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Fabula de Yu  作者: モモ⊿
二章-妖精王の帰還-
35/43

第三十四話-開戦-


翌日はヤージュ先生の予定通り、丸一日使ってまだ乗れる船を探す為に費やされた。

その結果として、ドックの地下に眠っていた中型船を二隻発見する事が出来た。

とはいえ、二百年前の船。


俺たちがこの国まで来るのに乗ってきた大型船、ビッグエデンプリンセス号の様なガソリンで動くバカでかいエンジンは積んでない。

動力部は蒸気機関。

動力源は石炭ときた。

幸い、ドックには未使用の石炭が大量に保存されていた為、この二隻を動かすのには十分だった。

二百年の歳月、そして技術の進歩とは実に素晴らしい。


蒸気機関と帆を使って航海していた時代はとっくに終わりを告げ、機械技術と魔法技術が融合し、実に様々なものが生み出された。

現在の世界で使われている大型船舶は、大型のエンジンを積み、大きな嵐や高波などでもビクともしない魔法障壁を備えている。

ビッグエデンプリンセス号もそう。


ここで発見した二隻は、操船出来る人がいないからここに置き去りにされるのかと思っていたけど、なんとサザナミくんとヨシキリくんは操船技術まで持っていた。




さらに次の日。

二人がそれぞれの船を動かし、何人かずつで分乗して東の軍港に向かう。


馬も乗るくらいの大きさだったのが幸いだったな。

少しギュウギュウだったけど…


でも地上を走るよりも断然早い。


船の先端部に立ち、洋上を見渡していると、心地よい海風が頬を撫でる。


「あっ!カモメ!」


リナさんやロコマさん、マナやアサギまで、女性陣は船に寄ってきた海鳥を見てはしゃいでいる。

俺はその様子を見ながらデッキチェアに座っているのだが、隣にいるバナーは早くも船酔いでダウン。


ヤージュ先生や師範、クロウ先生は馬と一緒にもう一隻に乗っている。

馬を乗せるためには、乗る人数を偏らせないといけなかったのだ。


ダトポルカを出発して数時間、東の軍港に到着。

入港する際、港の入口部分の岸壁に文字が刻まれているのが見えた。


【貴殿の航海が陽光に恵まれますように】


航海の安全と無事を祈る口上。

周囲は波で削られていたけど、その文字はまだはっきりと読めた。

送り出す人も迎える人も絶えて久しいこの港は、今のこの国で一番人間が集まる場所となっている。


先遣隊と合流してお互いの情報を交換し、これからやってくる本隊の合流日時は明日の昼ごろと分かった。



慌ただしく過ぎ行く準備の為の時間。

何を持っていっても役に立ちそうな気がして、なかなか荷物の整理が付かない。

魔力を回復する為の魔石や、手軽に扱える武器や防具。

共和国の騎士団が持ってきた装備は、どれもこれも俺たちは使った事のないものばかりで目移りしてしまう。

そんな中俺は、倉庫の隅っこに置いてあった箱に吸い寄せられるように近づいた。

半開きになった箱の中に漆黒の剣の(つか)のようなものが見える。


「これは…?」


手に取り、確かめる。

柄だけで刀身が無い。

でも握っていると自分の魔力が流れていく感覚がある。

そしてそれとは別に何かの力を感じる。

この感覚は…


「ユウー? ヤージュが集まってくれって言ってるよー」


「あ、ああ!分かった今行く!」


「奥に何かあったの?」


「いや…」


「ふーん? ま、ユウは使い慣れた武器があるし、今違うものに変えたら実戦で大変かもよ」


「うん、そうだな。俺にはこの二刀がある。それで十分だな」


そんな会話をしながら倉庫を後にし、ヤージュ先生が待つ一番大きな建物へ向かう。

さっきの黒い柄、咄嗟に持ってきてしまった。

あとで返さないと。


港の中にある会議室を兼ねた建物に集まってヤージュ先生からの話を聞く。

スピラに向かったグラディオさん達以外は皆揃っている状態だ。


「さて皆さん。共和国からの増援が到着しました。

我々と一緒に来た三百人と合わせて千人の魔法騎士団です。彼らの指揮は僕と、彼が執ります」


ヤージュ先生が手を指し示すと、そこにある扉が開いた。

そして入って来たのは…


「スカイさん!!」


「やぁ、ユウ君、バナー君、アサギさん、久しぶり!

