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東方神殺伝~八雲紫の師~  作者: 十六夜やと
7章 永夜異変~月の襲来、狂気乱舞~
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49話 喜劇を悲劇に

月の民襲来

side てゐ


こんなはずじゃなかった。




こうなるなんて思いもしなかった。




というか、こうなるなんて誰が予想できた?




永遠亭の姫様に依頼された『異変解決に乗り出す者達の足止め』で、迷いの竹林に大量の罠を仕掛けた。

ただでさえ人の侵入を拒む竹林に加えて、暗闇で視界の悪い地面に落とし穴を始めとする罠。おそらくウドンゲや案内人も容易に突破できないであろう。


竹林に隠れながら、そう思っていた。


侵入しようとしてきた者は10人。

博霊の巫女と幻想郷の賢者、人形遣いに魔法使い、吸血鬼やメイド、半霊+幽霊。中々の面子であり、少しだけ足止めができるのかと心配になってきた矢先、それ以上の化け物どもが現れた。




半妖と吸血鬼。

しかし妖力の大きさが幻想郷の賢者の比ではない。




最初は少女・女性組が『誰が異変解決をするか』で揉め事となり、それを眺めている時間は面白かった。『私達が解決する!』だの『これは私の修行です!』だの『ダイエット!』という単語がちらほら聞こえた。

そこまでは良かった。


半妖と吸血鬼が来たときに、幻想郷の賢者が慌てたようにスキマを開いて言ったのだ。


「スキマから行けば永遠亭なんて一瞬よ! 減量成功させるのは私だわっ!」

「紫! ずるいわよ~」

「なんか目的変わってない?」


それに反発する半妖と吸血鬼。


「儂等吸血鬼の覇道は誰にも邪魔させぬ!」

「そうだよ!」


と言った刹那、半妖がゆらりと竹林方向――私の方を向きながら歩いてきた。ナイフを抜いて。


まさか……気づかれた!?


「『かぐや姫』って童話、知ってる?」


知ってるもなにも依頼人がかぐや姫(ほんにん)なんだけど。

しかし、彼が問いかけたのは少女達にであった。


「『今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり』なんて冒頭で始まるけど、僕はその文章は今に適していると思うんだ」

「お、お師匠様。何を……」


私は半妖と目があった。

合わせてはいけなかった。


半妖は、嗤っていた。











「竹取物語じゃあああああああああああああああああああ!!!!」











一閃。

そう、ナイフを持った左手を横に振っただけ。


それだけの行動なのに、そこから斬撃がこちらまで飛んで来て、私は無意識にしゃがみこんだ。飛ばされるかと思うくらい強い風が、迷いの竹林を薙いだ。

そして顔を上げると――






竹林が消えていた。






生い茂る竹が見事なまでに一掃され、隠れていた永遠亭が綺麗に丸出しである。これなら道に迷うことなく、人里の患者も自力で来れるに違いないであろうというほど、何もなかった。




