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Fabula de Yu  作者: モモ⊿
二章-妖精王の帰還-
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第二十五話-死に嫌われた男-


「声が…聞こえたんです。今となっては、なんて言っていたか、覚えてはいないけど… あの時はその声が頭の中に響き続けていて…」


山羊頭以外の悪魔を倒し、山羊頭を捕虜とした俺達。

その戦闘が終わってから俺は、マナとヤージュ先生とあの時の事を話していた。


「ユウ君、それはどんな声でしたか?」


「分からない… でも、冷たくて、恐ろしい声だった… その声が聞こえるたびに、目の前のこいつをどうやって苦しめようかって、それしか考えられなくなって…」


俯いて地面を見つめる俺の視線に、ヤージュ先生の靴が近付いて来るのが見えた。

先生はそのまま、俺と視線を合わせる為に膝をついた。


「ユウ君、きみは()()()()()()()()()()()()()()()()


ヤージュ先生の言葉が、咄嗟に理解出来なかった。

干渉を、受けた…?


「リドニスは、ヒトの精神に介入する事が出来るのです。そして、精神に種を植え付ける。それが芽吹いた瞬間、その者は悪魔に転化する」


「そ、そんなデタラメな話がありますか…?」


「事実なのです。リドニスがこの世界に来て最初に行った事、それがトゥラム王家の者を自らの手駒にするという事でした。

玉座の間に詰めていた衛兵は残らず転化させられ、その瞬間、エルフの武器と防具を装備した悪魔の軍勢が王宮内に出現した…

リドニスがこの世界の歴史に残した、史上最悪の虐殺事件。その内容は一晩で二十万人を殺戮したというものですが、真実は違います。

フロスタルの住民の半分以上が悪魔にさせられ、その手で家族や友人、仲間を殺しまわった。そしてその日が終わると、無理矢理に転化させられた体は内外の存在の不和により朽ち果てました。あとに残ったのはリドニスのみ。

それから、リドニスは異界から悪魔達を呼び寄せ、この大陸を支配した」


「そんな…それじゃあ俺も…?」


「いえ、ユウ君は大丈夫ですよ。もし完全に転化させられているなら、とっくに君は悪魔になっている。精神に闇が入り込み、その闇に抵抗出来ずにそのまま取り込まれた者が悪魔の手先となるのですから。とは言え、まともに抵抗出来る人なんてごく限られた者だけなんですけどね。マナ様に感謝しなさい? おそらくユウ君だけでは闇を消し去る事は出来なかったでしょう」


「…べ、べつにいいわよ感謝なんて。わたしのパートナーが三下悪魔にいい様にされるのが気に入らなかっただけだもん」


「…そうだな、俺はマナのパートナーだもんな。勝手にどこかに行くとかは無しだ。だからこそ言うよ。ありがとう、マナ。お前のおかげで戻って来れた」


「い、いいってば!無事だったならそれでいいのよ!」


「だが…」


「ん?」


「悪魔の王を三下呼ばわりするのはどうかと思うぞ?」


「今言う事じゃないでしょそれ!!でもいいのよ!もうちょっとしたら倒しに行くんだから!首を洗って待ってなさいよね!!」


そう叫び、マナはおおよそ北の方角の空を指差した。

ここからではかつての花の都は見えない。



「さて、僕達も戻りましょう」


「はい。あれ?グラディオさん達は…」


「先に町に戻って貰いました。あちらにも増援は必要でしょうから」


そう言って町の方を見たヤージュ先生。

その視線の先には、()()()()()()()()()()()()


「え…?あれって…」


「分かりましたね?早く戻りますよ!」


「っはい!!」




俺達が来た方向にある、あの町から煙が上がっている。

オラトリオ伯の結界が壊れたのだ。






☆★☆



時は少し遡る。





「あーあー、俺も悪魔と戦いたかったよ〜ししょお〜!」


「バナー!師範になんて口の利き方をしているのよ!」


「うっせバーカバーカ!」


「や〜め〜な〜さい二人とも〜。バナー、悪魔と戦いたいんだね?それならついて来なさい。そろそろ頃合いでしょう」


「お?はーい!」


「ちょっと、どこ行くか知ってるの?」


「あ?知らん」


「知らんって、あんたねぇ」


「知らんけど、師匠が付いて来いって言うなら行くだろ」


「ま、まぁ、そうだけど…」


「来ないのか?」


「行くわよ!」



ブーブー言ってるアサギと一緒に、師匠について行く。

少し歩いて着いたのは、さっき伝令をしに来た兵士が連れて行かれた家だった。

軽い怪我をしてたから診てもらうためにこの家にいる。


「師匠?ここに何が」


「悪魔と戦いたいんだろう?お望みを叶えてあげよう」


「え?師範、それってどういう…?」



アサギの言葉を聞いてか聞かずか、おもむろにその家のドアをこじ開けた師匠。

そしたら俺びっくり。

中に悪魔がいるでやんの。


「は?何で?」


そいつのなっがい腕が治癒師のエルフの人の顔を掴み、宙ぶらりんにしてた。

つーか、何で?って思ったのは俺だけじゃなかったらしい。


「人間がなぜ…」


「おや?僕たちがノックもせずにここに入って来たのがそんなに不思議かい?ま、そんな事よりもまず、その人は返してもらうよ」


「なに?」


師匠が一歩踏み出した。

それだけで、数メートル先で捕まっていたはずの人が、師匠の腕に抱かれてる。

何で?


