくださいね。ここから先はあの方の言った通り安全は保障できないんですから」


「う、うん」


「さ、魔王様も行きますよ」


 そして、もう片方の手でラクレットの手を取った。


「ああ、分かってるって」


 そして、三人は手を繋いだまま大きな門をくぐり、城内に入った。


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