-序章-
この世界を創造したのは1人の神であった。
天帝・シャスモトアーキ。
彼はまず、五十九人の女神と、その妹たちである四十一人の天使を創造した。
女神と天使は魔法を操り、その魔法で国々の礎を、そしてそこに住まう人間たちを創った。
女神と天使に最初に作られた原初の人間たちは神々の使徒と呼ばれる。
彼らは女神と天使から魔法の力を授かり、其々の国を動かし、発展していった。
それを見届けた女神と天使は天上へと帰り、地上は人間たちの世界になった。
それがこの世界の創成期の話。
それは神話として語り継がれ、この世界の常識として子供が最初に覚える歴史であり、物語である。
そして、創成期から数千年の時が流れた。
天上の者たちにより齎された魔法は現代まで色濃く継承され、更に魔法を研究する者たちによって新たな魔術体系が生み出されていった。
魔法を使うのに必要な魔力は大気中に満ち溢れ、人々はその魔力を使い、魔法を行使する。
獣や精霊、悪魔や巨人なども住まうこの世界の深淵はいまだに全ては解き明かされていないが、人間の住む街や村などの安全圏は、各国の魔法騎士団によって確保されている。
現在、世界は強大な力を持つ二つの国によって分割統治されていた。
ひとつは、かつての女神たちが興した国である、バルーバ。
もうひとつは、かつての天使たちが興した国である、ゼルコバ。
後の世になってから、バルーバは帝政を、ゼルコバは共和制を、それぞれが採択。
他にも数十の国があったが、長きに渡る歴史の中で興亡を繰り返し、力ある大樹のような二つの国に寄り添うように併呑されていった。
独立国を保っている国は残り少ない。
そしてここは、ゼルコバ共和国。
その首都で、共和国内最大の都市である、セントラルシティ。
この街の片隅で一人の男児が誕生する。
彼の名はユウ。
この物語は、十八歳になった彼が、ゼルコバ共和国立魔法騎士養成学院に入学するところから始まる。