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戦いの果てに

シルフィードが敵と戦って時間を稼いでいる間に、俺は自分とフローレクの機体を地上に降下させた。

垂直離着陸機であるハリアー攻撃機は、ジェットの噴射を水平から垂直方向に切り替えて、ヘリのように空中に浮かびながら地表に近づく。


『急いで! 早く!』 シルフィードが叫んだ。


着陸時に狙われるとやっかいだ。

悠長にコクピットから出ている暇はない。 機体が地面に着くと、中に乗ったまま急いでハリアーを送還し消滅させる。

俺とフローレクは地上に投げ出された。


シルフィードは、まだ交戦中だ。

わずらわしいドラゴンだ。 これでどうだ?』  魔族の声が脳内にひびく。

次の瞬間、シルフィードは地上に叩きつけられた。 俺の目の前、数十メートル先で身体を横たえる。

身体に力が無い。 脚を投げ出しぐったりとしている。


『おい。シルフィード! 大丈夫か? シルフィード、返事をしろ!』

彼女は答えない。


邪魔をする者がいなくなり、魔族が空中から降りてくる。 そして俺とフローレクの前に立ちふさがる。


「フユトミ。 この機会待ちかねたぞ。 弟のかたきを取らせてもらう」


たしか、奴の名前はカブラカン。 以前の戦いで弟の魔族を見捨、俺から逃げた卑怯者だ。


「ぬかせ! この間合いならお前に負けぬ。 近接戦は苦手だろう」


魔族は右手をげ、真っ黒な剣を実体化させると俺にりかかる。


ガンッと大きな音がする。

振り下ろされる漆黒の剣を受け止める光り輝く剣。 フローレクの魔剣クラウ・ソラスだ。


「俺を無視するとはいい度胸だな。 俺の名はアーレント・フローレク。 帝国の魔剣使いだ。 お前の相手は俺がする」

そして魔族をにらみながら、俺に声をかける。

「フユトミ。 お前は王を殺れ。 ヘルド王はまだ生きているのだろう?」 


「ふざけるなっ! 雑魚ざこはどけ!!」 魔族の男、カブラカンは俺に向かって雷撃らいげきはなった。


フローレクが魔剣クラウ・ソラスを天にかかげる。 カブラカンの放ったイカズチは、光り輝くクラウ・ソラスみ込まれた。 魔剣は爆発的に輝きを増していく。


「何をしている。 早く行け!」 フローレクは怒鳴どなった。


「助かる。 任せたぞ」 俺は二人の戦いから距離をとり、アパッチ攻撃ヘリと10式戦車を呼び寄せた。


『シルフィード! 大丈夫か?』 俺は攻撃ヘリと戦車が接近してくるのを確認すると、倒れているシルフィードのそばへ駆け寄る。


おろかにもほどがある。 仲間の心配をしている場合では無いだろうに」 


…後ろから突然声がした。  馬鹿な! 誰も居る筈はない。 周囲は確認してあった。

俺は振り向きざまに89式小銃を実体化し、声の方向を撃とうとした。


ドンッと…腹に衝撃を食らう。 ショックで出したばかりの小銃を落としてしまった。

前に見えるのは3メートル近い人影。 黒い羽を背中から生やし、均整がとれた体つき。

顔には…何も無い。 目も鼻も口も無い無貌むぼうの男。


そいつが俺の腹に、こぶしを叩きこんでいる。

胃液が のどを逆流し、俺は吐いた。 痛みのあまり身体がのけぞる。


男は俺の顔を狙い、足を蹴り上げる。 両腕でガードするが、身体ごと宙に浮いた。 そして無様に地面 に叩きつけられる。 動けない。 身体が動かせない。


「上出来だよ。 フユトミ。 俺をここまで追い込むとはな」


「…お前がヘルド王 な・のか?」 言葉がうまくしゃべれない。 切れ切れの言葉で俺はうた。


「そうだ。 光栄に思え。 ヘルド王、 みずからのお出ましだ」


「なぜ生きて・いる? MOABモアブを食らって ・な・ぜ・いきて…」


「あの爆弾はMOABモアブと言うのか? 詰めが甘かったな。 あれが吹き飛ばしたのは地上だけだ。 俺は慎重な方でな。 地下数十メートルにシェルター位は作ってあるさ」


奴は、俺の腹をり上げる。 一瞬意識が飛ぶ。 俺はユマの顔を思い出し、意識が刈り取られないように抵抗した。 俺が負けることは許されない。


「フユトミ。 命乞いをしろ。 そして泣き叫べ。 地べたに這いつくばって許しを乞え。 そうすれば命だけは助けてやる」


痛みに耐えながらも、俺はなんとか笑うことに成功した。 ヘルド王。 お前は俺をめすぎだ。

俺が近距離での戦いを苦手だと思ったのだろう? 兵器の爆発に巻き込まれるから俺が攻撃しないとでも?