マナ様もお変わりないようで、安心しました」


「ふん、当たり前でしょ。わたしが悪魔なんかにやられるわけないじゃない!」


「ええ、そのようで。あとはエルフの方々がいらっしゃると聞いていたんですけど、今はどちらに?」


「グラディオさん達は、ここより遥か西にある霊峰に向かいました。貴重で強大な戦力を求めに」


「なるほど。それは期待しておきましょう。信頼出来る方なんですね?」


「ええ、それはもちろん。スカイくんからナオ様への信頼と同じようなものです」


「おっと、それなら手放しで信頼出来ますね!」


オーバーリアクションを取るスカイさんに、なんとなくみんなが笑う。


だが、次の瞬間聞こえた爆音がその空気を吹き飛ばした。


慌てて外に出てみると、燃え上がる桟橋。

どうやら船から降ろしていた物資が燃えているらしい。

でもあの中には燃えるような物は入ってないと聞いている。


ふと、視線を感じた。


空中に眼を向けると、一体の悪魔と目が合った。


『やっと見つけたぞ、ユウゥゥゥゥゥゥ!!!!』


「あいつ…!」


「おいユウ、エルドラド近くで戦ったあいつじゃないか?」


「ええ、その通りです。マナが完全に消滅させたと思っていたのに」


「あいつ、わたしの最後の攻撃の前に身体の一部を逃していたんだわ。あいつのあの再生力…時間をかければ小さい一部からでも全身を再生出来るのかも」


「しかし、あの時と姿が変わってる… こんなに禍々しいオーラは放ってなかった」


「あぁ、どうやらリドニスに力を与えられたらしいな。俺の眼は魔力の流れを捉える。あいつの中にどす黒い魔力がのたうちまわってるのが見えるぜ」


『何をゴチャゴチャやっている…? 俺を見ろ!!ユウ!!!』


「…ちっ。うるせぇなあ。ビービー喚きやがって。発情期ですかコノヤロー。それとも左手に何か宿ってると思い込んでる時期か?」


『なんだと…!?』


「とっとと降りて来い! 相手してやるから!」


スゥッと地面に降りてきた悪魔。

たしかルドーという名前だったはず。


『クソガキが… リドニス様に力を与えられた今の僕なら瞬殺だぞ。瞬殺』


「…あんまり強い言葉を使うなよ。弱く見えるぞ?」


『ギィィィィィィィ!!!』


ルドーが躍り掛かる。

両手から生やしたトゲを無軌道に飛ばしてくる。


「ちっ!」


左に飛んで躱す。

トゲは俺を追いかけてくる。

周りに人や物がある現状、派手に動き回ると被害が拡大してしまう。

さて、どうしたものか…

と、一瞬だけ思考を巡らせていると、ルドーの後ろに迫る赤い炎。

バナーだ。


「ユウだけ見てんじゃねーよ!! 背中がガラ空きだぜ!!」


ルドーの背中に渾身の一撃を叩き込んだ。

その衝撃で吹き飛び、空っぽの木箱の山に突っ込んだ。


アサギとフマイン師匠は非戦闘員に被害が出ないように退避させている。

ヤージュ先生とバナー、マナは俺の隣に。

こっちの戦闘態勢は万全だ。


ガラガラと音を立てながら立ち上がったルドー。

その口元には不敵な笑みが浮かんでいる。


