第十八話-To the new world-
二日後。
プレビニエンスから帰って来た四人は学院長室にいた。
「神々の使徒か…久し振りに聞いたね、その名前は…」
「あの銀仮面は、ハッキリとナオ先生の名前を出しました。もしかしてあの仮面の連中の事を知っているんですか?」
ユウに問われて押し黙るナオ先生は、いつもの明るい表情とはかけ離れた暗い表情を浮かべている。
「…仮面の者たち、不協和音。彼らの全員と知り合いって訳ではないはずだ。だけど銀仮面の紋様がユウ君に描いてもらったこの絵の通りなら、この仮面には見覚えがある。遠い昔の話だけど…」
少しの間、窓の外を見つめるナオ。
室内にいる者は皆、続く言葉を待っている。
「この仮面は…遠い昔、私の親友に贈ったものなんだ。当時は酷い戦乱の時代で、私にもその親友の彼にもどうする事も出来ない程の大きなうねりが、世界を飲み込もうとしてた。でもある時、私は光魔法の使い手として選ばれた。そして、彼は消えた」
「消えた…?」
「分からないんだ。なぜ居なくなったのか。生きてるのか死んでるのかさえ。だから消えたとしか言いようがなくてね。私は方々を探したんだけど、痕跡すら見つからなかった。それから気の遠くなるような時が経って、ようやく手がかりを得たと思ったら、この仮面は敵の手に渡っている。銀仮面の彼が私を敵対視している理由も含めて、これから調査を続けていかなければならないね」
視線を落とし、話し終えた様子のナオ。
今はこれ以上の過去を聞く事は出来ないだろう。
再びこの場を沈黙が支配する、その直前、強い意志を込めた瞳を持って、話し出す者がいた。
「ナオ先生、その調査に俺達も加えてくれませんか?」
「ユウ君…願ってもない申し出だけど、いいのかい?今までよりもっと危険な目に合うかもしれないんだよ?」
「…正直言うと怖いです。今回だって、あの氷の洞窟で死ぬかもしれないとずっと思ってました。でも今回の件で、奴らに騙され操られる人を見ました。奴らは人の生活を簡単に破滅させる。それも戯れで。そんな奴らがこの世界にいて、今もどこかで暗躍しているという事を知った以上、それを忘れて今まで通りの生活を送る事なんて出来ません!」
真っ直ぐに自分を見つめるユウから視線を外し、マナ、バナー、アサギを見るナオ。
三人共、ユウと同じ目をしている。
「そうか、そういう子達だったね、みんな。学院長としては生徒を危険な所に送り込むなんてしたくはないんだけど、それなら君達がただの生徒じゃなくなればいいんだ」
「え?」
「ヤージュ先生、例の話を進めちゃいましょうか」
「はい。では手続きをして参ります」
一礼をして出て行くヤージュ。
「例の話って何よナオ」
「うん。この半年で君達四人はメキメキと強くなっている。フマイン先生に師事して毎日鍛錬をしているし、今回に限って言えば、ユウ君はベルジアントを撃退した。
バナー君は巨人族の司祭であるグロックさんを圧倒してみせたし、アサギさんは常に状況を的確に把握して戦場をコントロールし、プレビニエンスの負傷者の救護も正確だったとお礼が来ているほどだ。
マナも巨人族相手にキッチリと無力化していたようだし、四人共が自分に合った成長を続け、その進化の片鱗を見せてくれた。
君達はこれからもまだまだ強くなる。
そしてその為には実戦を繰り返す事が更なる刺激になるだろうと思う」
「実戦、ですか?でも俺たち、学生にしては実戦積んでる方だと思うんですけど」
「だからだよバナー君。これまでの経験値を無駄にしない為に、君達を正式に魔法騎士団に迎えようという事さ!」
バァーン!!とポーズを決めて言い放ったナオ。
それとは対照的にポカーンとしてしまった生徒達四人。
「…あれ?いったぁ!!!だから氷柱ぶつけるのやめてってばマナ!!」
「うるっさい!!あんたの話は急に展開飛ぶから付いていけないのよ!!」
「ナオ先生!魔法騎士団に正式に迎えるってどういう事ですか!?この学院の正式名称はゼルコバ共和国立魔法騎士養成学院。卒業の際に試験などがあり、それに合格した者が魔法騎士になれるものなんだと思っていましたが、違うんですか?」
「イタタ…あー、概要としては合ってるよ。通常なら七年間にわたりこの学院の素晴らしい先生方の技術や知識を得てもらって、その上で上級生には簡単な任務をいくつか遂行してもらう。その評価や学院内での評価を総合して、入団試験を受けられるかどうかを判断して、試験を受けて突破した者は騎士団に迎え入れる」
「はい。スカイさんからその様な話をお聞きしました。入団試験を受ける資格を得る為にも、様々な要素が絡んできて、ただ戦闘力が高いだけではダメなんだと」
「うん。スカイ君はね、とても努力家で誠実で、先輩にも好かれ同級生や後輩にも慕われる人を惹きつける人だったから、七年間の評価は申し分無しだった。だから彼を私の私設部隊の総隊長に据えて、彼を慕う子達を彼の部下に、彼が信頼する仲間を各部隊の隊長にした。
彼の場合は、真っ直ぐにこの学院を卒業した者が辿るコースだ。
では君達が辿るコースとは。それについて説明する。
君達はこれまで通り学院には通ってもらうよ。基本的な生活は変わらないと思ってくれていい。だけど私からの任務や、他の者からの任務は学院のカリキュラムより優先してやってもらう。短期長期に関わらず、学院を離れる事もあるだろう。勿論、命の危険も増える。
正式に迎えるとは言ったが正規の騎士団員ではなく、騎士団の研究生といった立場かな。
任務に就く時は誰かを必ず付けるが、基本的に君達の意思で行動してもらって構わない。アドバイザーが常にいると思ってくれるといいかもね。
おっと、矢継ぎ早に説明してしまってゴメンね!さっきから開いた口が塞がらない様子だし、これ以外の事に関しては追々説明していく事にしようか。何か質問はある?」
「し…」
「ん?」
「…質問も…追々でいいですか…?」
「勿論さ☆」
まだやるべき事も、やる事も、全然分からない状態ではあるが、ユウ達四人が次に登る道は見えた。
彼らが見る新しい世界は、果たしてどんな世界なのだろうか。
【 Fabula de Yu 第一章:アカデミー 完 】
ナオのバァーンはJ○J○のポーズを思い浮かべてください。
これにて、第一章は終了です。
次話からは第二章。
お待たせしました、あのイケメンの登場です。
これからもどうか、お楽しみ頂けますよう。




