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東方神殺伝~八雲紫の師~  作者: 十六夜やと
2章 紅霧の宴会~始まりの物語~
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16話 和解?

仲良きことは素晴らしきこと

すべてに当てはまるわけではないが

side 紫苑


スマホを取りに帰って戻ってきたら、紫の話が終わったらしく、それぞれがまた酒を飲んでいた。

まさかスマホの充電が7%しか残っていないとは思わなくて、どうにか半分まで回復させてきたのだ。俺は八雲ファミリーと神社組と幽香の輪に入った。


「ただいま、話は終わったみたいだな」

「おかえりなさいませ、師匠」


俺は紫と幽香の間に座った。

霊夢やアリスも隣を開けていたのだか、なぜか花の妖怪の威圧に耐えられなくて横に座ったのだ。輪にいる皆が苦笑いを浮かべる。


藍さんから安定の麦茶を頂き、料理をつまむ。


「で、どうだった?」

「なんか……軽々しく聞いて申し訳なかったわ」


アリスが気まずそうに頭を下げ、霊夢と魔理沙は目を背ける。


「隠すようなことでもないし、幻想卿誕生秘話の一部なんだから、住人には聞く権利はあるだろ」


俺が直接的に拘わっていないにせよ、紫に幻想卿の創造を促したのは明らかだ。俺が言いふらすのは妙かもしれないけれど、紫が話すのは適任だと判断したから任せた。

あと面倒だったから。


「けど2人が紫苑さんの影響を受けてるとは思えないのよね……」

「あら、私たちは結構影響受けてるのよ。私は師匠のポーカーフェイスとか策士的な戦い方とか、逆に幽香は師匠の殺気とか力押しでの戦闘とかね」

「見事に別れてるな」


聞いてみるとロクな部分しか影響されてないな。

引っ越し時に紫と会った切裂き魔も、紫を見て『胡散臭さは師匠譲りかなー?』とか言ってたし……。


「ところで紫苑」

「うん?」


貴婦人が如く酒を嗜む幽香が、俺を――正確には俺の右腕を見ながら聞いてきた。

霊夢も同じことを感じたのか、すっげー嫌な予感が。


「その右腕はどうしたの?」

「これか? ちょっと異変の時に、な?」


フランに腕を粉々にされました☆とか絶対に言えない。

幽香の暗い笑みを見れば分かる。


「ちょっと待ってて紫苑。異変の主犯と遊んでくるから」

「落ち着け幽香っ!? お前の笑顔が洒落になってねーぞ!?」

「離して、あいつ殺せない」

「とうとうオブラートに包まなくなったかっ!?」


妖力を見た限り、今のコイツは壊神や切裂き魔レベルの強さだと予測でき、レミリアなんて相手にならねぇぞ、多分。しかもレミリアやってないし。

昔はこんなキャラじゃなかったよな、幽香!?

1500年間に何があった!? しかもコイツ力強ぇ!


「そ、そうだ! 紫苑って紫と幽香よりも強いのか?」


魔理沙が強引に話を変えてくれる。

食いついた幽香がやっと俺のとなりに戻ってきたので、俺はホッと胸を撫で下ろす。


「んなわけねーだろ。紫や幽香の脚もとにも及ばねーよ」

「でも大妖怪4匹を倒したって……」

「当時の妖怪なんて今よりも随分弱かったのさ。大妖怪とは称しているが、今の上級、最悪中級ぐらいの妖力だぞ? 逆に魔理沙は幽香レベルの妖怪4匹を相手取れるか?」

「出来るわけないぜ!?」


どれだけ能力が特殊だろうと、種族による基礎能力が違いすぎる。

だから人間は『知恵』で対抗するのだが……今の大妖怪なんて『知恵』の塊みたいなもんだし、外の世界(あっち)でも数の勝負だった。

それ以前に


「大妖怪4匹を圧勝出来るなんて、それ人間じゃないだろ」


つまりはそういうことである。


「なら――試してみる?」

「遠慮しとくよ」


幽香が妖艶な微笑みで誘ってきたが、俺はまだ死にたくない。

彼女も残念そうだったがアッサリ引き下がった。


「おにーさまー!」


内心冷や汗をかいていると、天使――もといフランがやって来た。

外に出られるのかが理由なのかは俺には分からないけど、彼女はとても嬉しそうだ。子供はやっぱり引きこもってないで元気なのが一番だろうし、右腕を犠牲にした甲斐があったもんだ。


フランは俺の左手を握ると、何処かへつれていこうとする。

方角的に……レミリアのところかな。


「お姉様がお兄様を連れてきてって」

「おぅ、そうか。紫、ちょっと紅魔館組のところ行ってくるわ。幽香はついてこなくていいぞ」

「分かりました」

「しょうがないわね」


俺はフランと共に紅魔館組の元へ向かった。

……表へ出ろ、みたいなやつかな?