『ククク…今の俺に勝てると、本気で思っているのか? 思い上がるな人間!! ボクはリドニス様にチカラを与えられたエラバレシ者なのだ!!!』


狂ったように叫ぶルドーの目は虚ろで、俺の方を見ていても俺の事は見ていない。

さっきから一人称もめちゃくちゃだし、もしかしてこいつ…


「ねぇユウ、あの悪魔、もう…」


同じ結論に至ったらしいマナが話しかけてくる。


「あぁ、もう壊れてるみたいだ」


そして、ルドーの目は俺の事を見ていないのに、何かに見られている気がしている。


「終わらせてやろう」


俺が呟くと、マナ、バナー、ヤージュ先生が構えを取る。


高笑いしながら迫ってくるルドーの遠距離攻撃をバナーが防御し、マナが氷でルドーの足を固める。

地面に釘付けになったルドーの身体を俺の二刀でバラバラに。

こいつは無限再生出来る能力を持ってるが、どこかに核が必ず存在している。

そして、ヤージュ先生の竜眼()はそれを見逃さない。


ヤージュ先生の槍が一閃。

その穂先には黒い塊が貫かれたまま脈動していた。


ルドーの身体は全て地面に落ち、再生する素振りはない。

段々と、その破片が灰になって消えていく。

核から遠いものから順番に。


俺は、同じように地面に落ちている核に向かって確信を持って話しかけた。


「見ているんだろう、リドニス」


「えっ」


マナが驚いている。

ヤージュ先生も目を見張っていた。


「お前がルドーを利用して偵察をするような卑怯な小心者で良かった。これで心置きなく始末できる。首を洗って待っていろ」


返答はない。

もとより期待なんてしていないが。

そして、最後まで残っていた核も灰となって消えた。


「…ユウくん。なぜ、リドニスが見ていると分かったのです?」


「ルドーの中にリドニスの魔力を感じて、そしてその中にまだ誰かが居るような気がしたんです。そして、居るとしたらリドニスしかいない。だから…」


「なるほど… 数日前にユウくんがリドニスから干渉を受けたせいで、リドニスへの感受性が上がっているのかもしれませんね。…もしこの先、自分の体や思考に違和感を覚えたらすぐに言ってください」


「分かりました」


「さて、リドニスに見られていたすれば、この状況も全て伝わっているはず。直ちに軍を進発させます。君たちも準備をお願いします」


「はい!」


この港の後片付けなどしてる余裕はなくなった。

フロスタル攻略の主軍となる千人の共和国魔法騎士団。

彼らが遅い来る悪魔たちと戦い、フロスタルの城門を開ける。

その後俺達は別働隊として少人数で、隠された抜け道を使い、城内へ潜入。

一気にリドニスの元へ。


その手筈だった。


「おかしい。ここまで悪魔の襲撃が無いなんて…」


既にここはフロスタル城門前。

見張りの者が居ないばかりか、城門は完全に開け放たれている。

こちらを誘っているかのようだ。


「ヤージュ様、見張りの者の話によると、城門前にたむろしていた数百体の悪魔の前に二人の剣士が現れたそうです。そして何事かを話して、悪魔達は消え、剣士二人も城内へ入っていったと…」


「ふむ…」



二人の剣士…

悪魔ではない…?


