第零話-人工少女
私は海から産まれた。
きっと、多分そうだろう。
あやふやなのはしようがないのだ。
私にもよく分からないんだから。
海はしょっぱいって最近知って、目を覚ました時の味を思い出す。私が浸かっていた水はしょっぱかった。
海の写真を見て、綺麗だなぁって思ったんだ。
いつか見たいなーって。
でも家族は許してくれない。
普通はお父さんやお母さんがいるらしいけど、私には家族しかいない。お兄ちゃんでも妹でもなく、家族しかいない。
私に色々教えてくれるカナちゃんも、お姉ちゃんなの?て聞いたら「私はユキの家族だよ」て言ってた。だから私には家族しかいないらしい。
「ユキはとっても素晴らしい事をしてるんだ。 だから今日も頑張ろうね」
今日は多分痛い日だ。クサナギがそーゆー事を言う日は決まって脳が痛くなる。
クサナギやたまに違う人の代わりに、私はたくさんの計算をする。
少しは自分ですればいーのに。
憂鬱な実験は直ぐに始まる。
少しして計算する事が多くて痛くなる、脳が、痛くて痛くなる。
でも計算は終わらない。
どんどんどんどん痛くなる。
いちにーさんしーごーの次の六回目。
泣きながら、赤い鼻水を垂らしながら、叫んたら、やっと終わった。
やっぱり今日は痛い日だった。
これでも私は女の子なんだ。
鼻水を垂らしてるのを人に見られるのは、いーっだ!
初めは家族は大事な人なんだよって教わったから、皆んな優しかったし頑張った。
でもそのうち、こんなに痛い事を、私が痛いって言ってもやめてくれない事をするのって、素晴らしい事なのかわからなくなった。
私はちっとも素晴らしくない。
痛いのは嫌、死ぬって分からないけど多分死にそうな程痛いと思う。
私は死にそうで、死にたくないんだ。
だから家族から逃げた。
カナちゃんはわかってたかも知れない。
でも気付いてないふりをしてくれた。
私は私を家族から隠してって神様にお願いした。
ここから抜け出して、海が見たいなーってお願いした。
痛いのはもう嫌だってお願いした。
そうしたら、神様っているんだね。
私の部屋の扉は開いた。
何処に行ったらいいか、神様は教えてくれた。
途中カナちゃんに会った。
「カナちゃん、ちょっとお出掛けしてくるねー」
「そう。ユキ、気をつけてね」
急いでいたからそれだけ言った。
カナちゃんにはお土産を買ってもいいかな。
きっと喜んでくれる。
私は、外に飛び出した————