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東方神殺伝~八雲紫の師~  作者: 十六夜やと
2章 紅霧の宴会~始まりの物語~
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11話 初めての宴会

騒げ騒げ

それが宴会だろ?

side 霊夢


「宴会か……俺はパスかな」


今日もご飯を食べに――紫苑さんのお見舞いに、神社の隣に建っている家にお邪魔した。

藍の作った晩飯をご馳走になりながら、私は明日の宴会に紫苑さんを誘ったのだが……本人は困ったような顔をして断った。何かしらの苦手意識と遠慮があるように見える。


「どうして?」

「俺はお酒飲めないからなー。飲めない奴が行ったって周りをしらけさせるだけだし」


どうやら周囲に配慮しての断ったようだ。

しかし――ここで引き下がるわけにはいかない。


幻想卿では異変解決後に宴会が行われる。

その宴会には異変の首謀者や解決した立役者などが参加するけれど――解決したのは博霊の巫女である私となっているが、実質的に異変を解決したのは目の前に座っている紫苑さんだ。

この前紅魔館に足を運んだが、レミリアと妹のフランの仲睦まじさは異変最中の喧嘩が嘘のような光景だった。紫苑さんがいなければスカーレット姉妹は本当の意味で(・・・・・・)救われることはなかっただろう。


というか……昨日、首謀者であるレミリア本人から紫苑さんを宴会に誘ってほしいと頼まれた。ちゃんと謝りたいと言ってたけれど、紫苑さんには内緒だ。


という裏の事情もあり、是非とも紫苑さんに参加してほしいのだが、


「しかもレミリアさんを始めとする紅魔館組も来るんだろ? 俺はあの人たちから嫌われてるから、あまり宴会を殺伐とさせたくないし止めとくわ」


首謀者のせいで紫苑さんが説得出来ない。

あの吸血鬼何したのよ。


「私からも参加をお願い致します。これは異変解決の宴会というだけでなく……紫苑殿の歓迎会も含まれておりますので」

「え? マジで?」

「宴会の主役がいないのはおかしな話ですし……紫様が明日の宴会のために服を全力で選んでいる姿を見る限り、紫苑殿が参加しないと主が泣きますので」


紫……恋する乙女かっ。

けれど、藍の言葉が決定打となったようで、


「うーん……そこまで言われちゃあ、参加しないわけにはいかないか」


紫苑さんは折れてくれた。

藍の個人的な感情も含まれている気がするけど。私の勘が告げている。


「その宴会って、どのくらいの規模で開催するんだ?」

「人間じゃない奴らが大量に来るわよ。慧音や妹紅も参加するとか言ってたかしら?」

「ふーん」


というか私と魔理沙ぐらいだ、人間は。

(一応)人間である紫苑さんの歓迎会に妖怪が参加するのもおかしい気がするが、その説明を聞いて「ふーん」で済ませる紫苑さんだから大丈夫か。心なしか嬉しそうな表情だ。


「宴会かー……、少人数の飲み会か堅苦しいパーティーぐらいしか出たことないからな」

「どうせ理由つけて酒のみたい奴らの集まりだから、そう緊張しなくて大丈夫よ。というか博霊神社で開催するのはいいけど、後片付けするのはいつも私なのよね……」

「片付けぐらいは手伝うよ。こんな手だけどさ」


紫苑さんはない右手を振った。異変で跡形もなく消えたはずの腕は、ようやく手首まで生えてきている。あと数日で完治するそうだ。


「本当に治るのね……その腕」

「なんだ? 信じてなかったのか」

「そういうわけじゃないけど、普通の人間は欠落した腕なんて生えてこないから、なんだか化け物じみてるなーって」

「霊夢、さすがに言い過ぎだぞ」


藍は眉を潜めたが、案の定紫苑さんは笑うだけだった。

化け物という言葉に気を悪くした様子はない。


「あははっ、確かにそうかもな」

「……紫苑さんって怒らないのね」

「図星なのに怒る必要ないだろ?」


なんというか……素直な人だなぁと思った。

どうしてこんな立派な師匠から、あんな胡散臭い弟子が生まれたのか、本当に不思議だ。



   ♦♦♦



side 紫苑


霊夢が飯食いに来た次の日。

要するに宴会当日。


手ぶらで宴会行くのもどうかと思ったので、片手で頑張って作った稲荷寿司を持って博霊神社にやって来た。作ってるところを藍さんに見つかって怒られたが、稲荷寿司を献上して怒りを納めてもらった。150個あれば足りるだろ、多分。