人間が悪魔と共に生活するのは不可能に近い。

悪魔は多種族を好まないし、人間と違って休息の必要が無いからいつ襲われてもおかしくない。

ならその二人は人間ではない可能性が高い。

となると…



「もしかしてその二人の剣士は最上位のアンデッド、もしくは受肉を遂げた悪魔か、ですね」



俺の思考の先をヤージュ先生が口に出す。

悪魔は基本的には肉体を持たない。

魔力によって形を成した霧のようなもので、攻撃は通るし核を破壊すればこの世界からはいなくなる。

上位の個体でないならば、一体一体はあまり脅威ではない。

と言っても大勢で来られれば一夜にして国は落ちるし、その魔力は無尽蔵で、訓練されていない普通の人にとってはそこら辺の獣よりずっと脅威だ。


そして、用意された供物(ヒトや動物の屍肉)によって受肉を遂げた悪魔は、下位の悪魔とは一線を画した強さを得る。

身体を維持する為に使われていた魔力は全てその身体の内側を巡り、それにより強化された肉体は指先だけで岩をも砕く。


それでも、力任せに暴れるだけの個体は然程強くない。

中の上といったところだ。


それを超える本当の脅威は()()()()()()()だ。

自分に馴染んだ武器を用い、鍛え抜かれた技術を用いる者たち。


そういう個体の事を将軍悪魔(ジェネラルデーモン)と呼ぶ。

アンデッドとの違いは屍肉のままか、ままではないか。

当然、腐りかけた身体のアンデッドより、しっかりと骨身が付いた受肉した悪魔の方が強い。


悪魔たちと話して一緒に城内に入っていった事から、剣士たちは下位の悪魔に命令が出来る立場。


「その二人、手強そうですね…」


俺の言葉に、ヤージュ先生と師匠が頷いた。




城内へ。

戦闘態勢を維持したまま、前方や上方を警戒しつつ、ゆっくりと進む。

最初の城門を抜けた先から続くのは、最下層の城下町。

殆どは焼け落ちたり、崩れているが、家々の造りはしっかりしている。

時間をかければ再建できそうだ。


道は石畳。

広く、全面がしっかりと舗装されていて、馬車用の道路、歩行者用の歩道と分けられている。

そんな見事な道が緩やかな坂道になって、左の方へゆるやかに曲がりながら上へと向かっている。


自然の岩山を切り崩して作られたこの街は、フロスタル城を頂上に、その下に街が築かれ、道は曲がりくねりながら城門へと至る。


道の折り返し地点には城門が設置されており、かなり広いスペースが取られている。


一番下の階層が終わり、二番目の階層に入るのだろう。

左手に見ていた岩壁が、次の階層では右手側に位置するというわけだ。

それを何回か繰り返して王城へ。


城門前の広場はそれほど大きくなかったから、入国審査はこの広場で行われていたのかもしれない。



そんな思考を巡らせながら俺達は、全部隊のちょうど真ん中辺りに位置しつつその広場に入った。



だが、そこで前方の歩みが止まる。


「どうしたのかしら?」


アサギが疑問を口に出した。


前方での指揮はヤージュ先生が行なっている。

どうも次の階層に行く為の門が閉じているらしい。

その間にも後方の部隊はどんどん広場に入ってくる。


かなり広いスペースとは言ったが、千人もの武装した兵士が入るとギュウギュウになった。


前方の門はまだ開かない。


そんな時だ。

広場の地面が光りだしたのは。


その光は左右の端っこから始まり、複雑に曲がりくねりながら中央へと向かっていく。


「まさか…」


ドンッ!という衝撃音と共にヤージュ先生が飛び立った。


上からなら何か見えるかも。


俺は広場の隅にあった廃屋の屋根に登る。

そして見た。


「これは…」


巨大な魔法陣が今まさにその形を成そうとしていた。


光が中央に達する。

その瞬間、カッと全体が光り輝き、その光に包まれた騎士団。

やがてその光が収まる。

しかし目に見えての変化はまだ無い。


「なんだったんだ…?」


俺を含め、その場にいる者が一様に首を傾げる。


だが変化はその直後に起きた。


「ぐああああああ!!!!」


「どうした!?」


「なっ!?」


一人の騎士団員が槍に貫かれている。

それは悪魔が用いる漆黒の槍。

そしてそれを手に持つのは、貫かれて絶命した彼の()()()()()()()()()()()()