「ほう…?」


「ふむ、この人に執着は無いのか。ただ人間を殺したいだけなんだね。なら、代わりに僕が相手をしよう。

キミが一番強そうだし。

アサギ、この人を連れて王家の館に戻ってなさい。周囲の住民の避難も忘れずに。バナーは町中(まちなか)にいるヤツラを倒して回って。町の損害はもう気にしなくていいから」


「は、はい!」


「分かった!」


俺達は言われるがまま外に出る。

町中(まちなか)にいるヤツラって何のことだろ?って思ってたけど、出た瞬間に分かった。


町の中に悪魔がいる。


そして、上を覆ってた木々が無い。

これはつまり…


「ウソでしょ…結界が壊れたっていうの…?」


「そうらしい。おい急げ!とにかく王家の館へ!」


「分かった!」


治癒師さんを真ん中に、二人で肩を支えて走る。

衛兵が悪魔と戦っているが、苦戦しつつも完全に実力で負けているわけじゃなさそうだ。

すぐに衛兵が全滅するっていう心配は無くなった。

だけど悪魔の数に対して人数が足りてるわけじゃないからやばい。

建物を壊してるヤツもいるし、魔法で火を付けてるヤツもいる。


アサギに治癒師さんを任せて、俺は目の前に出て来た悪魔をぶん殴った。

鈍い音と衝撃、そいつが壁をぶち破った音。


人間とも魔物とも違う感触に、ちょっとびっくりした。

魔力で構成されてる悪魔の体は、物理攻撃を殆ど無効化するらしい。

だから師匠に教えてもらったように、魔力を通した拳で殴った。

起き上がって来ないところを見ると、ちゃんと倒せたらしい。


振り返ると、アサギが足を止めてこっちを見てる。


「何やってんだバカ!早く行け!」


「分かってるけど!でもアンタ一人で…」


「一人じゃねーよ。衛兵の人たちも頑張ってくれてる。それにこの町の異変にユウ達も気付く。向こうでも戦ってるかもだけど、あいつらならすぐに終わらせてこっちに戻ってくる。だからそれまで、町の人たちを守りながら戦う。お前も頼りにしてんだからよ、早くその人を送って戻って来いよ!」


「…分かった!ちょっとだけ任せるわよ!バカバナー!」



走っていくアサギを見送って前を向く。

新しく三体の悪魔が俺の前に出て来たとこだ。



「ったく、バカは余計だっつーの。さーて、待たせたなクソ悪魔ども!!」


翼を持ったのが一体。

こいつは長い爪を持ってる。


トゲ付きのデカイ金棒を持ってるのが一体。


全身から炎が出てるのが一体。

こいつが火を付けてまわってんだな。

…熱くねーのかな。



あ、燃えてるヤツが息を吸った。

ぜってー火ぃ吹くだろあれ。


ダッシュでそいつに近付こうとしたら、金棒のヤツが盾になる。

上からは翼持ちが急降下して来てる。

連携が取れてるって事は、こいつらはいつも組んでるのかもしれない。

俺たちみたいに。


金棒のヤツの攻撃を下に沈んでかわして、懐に潜り込む。

そのまま浮き出たあばら骨に拳をぶち込んだ。

バキベキって音と苦しそうな声を漏らして吹っ飛んでった。

悪魔でも骨が折れるとダメージあるのか。

素戔嗚で殴ってるからかな。


金切り声を上げながら翼持ちが爪で引っ掻いてくる。

俺が剣とかを普通に使うだけだったら防げなかったかも。

長いし丸まってるから切れ味鋭そうだし、絶対痛い。


素戔嗚がある両腕を交差してガード。

腕を振り払って弾こうとしたけど、翼を羽ばたかせてグイグイ押し込んできやがる。

早くしねーと火が来るってのに!!


煙の上がってる家屋は、殆どがグズグズに溶けて無くなってた。

つまりこいつの炎はかなりヤバイ。

食らったら防御とか関係なく骨まで溶けて終わりだ。


ヤバイヤバイヤバイ!!


翼持ちは全然引かない。

こいつも炎が平気だとは思えないけどな?


あ、そっか!!



