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第7文 女の敵は女……と見せかけて実は僕

 2年くらい間隔を空けて投稿するアホがいるらしいですよ。

 そんなこんなで久しぶりの投稿です。忘れてると思うので下に一口サイズの主要キャラ説明を。



 荒木 康:主人公。面倒臭がり。ヒロインと恋愛バトル中。

 髙良 陽一:主人公の悪友。バカ。恋愛バトルを面白がる。

 風波 彩月:ヒロイン。真面目? 主人公と結ばれる為に頑張る。

 黒澤 絢音:ヒロインの親友。4人の中で相対的に常識人。恋愛バトルを気にする。

「第十二回『なぜ世界は俺と運命の人を出逢わせてくれないの? ~教えてファッキ○アース~』はーじまーるよー!」


「あーどんどんぱふぱふー」


 風波かざなみとデートした日の翌日。正直お布団に潜って熟睡したい昼下がりに、僕と陽一よういちは、約一名変なテンションで頭のヤバそうな会議を開いていた。

 因みに、近場の公園でこのふざけた会議は行われている。周りにいるのが遊具で遊んでいるちびっ子達だけで助かった。初めは珍しげに見られてたけどね。

 あー、帰りてぇな。


「いや~この会議も十二回目となりました。十二と言えば干支。縁起物にも頼って恋愛成就といきたい所です。それでは、相棒のこうさん、開催にあたり何かお言葉はありますか?」


「取り敢えず一発殴らせろ」


「突然のバイオレンスッ!」


 殴られた陽一が鉄棒で一回転する。この瞬間、陽一はちびっ子の見せ物と化した。


「何しやがんだ康! 何か恨みでもあんのか!」


「お前風波の相談に適当に答えただろ。しかも僕が困るようなオマケ付きで」


「あぁ、したな。でなきゃ俺がつまんねーだろ眼に砂が入ってジャリジャリするぅ!」


 こいつ捨ててお家に帰ろうかな。


「あー眼ぇ痛かった。蛇口が無かったら即死だったぞ」


「そのまま死んでしまえ」


「おーひでえひでえ。んじゃ会議を進めますか」


 進めんのかよ……。


「さて、俺に彼女ができない理由について、前回は出会いが無いからっつー身も蓋もない結果にまとまった」


「違うだろ陽一。お前にモテ期到来は一生訪れないって結論で諦めたんだろ」


「そんな身も蓋もない以上の暴論で終わるわけねーだろ。氷河期はとうの昔に過ぎ去ったわ」


「氷河期なんて単語が出るなんて……お前陽一か?」


「お前どれだけ俺の事を馬鹿だと思ってんの?」


「今の高校に入れたのは誰のおかげよ?」


「まああれだな。持つべきものは友だな!」


 なら眼を合わせろ眼を。


「しかし納得いかねーわ。俺がこんなに努力してる中、何もしてねーお前があんなかわいこちゃんから好かれるとかよー。このちゃっかり者がえぇ?」


「知るか。文句があるなら風波に言え」


「おーおー冷たいねぇ。慰めてくれよ。親友だろ?」


「百歩譲っても悪友止まりだろ」


「違いねぇな」


 ケラケラと笑う陽一の笑い声を聞きながら、少し昔を思い出す。何だかんだでこいつとも長くなったもんだ。


「真面目な話、お前本当に彩月さつきと付き合う気あんの?」


「あん?」


 急に笑みも笑い声も消して真面目になるなよ。ビビるわ。


「あるわ。その気になれば、だけどね」


「うんまぁ……それはそれでどうなんだろうな。傍からみれば遊んでるように見えるんだよ、俺は」


「…………」


 真面目に訊かれたので真面目に返したらこの始末。じゃあどないせいっちゅーねん。


「お前がそう言う屑じゃねーとは思うんだけどよ。それは昔からお前を知ってる奴の話であって、他の奴はそうとも言えんのよ」


「なるほど、つまり……どういう事だってばよ?」


「聞き返すなよ。分かるだろ」


 ケラケラと笑いながら陽一は僕を見る。コイツは変な所で頭を使うから困る。

 僕にも分かる。僕が既に知ってる事を指している。僕の態度に何かしら悪い気持ちを持つ人が近くにいる。

 つまり。


「……黒澤くろさわが僕を疑っているのか」


「しょーゆうこと」


 陽一は欠伸をしながら何気なく肯定する。対して僕は重い溜息を吐く。


「何か面倒な事になってませんかね?」


「俺に言うなよ。お前が招いた事じゃねーか」


「あぁ……そうだね……」


 何もしてないのにどっと疲れてきたな……。


「疲れたから帰るわおやすみ……」


「まーまーちょっと待てよ康。俺にいい考えがある」


「お前とその台詞が相まって全く信用できねーよ」


 むしろ信用できるか? 役に立たない方面で。


「このままわだかまりを持ったまま彩月と接する訳にはいかんだろ? だったら、ここで綺麗さっぱり消しちまおうぜ」


「あぁ? お前一体何を企んで……」


 ふと陽一の後ろの方に視線を移す。公園の入り口に黒澤が立っていた。


「…………」


 黒澤が腕を組んで立っていた。


「…………」


 黒澤が僕を睨めてつけて立っていた。ガチロックオン。

 ……逃走本能が僕を駆り立てる!