何もなかった。

何もなかった。

何もなかった。




「よし、これで通れるね」

「うむ」

「「「「「………」」」」」


言葉もでない、とはこの事だろう。

顎の間接が開いたまま閉じない。


半妖と吸血鬼が満足したように頷きながら前を歩き、それを迷いの竹林であった場所を見渡しながら続く少女達。道に迷うこともなく目的地に着くであろう。

永遠亭見えてるし。

竹ないし。


「お勤めご苦労様」

「大義であったぞ」


その勤め先を失った私への当て付けだろうか。

私の横を通り過ぎるときに、勤め先を一掃した半妖と偉そうな吸血鬼が労いの言葉をかけてきた。

涙腺崩壊間近である。


「え、これ、いいの……?」

「ウサギの子可哀想」

「……妹紅に新しい就職先紹介しようかな」


惨めな私を憐れみながら、少女達が通りすぎていった。


消え去った元・迷いの竹林。


私の泣き声が響き渡った。



   ♦♦♦



side 輝夜


「……ねぇ、永琳」

「……何でしょう、姫様」


私――蓬莱山輝夜(ほうらいざんかぐや)の前に広がる光景は、少し前ならば想像もつかないようなものだった。






「竹林はどこにいったの?」

「さぁ?」






あれ?永遠亭ってこんなに見晴らしが良かったけ?と、思わず錯覚してしまうほど、生えていたはずの竹林が綺麗なまでに消えていた。

永琳の計画の一部かと彼女の方を向いたが、顔がどことなく引きつっているあたり異常なのだろう。


さっきまで月を眺めていたのに、部屋に戻って靴を履く間に何が起こったのか。

強大な妖力を感じたのは間違いないが……。


「お、あれが異変の主犯か!」

「呆気ないねー」

「貴方が行程すっ飛ばしたんでしょうが」


ぞろぞろと迷いの竹林(だった何か)を通って、真っ直ぐ永遠亭へと歩いてくる御一行。


「ふふ、私はレミリア・スカ――」

「紅魔館のメイド長の十六夜――」

「私は霧雨魔理沙! 普通の――」

「私の名前はアリス・マーガ――」

「八雲紫、幻想郷の賢者の呼――」

「博霊の巫女、博霊霊夢よ。――」

「庭師兼未来師匠の弟子、魂――」

「冥界の管理人、西行寺幽々――」

「多い多い! 一気に自己紹介されても覚えられないわ!」


ただでさえ永遠亭から出たことなど、ここ数百年はないのに!

8人が同時に名乗るものだから、誰一人として名前が覚えられない。というかバラバラで訳がわからない。


「やはり多すぎたか」

「ここ書いてる作者が『処理しきれねぇw』って言ってるから、やっぱバトルロワイヤルな感じで減らせば良かったね」


メタ発言をする男達。

幻想郷で男性を見るのは初めてだ。


「儂の名はヴラド・ツェペシュ、覚えておくが良い」

「僕は九頭竜未来。竹林伐採した張本人でーす」

「アンタかっ!?」


私は白髪の半妖を睨む。

確かに異変を起こしたのは私たちだけど、だからといって閉鎖的な永遠亭の結界の役割を果たしている迷いの竹林を一掃していい理由にはならない。妹紅になんて言えばいいのよ。


というか最近、妹紅に会ってない。

前までは妹紅と殺し合いをすることが頻繁にあったにもかかわらず、この前誘った時は「紫苑の家でTRPGするから無理」と断られてしまった。私と同じ『不死を持て余す者』として平凡で退屈な人生を送っていたはずなのに……どういう心境の変化だろうか?

その『紫苑』という奴は、妹紅の退屈を紛らわせる存在なのか? それなら何と羨ましいことだろうか。


いや、今はそんなことはいい。


「私の名は蓬莱山輝夜。こっちは八意永琳」


私の隣で弓を構える永琳が頭を下げる。


「蓬莱山……輝夜……。もしかして『竹取物語』の?」

「あら、知ってるのかしら。私がそのモデルよ」


『竹取物語』において絶世の美女として描かれており、そのモデルが私。

物語の最後で月に帰ったようなことが書かれているけれど、諸事情により永琳と幻想郷に来て今に至るのだ。

その事実を知った半妖が騒ぎ出す。






「ほら! 僕が翁のように竹林を伐採したのは間違いじゃないかった!」

「大きな間違いに決まってんでしょ!」






おじいさんは何万本もの竹を一度に切ってないわ!