俺が翼持ちとの鍔迫り合いを振り切れず、燃えてるヤツが遂に炎を吐き出した。

俺は翼持ちの爪が離れる瞬間に翼持ちに抱き付いてやった。

思った通り、燃えてるヤツの炎は足元から来た。

翼持ちは上に逃げればいい。

ただジャンプしただけじゃ避けられない範囲の炎だけど、飛べるなら関係ない。


さっきと同じ金切り声を上げて俺を振り払おうとするけど、ずっと捕まってるわけじゃない。


あいつが炎を吐ききった。


「ありがとよっ!」


言いながら俺は翼持ちの翼を叩き折った。

悲鳴を上げながら墜落していく。

俺はコースを調整して、そのままそいつを炎の中に落としてやった。

翼持ちは一瞬で灰になって消えた。

直前でヤツの背中から跳んだ俺は、燃えてるヤツの頭上にいる。

このまま頭をぶん殴ってやる!


『ゴァァァ!!』


ヤツが獣じみた声をあげて口を開く。

ヤベェ、あの炎が来る。

素戔嗚でガードしても防ぎきれるかどうか。

一か八かだけどやらないよりはやった方がいいよな。

そう判断した俺は素戔嗚を発動させようとした。

でもその前に、視界の端で誰かが動いたんだ。

そいつが持つ刀が一閃。


そしたら、目の前の悪魔が動きを止めた。


ゆっくりと悪魔の首が落ちる。

俺は着地して、悪魔が灰になるのを見届けてから振り返った。

さっき視界の端で動いたのはアサギだった。

俺の前まで走って来て、言った。


「大丈夫?」


「あぁ。なんとかなった。あの人は?」


「お屋敷の人にお願いしてきた」


「そうか、よかった。んで、さっきのなに?」


「あー、ちょっと…説明出来ない、かな…」


「は?なにそれ?俺に隠し事するたぁ、偉くなったもんだなぁ?」


「ち、ちがっ!!本当に説明出来ないのよ!!アンタが危ないって思って、でも間に合わないって直感して、それでもって思ってたら、体が勝手に動いてたのよ。そしたら、なんか、飛んでた…」


「はぁん… 分かった、お前って実はバカなんだな」


「なっ!?バカにバカって言われたくないんですけど!?」


「いやー悪い悪い。ま、そのおかげで助かったわ。ありがとな!」


「はぁ〜。まぁいいわ。早く他のを片付けましょ!」


「そうすっか!」



俺とアサギは町の衛兵さん達と一緒に悪魔を倒していった。

住民の避難も同時に進行して、グラディオさんのお屋敷に退避して守りも固めてある。


ある程度は片付いてきたなって思った時、師匠が残ったあの家からデカイ音が聞こえた。


アサギと顔を見合わせ、走り出す。


俺達が着いた時に目に飛び込んで来た光景。

それは、悪魔の長い鉤爪で串刺しにされた師匠の姿だった。



「師匠!!!」

「師範!!!」



同時に叫ぶ。

それに気付いた悪魔が俺達に顔を向ける。



「おやおや、このザコの弟子ですか。こいつはチョロチョロと動き続けるだけで反撃すらしてきませんでしたよ。そして私がちょっと速く動いたらこのザマ。こんな人の弟子とは、可哀想な者達だ。そうだ、君達は特別に私の部下にしてあげましょう。リドニス様と一緒にこの世界を未来永劫支配する。どうです?」


「はっ!!誰がテメェらの仲間になんかなるか!!俺が師匠の仇を討ってやる」


俺が飛び出そうとすると、アサギが俺の腕を掴んでいる。

顔を向けると、首を横に振る。


「やれやれ、この師匠にしてこの弟子あり、という事ですね。物分かりの悪い。そちらのお嬢さんは私との力の差を見抜いているみたいですが。それでは君達も師匠と同じように風穴を開けてあげましょう」


そう言いながら、右手に刺さったままの師匠の体を抜こうとする悪魔。

だけどその時、師匠の手が動いて悪魔の右手を掴んだ。


「なに…?」


「痛いなぁ」


ザンッ!


師匠の手がまた動いた。

切り離された悪魔の右腕。

師匠はいつも通りに着地して、その体に刺さった腕を抜いて投げ捨てた。

そして、悪魔の方を向き直った。

悪魔は右腕が切り飛ばされたからか、距離を取った。


「バナー、もう少し冷静さを保ちなさい。的確に状況を判断出来ないと死ぬよ」


「…貴様、何故生きている。確かに生命活動は停止していたはず」


「あぁ、悪いね。僕は女神マイミンの使徒。勝手に死ぬ事は許されていないのさ。ましてや、キミなんかを相手に死ぬ事なんて、絶対に出来ない」


「マイミン…東の大海を統べる最上位女神の一柱…その使徒だと…?」


「ま、色々あってね。()()()()()()()()


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