「おっと、そうは問屋が卸さないぜ」


「てめぇ陽一離せ!」


 あぁくそ、コイツに捕まったら僕でも逃げられる気がしない!


「嵌めやがったなこの野郎! 友人を売って楽しいか!?」


「はっはっは、嫌だなぁ康。嵌めるだなんて人聞きの悪い事を言うなよ」


「清々しい悪人面だなオイ!」


「まぁまぁ康さん」


 いつの間にか近づいていた黒澤がガッと肩を強く掴み、黒い笑みを浮かべて僕を牽制する。あらやだこの娘怖い。


「ちょっとそこでお話ししようじゃないか。なーに何もしやせんよ」


「僕の首を討ち取ろうとする気配さえ感じるんですがねぇ!?」


「安心しな康」


 陽一が穏やかな顔で僕に言う。おぉ、コイツにもまだ人としての優しさが残っていたのか!


「台ぐらいは作っといてやるよ。俺のお手製だぜ? 嬉しいだろ?」


「やめろ、打ち首の刑にしようとするんじゃない!」


 考えが甘かった。ここには僕の味方は一人もいやしねぇ!






 そんなこんなで逃げられず、木製の椅子に座らされた僕。

 テーブルの向かい側、腕を組んで僕にガン飛ばす黒澤。もう話し合う気無いよねこのレディース。

 間に座る仲人気取りの陽一クソ

 あとジジイ。

 …………うん、誰?


「さーて、視聴者の皆様お待たせ致しました。第一回話し合いバトルの始まりです。お互いが納得するまで血で血を洗う口論が幕を開けます」


 僕と黒澤が得体の知れぬジジイに不信の眼を向けるのを気にせず、陽一が進行役として進める。


「あのさ陽一……そのじーさん、誰?」


「おおっと、これは失礼。自己紹介がまだでしたな」


 ご立派な白髭を弄りながら口を開く。言葉はハッキリとしていて、見た目の割りにはボケているようには見えない。


「儂の名は……忘れちまったが、まぁ良かろう」


 やっぱボケてんなこのジジイ。


「いや良くねーよ。ふざけてんなら自宅の縁側で昼寝でもしてなじーさん」


 握り拳を作りながら穏やかな口調で言う黒澤。僕より先にこのジジイが血を見そうだな。


「まぁまぁ絢音あやねさん。そう邪険に扱ってはいかんですよ。このお爺ちゃんは二人にありがたいアドバイスを教えて下さるアドバイザーだ」


「アドバイザーねぇ……」


 黒澤、全く信じてなさそうな胡散臭そうな表情である。当然僕も信用していない。コイツが連れてきた時点でまともな奴では無い。


「何せこのお爺ちゃんは世界と女を股にかける放蕩者。人生経験豊富なスーパー爺だ!」


「儂に攻略できぬ世界と女はいやせん! 目指すは現地妻百人できるかな? それが儂、ザ・クレイジーシルバーじゃ!」


 パンパパンと何処からともなく紙吹雪が舞う。陽一とジジイが決めポーズを取っていた。

 二人には反応を返さず僕は黒澤を見る。黒澤も無表情で僕を見ていた。

 ――瞬間、心、重ねて。

 僕の拳がジジイの顔面に。

 黒澤の拳が陽一の顔面に。

 紙吹雪と共に二人の身体と鮮血が舞う。


「……お見事」


「アンタもね」


 やり遂げた顔をして僕達はお互いを称え合う。まるで戦い抜いた戦友のように、僕達は笑みを浮かべた。

 何処か心地好い満足感を心に持ちながら、僕はゆっくりと歩を進める。

 前に。

 前に。

 疾く、前に。

 公園の出口に――!


「アンタもコイツらの仲間入りをしたいのか? ん?」


 ……駄目ですよねー。


「分かった。悪かったって。もう逃げようとしないから肩から手を離してお願い……!」


 握り締められた肩が滅茶苦茶痛い。コイツの握力はどうなってんだ!?


