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別れ〜薬屋〜



ファウルと話をした翌日、俺はファウルから選別としてレティシアを与えられた。奴隷という文化は馴染みが無いものの地球にもあって、物ではなく労働者という見方をすれば抵抗は無いのだが違和感はある。まぁそれでもレティシアで良かったとは思っている。然程交流が無い奴を渡されていたら王都を出たらさよならというもの考えていたし。



レティシアを渡された際に奴隷の設定として主人である俺が死亡した場合には奴隷から解放するように、そして性交渉は本人の意思に任せる事にした。前者は言わずもがな、後者はレティシアの意思を尊重するためにだ。ファウルから強制させることも出来ると言われたがそれだけは頑として断っておく事にする。外道畜生とか言われている俺だが鬼畜にはなりたく無い。エロのジャンルは凌辱なんてクソ食らえ、純愛こそが至高がモットーだからな。



そのときにアーシェがレティシアに何か耳打ちして顔を真っ赤にさせる事があったが……深く関わらない事にしよう。女の話に踏み込んでいっても余計な火傷をするだけだし。



そして午前、俺はフード付きのローブを着込んで大通りを堂々と歩いていた。顔を隠していれば怪しまれるのだがそれは隠しているのが俺だけだった場合の話だ。大通りにはギルド員らしき人物が数人、顔に負った傷を隠す為にローブを着込んでいる。中には曝け出している者も居るのだが隠している人は傷を恥だと隠している奴が主だ。兵士たちもそれを察しているのか無理矢理剥がすような事はしない。つまり、怪しまれるような行動さえしなければ目をつけられる事は無いのだ。



俺の側にはレティシアが控えている。自然体でありながら周囲に気取られ無い様に警戒している姿に感嘆するしか無い。残念なのは格好が質素な布の服とズボンだという事。折角スタイルが良いのだからもう少し色気のある服を着て欲しいものだ。アーシェが幾つか勧めても動きにくいで一蹴するからな。高身長で姿勢が良く、目つきが鋭い美人だから……軍服とか似合うと思うんだが。



「それで、どこに向かうのだ?」


「まずは薬屋の婆さんだな。その後にドワーフの爺さんで夜になってからギルドに行く」



露店で声を上げて客寄せをしている店員を横目で見ながら大通りから道を外れる。そして大通りの喧騒が少しばかり遠くなった場所にある木造造りのフラスコの看板が掲げられた店に辿り着く。



「ハイハイ、なんの薬を御所望かーーー」


「よっ」



扉を開いて中に入ると来客を報せるベルが鳴る。他に客が居ない事を確認してから店の奥から杖をつきながら出てきた老婆にフードを外して顔を見せる。



俺の顔を見た老婆は一瞬動きを止め、そして破顔させて俺に近寄ってきた。



「ナオキ!!ナオキじゃないか!!あぁ、元気してたかい?」


「おう、元気も元気だぜ?腕一本無くしたけどなぁ!!」


「生きていりゃあ儲けもんだよ!!本当に良かった……そちらのお嬢さんは?」


「ファウルから渡された奴隷。まぁ俺は奴隷じゃなかて一人の人間として見てるけど」


「初めまして、レティシアと申します」


「これは御丁寧にどうも、あたしゃ薬屋を営んでるしがない老人さ。気軽に婆さんとでも呼んでくれ」


「は、はぁ……」



婆さんが椅子をどこからか引っ張り出してきたのでそれに座る。その時にさり気無く店を閉めたので来客を心配する必要は無さそうだ。



「で、何があったんだい?どうせ貴族か持て囃されている餓鬼が粋がってやらかしたんだろうけど」


「予想ではそんなところ。それで俺はここを出るつもりだから別れの挨拶をと思ってね」


「そうかい……寂しくなるねぇ」


「そっか……三ヶ月はほとんど毎日ここに来てたからな」



『戦士』、『魔法使い』と称号は持っているが俺は回復魔法の適性が極端に低い、切り傷一つ治すのがやっとなのだ。だから魔法で治すよりも薬で治す方が手っ取り早いので婆さんの薬をよく使っていた訳だ。



「それならあたしの薬を幾らか包んでやろうかねぇ」


「えっ、良いの?」


「良いさ、ナオキは良く薬の道具を持って来てくれたからあたしゃ大助かりだったんだよ。このくらいはさせとくれ」



そう言って婆さんが持って来たのは一般的な回復薬。上級、中級、下級と種類があり、上に行くほど回復力と値段が高くなるそれと大抵の状態異常を回復出来る万能薬、それぞれ10本ずつ渡された。



「あ、そうだ。婆さん、預けてた奴引き取るわ」


「おぉ、そうだったそうだった」


「預けてた?アイテムボックスにすべて入れていたのでは無いのか?」


「どうも荷物全部を運ぶのには不安があってね、それにアイテムボックスに入れっ放しだと何があるのかの把握も面倒だから婆さんに預かってもらってた」


「この店にゃ無駄に置き場があるからねぇ」



愉快そうに笑って婆さんは床の一角を杖で叩く。すると地響きと共に床がずれて地下に続く階段が現れた。



「地下室……本当に薬屋なのかここは」


「ヒッヒッヒ、今じゃ皺くちゃのババアだが若い頃にはぶいぶい言わせててねぇ。その時の縁で色々と着けてもらったのさ」



婆さんの先導で階段を降りる。光源が無いはずの地下だがヒカリゴケという自ら発行する事で光合成をしようとするパワフルなコケが天井に群生しているので灯りには困らない。



「ーーーこれは」



降りた先に広がっていた光景を見てレティシアは驚いていた。



そこにあるのは物資の山。薬草毒草に始まり、鉱石や魔物の素材などが所狭しと並べられている。これらはすべて俺が集めてきたものだ。レティシアもその事を分かっているだろうが、ギルドに入って三ヶ月の俺がこれだけの物資を集めた事に驚いているのだろう。



「婆さん、薬草とか毒草とかはあげるよ。薬を貰ったお礼ってことで」


「おや良いのかい?それじゃあありがたくもらっとこうかね」


「他にも使えそうなのが有ったら言ってくれ。レティシア、アイテムボックスに入れるの手伝って

、俺腕が一本しか無いから」


「流れるように自虐するのは止めて欲しいんだがなぁ……」



こうしてレティシアに呆れられながらも婆さんに預けていた荷物を回収し、いつか機会があったらまた会いに来ることを約束して俺たちは薬屋を後にした。




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