最近は左手だけで何かをすることに慣れてる自分がいる。


指定されていた時間にやって来たけれど、もう宴会が始まっていた。幻想卿の住人は時間にルーズではないらしい。そして人間がほとんどいないな。


俺は賽銭箱の前にいる霊夢と魔理沙の元へと足を運ぶ。


「よーっす、来たぞ」

「あ、紫苑さん!」

「やっと主役の登場だぜ」


軽く挨拶して、賽銭箱に500円玉を入れる。

嬉し泣きをしている霊夢を生暖かい目で見守りながら、俺は魔理沙に話しかけた。


「遅くなってすまんな」

「勝手に酒飲み始めたのはアイツらだから気にしなくていいぜ。それはなんなんだぜ?」

「これか? 稲荷寿司だけど」


重箱の中身を見せると、魔理沙は目を大きくした。


「紫苑って料理作れたのか」

外の世界(あっち)では他に作る奴いなかったしな」

「――では、稲荷寿司は私の方で配っておきますので、紫苑様は宴会に参加なさってください」

「あ、咲夜。久しぶりー」


いきなり現れた紅魔館のメイドに挨拶する俺。

驚くことなど一切ない。なんか現れ方からして時間操ってるような気がするが、所詮は『ような気がする』だけだ。


「んじゃあ、少し回ってみるか。霊夢、麦茶くれない?」

「えー、ここは酒飲もうぜ!?」


魔理沙が酒瓶を押し付けてくる。

別に未成年者の飲酒を咎めるつもりはないが、酒瓶押し付けてくるなや。


「俺は酒が苦手たから無理だって。酔った時に大惨事になるぞ?」

「大丈夫だって! 気にする奴なんていないぜ?」


そうか……ならいいか。


「なら――酒飲むか」

「羽目を外すのも大切よ」

「飲み比べでもするか!?」

「無理なさらないよう注意してくださいね」

「了解。あ、霊夢。――酔って神社を更地にしたらごめんな」


「「「ちょっと待て」」」


酒瓶持って宴会に混ざろうとしたところで3人に呼び止められた。


「ん? どした?」

「いやいやいやいや、更地ってなんなんだぜ!?」

「俺って酔うと何するか分からないんだよ。前回飲んだときは能力で建物一棟全焼させたからさ。アルコールに弱いらしい。だから博霊神社なくなる可能性大ってことで――」

「紫苑様、麦茶です」


咲夜が麦茶の入ったコップを渡してきたので、酒瓶と交換する。他人事じゃない霊夢なんか涙目で首を横に振ってる。

やっぱりダメかー。

幻想卿は全てを受け入れてくれるというキャッチコピーがあった気がするが、どうやら俺の泥酔は受け入れてくれないらしい。まぁ、受け入れられても困るのだが。


麦茶片手に宴会参加者を眺める。

ざっと見て2.30人といったところか。

大きなビニールシートを敷き、その上に料理やら何やらを置いている感じだ。日本で言う花見に近い宴会だなーっと感じた。ビニールシートにいくつかの輪が出来上がっていることや、ビニールシートが幻想入りしていることにも驚いたが。


「師匠、こちらです」


声をした方を見ると、弟子が優雅にビニールシートの上に座っていた。隣に藍さんと膝に猫の妖怪・橙が鎮座していた。八雲一家だね。

呼ばれたからということで、俺は紫と藍さんの間に胡坐をかいて座った。


紫と軽い挨拶をして、近況報告をしながら料理をつまむ。

腕を失ったことは藍さんから聞いていたようで、しきりに心配していたが、俺が大丈夫だと何十回も説明したら渋々納得してくれた。あと、帝を藍さんから返してもらったことも知っていたようだ。


重要なことを話し終えて適当な会話をしていると、慧音と……水色の髪をした少女、緑髪をサイドポニーでまとめている少女、金髪の少女がこちらに歩いてくるのが見えた。


「慧音、どうしたんだ?」

「いや、今回は紫苑君の歓迎会だと聞いてね。彼女たちを紹介しようと思った――」

「アンタが夜刀神紫苑ね!」

「あ、あぁ、そうだけど」


慧音の言葉をさえぎって、水色の髪の少女が小生意気に指さしてきた。

元気だなーとしか思わんけど。


「アタイはげんそーきょー最強の妖精、チルノだ!」

「幻想卿最強の妖精、か。そりゃまた凄い。」

「チルノちゃん……いきなり失礼だよ……?」

「そーなのかー」


緑髪の少女が諫めようとするが、水色の髪の少女――チルノは止まらない。金髪の少女なんて何を納得してるのか分からない。

二人の力関係が分かる構図だった。いや、この緑髪の少女が気が弱いだけかもしれないけどさ。


「そんで? 君の名前は?」

「あ、はい。私は大妖精って言います。皆からは大ちゃんって呼ばれてて……」

「そっか。よろしくね、大ちゃん。そこの金髪は?」

「ルーミアだよ? 人間さんは食べてもいい人間?」

「残念ながら俺は食べられない人間さ。食べてもいい人間自体少ないけどね」


そーなのかー、とルーミアは納得した。それでいいのか妖怪。

なぜか紫と藍さんが俺とルーミアが話していたときだけ、警戒するような気配を感じた。横目で見てみるとルーミアとなんか因縁でもあるのかってぐらい、厳しい表情をしている。コイツ何かしたのかな?

それとも――頭につけてるリボン型の封印が関係してるのかね。


「最強、大ちゃん、そーなのかー、って覚えるよ。よしくな」

「紫苑は分かってるわね! アタイの子分にしてあげる!」

「よ、よろしくお願いします……」

「そーなのかー」


少し離れたところで慧音が苦笑いをしながら頭を下げていた。相手してくれてありがとう的な意味合いだろう。俺は左手をあげて気にしなくていいよと意思表示をしとく。


「紫苑は人気者だなー」


魔理沙も乱入してきた。隣に金髪の美少女もいる。

その少女は西洋人形のように美しく、少女の周辺には本物の西洋人形が2体ほど浮いていた。

人形……爆発……うっ、頭が。


「初めまして、私はアリス・マーガトロイド。魔理沙の近所に住んでるわ。この子達は上海と蓬莱よ」

「シャンハーイ」「ホウラーイ」

「そ、そうか。俺の名前は夜刀神紫苑。普通の人間だ」


どこが普通の人間だ?という視線は無視する。


「なぁ、アリスさん。一つ聞いていいか?」

「呼び捨てでいいわよ。どうしたの?」


お許しも出たので、俺はアリスの人形を指差して問う。




「その人形――爆発四散してウィルス撒き散らす大量殺戮兵器とかじゃないよね?」

「そんなわけないでしょ!?」



アリスのツッコミが響き渡った。

紫苑「キャラ増えたな。次も増えるけど」

魔理沙「次回はこの作品最大のキャラ崩壊が見られるぜっ」

アリス「というか爆発四散ってなんなのよ!?」

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