「分かれば宜しい。私だって死体は増やしたくないから助かるよ」


 さらっと恐ろしい事言うなよ。片方殺ったの僕だけど。


「回りくどいのは嫌いだから単刀直入に訊くけど、サッキーと真剣に付き合う気あるの?」


「……ノーって言ったら?」


「言えるもんなら言ってみな。明日サッキーに訃報を伝える事になるけど」


「……はは……そっすか……」


 眼がマジだよ黒澤さん……。

 僕は眼を閉じて鼻から目一杯息を吸って吐く。

 ……真面目にやろう。命が惜しいから。


「そもそも、黒澤は僕と風波がこうなった経緯を知っているのか?」


「勿論。サッキーから聞いた」


「それだけじゃ信用出来ないかな」


「サッキーと陽一はアンタを知っている。けど、私はアンタを知らない。友人の知人が詐欺師だったら、アンタはそいつを信じる気になれる?」


「えっ、僕そんなに評価低いの?」


「これでも可愛く言った方よ」


 どうしよう。コイツと和解出来る気がしない。と言うか、コイツは和解する気があるのか。


「……なら、黒澤的にはあの返しはないわーだったと?」


「んー? いや良いんじゃないの?」


「…………」


 馬鹿な……この僕が玩ばれているだと……?


「別に友達から始めましょーイエーイは良いでしょ。サッキーが言い出した事だし。問題はアンタの態度よ」


「可笑しいな。紳士的な対応をしたと思ったのに」


「ナイスジョーク」


「黒澤、お前本当に怒ってる?」


「激おこよ」


 全然そんな感じしないんだけど。


「アンタ昨日サッキーとデートしたんでしょ?」


「したな。刺激的だったぜ」


「なのに、何で今もサッキーの事を名字呼びなのよ」


「いかんのか?」


「仮にも付き合う気があるなら、下の名前で呼ぶでしょ普通」


「やだ……はじゅい……」


「うわきも……」


 わりとガチで引かれました……。


「あの娘との勝負に本気で挑む気があるなら、下の名前で呼びなさい。サッキーだって呼んで貰えるの待ってんだから」


「待ってる? 風波が?」


「ほらそこ。彩月でしょ彩月。さっちゃんでも可」


「んじゃサッキー」


「サッキー呼びは私の特等席だ。彼氏候補だからって許されると思うな」


 何か面倒になってきたな……。


「ついでに私の事も下の名前で呼びなさい。そしたらアンタの事を認めてやんよ」


「あーたん♪」


「よし、後は彩月ね」


 ……マジであの呼び方で良いんすかあーたん?


「ほら呼びなさい。大きな声で。あーたんより言いやすいでしょ」


 まあ確かに言いやすいけどさ……。

 ……ええい。ちくしょう。面倒だ。言ってやろうじゃないか。


「……彩月」


「ちっさいわねーそれが本気じゃないでしょ? ほらもう一回!」


「彩月」


「もっと!」


「彩月!」


「ワンモアセッ!」


「彩月!!」


「何だ」


「あぐせふといたかさなほ!!」


 奇声を発しながら僕は前へと飛び跳ねる。後ろを振り返ると何時の間にか彩月がいるじゃありませんか。


「……か、風波。何時からそこに」


「陽一が会議を始めようとする辺りからだ」


 ……うん。それってほぼ初めっからいたって事だよね。

 つー事はさ。


「オイ、お前ら……」


 頬がヒクヒクするのを感じながら後ろを振り向く。

 …………ジジイの死体しかねぇ! ちくしょう嵌められた!


「そんな事より、康」


「な、何でしょうか、かざな」


「…………」


 ……言わなきゃ駄目系? 駄目だろうな捕食されそうだし。


「……何でしょうか、彩月さん」


「うむ、いや何でもないぞ!」


 そんな満面の笑みで言われてもなぁ……。


「くそ、こんな簡単な罠に引っ掛かるなんて……」


 取り敢えず陽一を地面に埋めておこうそうしよう。






「……今、何か寒気が……」


「誰かに狙われてるんじゃないの?」


「いやそんなまっさかー……まさかー……」


 ……思い当たるのが1人。俺ヤバイかもしれんな。

 えー視点変わりまして陽一です。クラスメイト兼悪友の恋人候補の親友さんである絢音と一緒に歩いております。


「それより、どーよアイツは?」


「ん~……まあ、悪い奴じゃないよーな……そーでもないよーな」


「よく分かんねーだろ? 実は俺もよー分からんのよね」


「はー? アンタら友達じゃないの?」


「友達じゃないぞ。悪友だぞ」


「いや何が違うのよそれ。アイツ変な奴だったけど、アンタも大概よね」


「友は類を呼ぶ的な?」


「これ程感じたことないわ。あと逆な」


「お、気づいたか。実は頭良かったり?」


「アンタとは違うのよ」


「ひどい!」


 ハーと溜息をつきながら空を見上げている。そこに重苦しさは感じない。


「まー見守るしかないかー。サッキー楽しそうだし」


「おうよ。これからよろしく頼むぜ新悪友(ゆうじん)


「臨むところよ新悪友(ゆうじん)


 拳と拳を突き合わせる。

 これから楽しくなりそうだ。色々と。






「……てかあのジーさんは何だったのよ」


「何か公園で日向ぼっこしてたよく分からん人」


「オメーも知らねーのかよ!」


「知らねーぜ!」


 何だったんだろあのジーさん。

 では3年後に会いましょう!

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