   ♦♦♦



side レミリア


「なぜ妹様を向かわせたのですか?」

「私よりもフランの方が警戒されないでしょ?」


美鈴の素朴な質問に主らしく堂々と答えたが、本音は私が赴いたらボコボコにされる運命が見えたからだ。

『誰にやられるのか』までは分からないが、遠くから見て目から光が消えているあの花妖怪が犯人になるのではないかと推測。

噂で聞いたことのある四季のフラワーマスター・風見幽香。幻想卿でも五本の指に入るほどの猛者と噂されている彼女ですら、あの男が関係しているとは予想外だった。

さすがおじいさまの盟友とでも言うべきか。


「レミィ、分かってるんでしょうね?」

「う、煩いわね。分かってるわ」


親友に釘を刺される私。


あの騒動の後、紅魔館で彼に対する今後の関係を話し合った結果、『彼と友好関係を築く』ということが決まった。おじいさまの遺言でもあるし、なぜか懐いているフランや咲夜までもが彼側についたことが決定打となった。

ちょうど様子見に来た博麗の巫女に頼んで、宴会で謝罪の仲介を頼んだのだけれど……。


パチェが心配しているのは『ちゃんと私が謝罪できるのか』だ。謝ることなんて人間の子供でもできることだが……果たして、その時になった時に謝れるだろうか? プライドが邪魔しそうな気がしてならない。


「お嬢様、紫苑様がお見えに」

「「「!?」」」


私やパチェ、美鈴が急いで姿勢を正し――



「そーれ、肩車だぞー」

「わぁ! 高い高い!」



フランを肩車したや夜刀神が現れた。

ものすごく楽しそうである。


「あ、スカーレット姉ちーっす。で、どこで殺し合う?」


そして壮大な勘違いをしつつ、とても馴れ馴れしそうに聞いてきた。さらっと『殺し合う』ことを前提に聞いてくるあたり、彼が本当に普通の人間なのか疑問に思えてくる。ぶっちゃけ私の知ってる普通ではないと思う。


「私たちはお前と戦いに来たのではない事を先に言っておこう」

「そうなの?」

「お姉様はお兄様に謝りに来たんだよ」

「マジで?」

「ちょ――」


威厳をもって夜刀神と語っていたが、妹がまさかの暴露。

美鈴は苦笑いを浮かべ、咲夜は目を背け、パチェは笑いを必死にこらえている。


「俺、なんか謝られるようなことしたっけ?」

「お姉様がこの前、お兄様にひどいこと言ったでしょ? それについてちゃんと謝って仲良くしたいって、みんな思っているの!」


フランが私の言いたいことを、言わなくてもいいことまで織り交ぜて夜刀神に伝えた。

穴があったら入りたい気分だ。

しかし夜刀神は――不思議そうに首をかしげる。


「スカーレット姉の言ったことは正論だろ?」

「「「「「え?」」」」」

「ぶっちゃけ俺の発言の方が煽っているようにしか聞こえないし、家族の問題に首突っ込んだのも俺が悪いだろうよ。いきなり武器を突き付けてきたのは……あっちではいつものことだし謝られる要素は何一つないと思うけど」

「しかし! お前は私に――」

「俺は敵意を向けてきた奴らには容赦しないつもりだけど、ここは幻想卿だぜ? アホ共ならまだしも、ここの住人とガチで殺し合いするわけないじゃん。弟子が作った世界のルール守らないで、どうやって師匠名乗ればいいんだよって話」


なんだろう、この男と話していると調子が狂う。

つかみどころがなく、威圧してもどこ吹く風のごとく躱され、敵対すれば容赦なく報復。ある意味では『幻想卿の賢者』と似ているようで非なる存在。胡散臭さがない分、本当に厄介な相手だ。


そんな私の考えを知ってか知らずか、


「ちょいと失礼するよ。あ、紫色の魔女さんお久しぶり」

「パチュリー・ノーレッジよ」

「んじゃあ、パチュリーさんでいい? 魔理沙から『たくさんの本持ってる紫もやし』って聞いたから、読書好きの身としては会話したかったんだよ」

「後で魔理沙をシバくとして……貴方、本に興味あるの?」


パチェと会話を始めた。

本が好き、という言葉で親友も興味を持つ。


「うちにも本があるけど、図書館レベルの蔵書を持ってるって耳に挟んだから、ぜひとも本を借りたいと思ってさ。あっちの世界で魔術師共から押収した魔導書とか読み始めて本好きになったし――」

「魔導書、か。それは見せてもらいたいわね。他にどんな本を持ってるの?」

「薬学書とか政治学系統の本、哲学・数学の教科書やら兵法書の原本まで揃ってるぜ」

「――いいわ、図書館の本を貸してあげる。その代わりとはなんだけど、貴方の蔵書を貸してちょうだい。私の図書館は現世で幻とされた本しか置いてないから」

「そうなのか。俺の本でよければいくらでも貸すぞ」


何かしら、この疎外感。

今までにないくらいパチェが楽しそうだ。


「――とにかく! この前は申し訳ないことをしたわ。ごめんなさい」

「律儀だなぁ」


個人的には置いてけぼりに納得いかないけど、なし崩しに謝ることでこの前の件を終わらす。

パチェが『話のいいところで邪魔するな』という視線を向けていたけれど……謝れって言い出したの貴女でしょ? 私悪くないわよね?

すると、夜刀神は手を差し出してきた。握れということだろうか?


「ほれ、仲直りの握手」

「え、えぇ」

「これからもよろしくな、スカーレット姉」

「その呼び方をやめなさい、夜刀神紫苑」


男の手は大きくて暖かく――おじいさまに似ていた。




「お兄様、肩車して!」

「紫苑、魔導書はどんな種類が……」

「紫苑さん、ところで格闘術を嗜んでいると聞いて」

「紫苑様、こちらの料理はどうでしょう?」


私より人気なのが腹立つわ。




魔理沙「お、パチェリーとのフラグ来たか?」

幽香「あの魔女邪魔ね……」

紫苑「落ち着けバトルジャンキー」

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