そもそも伐採された竹はどこにいったのよ。


そんな感じの茶番をしていると、赤白の巫女――博麗霊夢が前に出る。


「貴女が夜が明けない異変を起こした張本人ね」

「そうよ」

「今すぐやめなさい。こっちも迷惑してんのよ」

「それは無理な相談ね。こっちは月の使者から逃げるために起こしたのだから」


月の使者。

その言葉を出した瞬間に空気が変わった。

正確にいえば、お気楽な雰囲気の半妖の表情が険しくなり、男の吸血鬼が私と永琳を睨む。懐から刃渡りが長い2本の短刀を取り出す半妖に、空中から黒く長い南蛮銃を出現させる吸血鬼。


その雰囲気の変化に連れも戸惑う中、博麗の巫女は何かを知っているらしく慌てた様子を見せる。


「月……か。貴様、まさか月の民か?」

「それがどうした?」

「なーるほどねー」


半妖は笑った。目が笑っていなかったが。






私の分かる範囲で描写しよう。

博麗の巫女がいきなり半妖に向かって赤い弾幕を放った。

そして――次の瞬間には永遠亭を大きくそれた形で、迷いの竹林だった更地に銀色の光が迸り大きな断層を形成する。地面が大きく揺れ、吐き気を催すほどに濃い妖力と殺気が充満する。

予想であるが、博麗の巫女は半妖の短刀を弾幕で軌道を変え、永遠亭に振り下ろされるはずだった斬撃を竹林に留めたのだろう。竹林を一掃した斬撃がもし永遠亭に直撃していたら……。






半妖は瞳孔の開いた瞳で博麗の巫女を睨んでいた。


「……どうして邪魔したのかな?」

「異変の首謀者殺させるわけにはいかないのよ。貴方の月の民を憎む気持ちは分からないでもないけど、少なくとも紫苑さんは月の民に会っても即座に殺そうとしなかったわ」

「………」


また『紫苑』。どのような人物なのか。

名前が出た瞬間に半妖は肩をすくめながら短刀の構えを解く。


「ごめん、ちょっと感情的になりすぎた」

「全く……幻想郷のルールくらい守ってちょうだい」

「確かに儂等が早計であったな。こやつ等が街襲撃に関係しているとは限らぬし、何よりここは幻想郷。迂闊だぞ、切裂き魔」

「返す言葉もないや」


切裂き魔と呼ばれた半妖は短刀を懐に収めると、姿勢を正して私達に頭を下げた。


「申し訳なかった」

「……それなら竹林についても謝罪してほしいわね」

「それは僕は悪くない」


礼儀正しいのか正しくないのかハッキリしてほしいわ。

仲直り(?)もしたところで、と白黒の魔法使いが疑問を口にする。


「でも月の使者って何なんだぜ?」

「それは――」


と口を開こうとして、元竹林の空間が大きく歪みだす。

幻想郷の賢者が使う歪みに似ており、それは次第に広範囲にまで展開された。その光景を見た永琳と賢者が大きく目を開く。


そこから現れる人の数々。

ざっと1000程度だろうか?




「何よ、これ……」




誰が呟いたのかはわからない。

幻想郷の面々が唖然とする中、半妖が大きな声で幻想郷の賢者に叫ぶ。飄々とした様子は微塵もなく、額に冷や汗をかきながら。

恐らく、これが誰の仕業なのかを理解しているのだろう。


「八雲紫! 叢雲を早く!」

「え、でも……」

「いいからっっっ!!!」


1000ほど現れた謎の集団。

そこから出てくる影2つ。

永琳は無意識に呟いた。




「豊姫……依姫……」




「――久しぶりですね永琳さん、と言いたいところですが、邪魔な人間と妖怪が多いですね」


金髪の女性が微笑む中、半妖と吸血鬼は言葉を交わす。

好戦的かつ野蛮な表情で。


「ねぇ、帝王。とにかく彼女達を死んでも守って」

「……死ぬ気か、切裂き魔」


半妖は苦笑いを浮かべた。











「これは――死んじゃうかもなぁ」





紫苑「『次回・九頭竜、死す』」

未来「勝手に殺さないで!」

紫苑「というか豊姫と依姫のキャラが分からん」

未来「原作やってないからね、やろうとして無理だったし」

紫苑「OS合ってなかったからなぁ」



妹紅「(´;ω;`)ウゥゥ」

てゐ「(´;ω;`)ウゥゥ」

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