それを皮切りにそこら中から上がる悲鳴。

その手に漆黒の武器を下げ、手当たり次第に周りを攻撃している者が沢山いる。

その数はざっと見て数百人。


「これは…」


どうしたらいいか分からず見ている事しか出来ない俺の目の前に、空からヤージュ先生が降りて来て叫んだ。


「聞くのだ騎士団員達よ!!! 彼らはあの魔法陣で操られているだけに過ぎない!!! 自らの身を守りつつ、彼らを無力化せしめよ!!!」


その大音声(だいおんじょう)は、恐怖に支配されかけていた正気を保つ全ての騎士団員の耳に届いた。


そこからは早かった。

自らの武器を使い、漆黒の武器を躱して相手を昏倒させる。

槍の石突き、刀や剣の柄を頭に強打したり、腕や足を折って物理的に動けなくする者など。

俺も近くにいた操られている騎士団員を手当たり次第に気絶させていく。


そんな大混乱の中、突出していた者が数名いた。


バナーは素戔嗚が宿す聖なる(ほむら)で悪魔の魔力を浄化していく。

浄化された者はそのまま気絶し、地面に倒れ込んだ。


アサギは久しぶりに武器創造(アームズクリエイト)した竹刀で的確に気絶させている。


そしてマナは、壁際に追い込んだ団員たちをまとめて氷漬けにしていった。


師匠やスカイさん、クロウさんたちもそれぞれ動いている。


これならなんとかなるか…?

と思った。


再び魔法陣が光るまでは。


「くそっ!!これじゃキリがねーぞ!!!」


もしまたあの魔法が発動し、今正気を保っている団員までが悪魔の手先と化したらジリジリと人数を減らされ、こんな場所で全滅してしまう。


俺たちの誰もがそんな事を考えたその直後。

明朗たる声で詠唱を始めた人がいた。


その人はその姿を完全なる竜人へと変化させ、竜の鍵爪、尾、そして翼を持っている。


『天地鳴動せし神の雷よ。我に仇なす者にその鉄槌をくだせ!!』


この場の魔力が高密度に練り上げられ、宙に浮かぶ竜人(ヤージュ先生)の元に収束する。

同時に、晴天だった空には暗雲が立ち込め、その黒い雲はバリバリと膜放電を放っている。

そして遂にヤージュ先生が、その槍を振り下ろした。


神雷の(インディグネイト)裁き(ジャッジメント)


広場が光に包まれる。

俺は咄嗟に腕を顔の前で交差させ、目を閉じても侵入してくる雷光を遮った。

凄まじい雷鳴が轟き、次いで地面を揺るがす衝撃波が襲ってきた。


その全てが収まった時、悪魔に操られていた騎士団員は全員が静かな寝息を立てていた。



「あの魔法は、僕に敵意を向ける者全てに神の雷を落とすものです。この広場は悪魔によって封じられた箱のようなものでした。あの高い城壁の天辺を最上部とし、二階層への門を閉じ、そして魔法陣を発動させた。つまり、あの魔法陣を発動した術者がすぐ近くにいたのです。ま、既に消し炭になりましたが」


うわぁ…

サラッと凄いことをいってのけたぞこの人…


悪魔はその身体を維持するのに魔力を用いている。

ヒトや動物など、この世界の生物は生命力を用いる。

そこが根本的な違いであり、つまるところ悪魔は純粋な魔力の塊。


だから攻撃するには魔法か、魔力が付与された魔法武器(マジックウェポン)が必要であり、そして生半可な攻撃ではかすり傷ひとつ付けられない。

魔法で完全に消滅させるには、対象の悪魔が持つ魔法耐性を上回る魔力をぶつけるしかない。


兵士級(ソルジャークラス)の有象無象なら俺のヘボ魔法でもなんとか出来るが、この広場全部を覆う魔法陣を描き、かつ二度も発動させた術者、それは間違いなく将軍級(ジェネラルクラス)の悪魔だ。

それも魔法特化の。


通常の悪魔より魔法耐性が高い悪魔を消し炭にしてみせたあの魔法、もしかしたら大きな街すら一瞬で消し去る事が出来るのでは…



「さぁ進みましょう。気絶した者たちは二百人程。同数の兵で東の軍港まで移送します。我々は先へ」


見ると、二階層への道を塞いでいた門は開いていた。

その先にも無数の悪魔が列を成して…

という事はなく、焼け落ちて閑散とした街並みが続いているだけだった。


あれ、もしかして…


「ついでにこの辺にいた悪魔も消しておきました」


サラッと凄いことを以下略。


ヤージュ先生(この人)を怒らせる事だけは絶対にしないと誓った俺たちだった。


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