どうせ俺にあとは無い。 兵器たちに命令する。 

『アパッチ、10式。 俺ごと奴を撃て』

『…敵と近すぎます。 司令官、あなたも死にます』 10式戦車は主砲の発射をこばむ。


『早くしろっ。 俺の望みが分からないのか?』


『…リョウカイ シタ』 俺の愛機、アパッチ15番機は命令を了承。

すぐさまヘルファイア・ミサイル2発を発射。


「バカなっ!!」 ヘルド王は、何かの魔法を投げかける構えをする。 ふざけるな! いさぎよく一緒に死ね!


「させるかっ!」

俺は最後の力を振り絞って奴に抱きつき、一緒に地面に転がる。



今度こそ。 今度こそ。 今度こそ! これで奴を倒せる。

一瞬、ユマの泣き叫ぶ声が聞こえた気がした。 


すまない。


しかし、こいつだけは俺の責任において倒す。


次の瞬間二発のヘルファイア・ミサイルが王と俺をつらぬく。

俺たちの肉体は粉々に砕け散り、四散した。


アパッチ15番機の声がまだ聞こえる。 俺の身体はもう無い筈なのに。 意識だけの存在になって地表をただよっているようだ。


空中でホバリングする戦闘ヘリ―15番機が姿を変えていく。 人間の女性の姿に。 いつの間にか俺のそばに立っている。

プラチナ・ブロンドで中位の長さの髪。 スリムな身体。 青い目に気の強そうな口元。 ホットパンツ姿が色っぽい。


俺の相棒は、こんな美人だったのか。 ボンヤリと考える。


人の姿になった相棒は大声で叫んだ。

『ユニークスキル"願い"を発動。 私の相棒で一番の戦友、冬富ふゆとみつかさの再生を願う! 我が願いを聞き届け、実行せよ!』


"願い"は、英雄エストラの持っていたユニークスキル…。 スキルが許す範囲で人の願いをかなえる能力だ。


俺では無く、お前がエストラから、そのスキルを引き継いでいたのか…


相棒はこちらの視線に気がついたのか、俺を見て微笑ほほえむ。

『じゃあ、私は先にく。 地獄で待ってるから、あなたはゆっくり後で来て。 もう少し一緒に戦闘を楽しみたかったけど。 でも今度も死んだらまた一緒。 約束して!』


すまない。 お、俺は…

俺は相棒に手を伸ばそうとした。


彼女はバイバイと片手を振りながら、ウィンクをすると次の瞬間、光の粒になり消え失せる。

ユニークスキル"願い"。 発動コストは、死。

相棒は俺の身代わりになったんだ。


アパッチを召喚し呼び出す事はもう出来ない。


『了解だ。 次回は一緒に地獄で暴れよう。 しばらく、待っていてくれ。 そんなに先ではない筈だ』

俺は消えた相棒に向かってつぶやいた。


女の泣き声で目が覚める。 相棒のおかげで生き返ったようだ。

誰かの柔らかい身体に、俺は抱かれている。

気が付くと、さっきまで視界の角で俺の残り時間をカウントしていた表示も無くなっている。


「ツカサ。 ツカサ。 いやだ。 私を一人にしないで」


俺にしがみついて 泣いているこの女性は…ユマだ!

いやしかし。 彼女がここに居る筈は無い。 エフェソスの街に置いてきた。 俺は最後に挨拶もせずに彼女と離れた。


「弟のイフリートに頼んだのよ。 応援に呼んだんだけど、ユマも連れて来てもらったの」 少女姿のシルフィードがフローレク に肩を貸してもらいながら立っている。

フローレクは、魔族を始末出来たようだ。


見ると、見覚えのあるシルフィードの弟のドラゴンー今は少年の姿だがーイフリートが慌てて目を逸らす。


「つくづく女にモテる男だな。 フユトミは」 フローレクは面白くなさそうに言うと、俺に向き直った。


「これで終わったのか?」


俺は泣きながらしがみつくユマを、胸に抱えながら、半身を起こした。


護衛艦みょうこうから連絡が入る。

『よかった! 司令官。 気が付かれましたか? 本艦を狙っていた攻撃機は全て消滅しました』


MOABモアブに破壊されて何も残っていない周囲の景色をあらためて見る。

今度は確実にヘルド王を始末した。 俺には確信がある。 最後に奴の身体は細切れになった。

俺の身体と一緒に。


「ああ。 終わった。 全て終了だ」 俺はフローレクに断言した。


そしてユマを力一杯、抱きしめた。

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