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首都侵攻、再び

◆

「多数の敵攻撃機が当艦の北450kmに出現。 高度12,000 マッハ1.5で接近中 」

海の向こうの護衛艦(ごえいかん)みょうこうから連絡が入る。


「敵は何機だ?」


「現在確認中…10機以上と思われます! 高度を下げながら接近中。 低高度から我が艦隊に対するミサイル攻撃を行うつもりです」


護衛艦の持つ対抗手段 ―SM2(スタンダード・ミサイル2) の射程距離はせいぜい160kmだ。 敵のいる400km先には届かない。 近くによってくるのを待つしか無い。

攻撃機を追い払ってくれる筈(はず)の味方戦闘機はいないのだ。


護衛艦が攻撃されるまで15分とかかるまい。


こんごうが生き残っている限り、敵は核ミサイルを撃たないだろう。 貴重な核ミサイルを迎撃されては敵(かな)わないからだ。

みょうこうが時間を稼いでいる間に、少しでもヘルド国に近づく必要がある。


俺は、シルフィードとフローレクに向き直る。

ハリアー攻撃機は既に3機が地上で待機中。 俺たちを待っている。


「さあ行くぞ。 時間がない」 シルフィードとフローレクに声をかける。


俺たちはハリアー攻撃機に乗り込み発進した。

間に合ってくれ。


◆

護衛艦みょうこうは、刻々(こくこく)と敵の攻撃状況を知らせてくる。


「敵は高度を下げ、こちらのレーダーの索敵(さくてき)範囲から外れました。 現在、敵位置不明。 探知(たんち)範囲外の低高度から対艦ミサイルを発射するつもりと推測。 再出現予想位置を算出中」


敵は海面近くまで高度を下げ、シースキミングモードで対艦ミサイルを撃つつもりだ。

シースキミング状態で飛行する対艦ミサイルは、海上ぎりぎりを亜音速(あおんそく)で飛び、こちらのレーダーでは探知出来ない。 再度観測できるのは、護衛艦から50kmまで近寄ってからの筈だ。


「敵の対艦ミサイルを発見。 20発来ます。 距離45km。 VLS解放、迎撃の為にスタンダードミサイルを発射。 着弾まで1分」


みょうこうの持つMk 41 垂直発射システム(VLS)から、18発のスタンダードミサイル2(SM2)が発射される。 ミサイルの噴射で真っ暗な海が太陽に照らされたように明るくなった。 SM2は轟音(ごうおん)とともに上昇し、すぐ方向を替え、敵対艦ミサイルの迎撃に向かう。


最終誘導を行うイルミネーターの制限から、同時に制御出来るSM2は最大18発までだ。 


「3…2…1 着弾 今!!」みょうこうが叫ぶ。 16発のSM2が命中。 敵のミサイルを叩き落とす。


「残り4発。 敵ミサイル来ます!」


火器管制装置にコントロールされた、護衛艦みょうこうの甲板上の砲塔が、敵のミサイルを睨(にら)む。

「127mm速射砲(そくしゃほう)…発射!」 オート・メラーラ社製の艦載砲 54口径127mm単装速射砲(たんそうそくしゃほう)が火を噴(ふ)く。


砲弾の1つが敵ミサイルを貫(つらぬ)くことに成功。 「着弾! 一発を撃破」 


残り3発のミサイルは、2発がみょうこう、1発がこんごうを狙う。


みょうこう、こんごう両艦が持つ、ドーム状のレーダーを備えた高性能20mm機関砲(CIWS)がロボットのように動き、敵ミサイルを迎え撃つ。

最終フェーズの近接用の対空防衛兵器だ。 この兵器の後はない。

ゴォォーという発射音を辺りに轟かせながら毎分3,000発の発射速度でタングステン芯弾が空中にばら撒かれる。


海面すれすれで飛んでいた敵のミサイルは、獲物(えもの)である護衛艦の直前で一旦上昇、目標位置を正確に測定。 そしてこんごう、みょうこうに襲いかかる。


こんごうを狙った一発の敵ミサイルは、機関砲(CIWS)に撃ち抜かれ爆発する。 近い!

数十メートルしか艦体から離れていない。 衝撃(しょうげき)がこんごうを襲い、大きく震える。


みょうこうを狙った敵ミサイル2発は、1発が同様にCIWSに撃ち抜かれ、もう1発は最終誘導を失敗し、海面に突っ込む。 幸運にも、みょうこうは生き残る。


何とか敵攻撃の第1波には堪えた。 イージス弾道ミサイル防衛システムは、まだ正常に稼動している。

核攻撃は、防げる。


イージス艦が殺られる前に、MOAB(モアブ)をヘルド王の居る王宮に叩き込まないといけない。


◆

俺たちが乗るハリアー攻撃機は、王国とヘルドの間の国境を超えた。 そのまま敵の首都に向かって飛ぶ。

敵に目立った動きはない。 しかし、首都タリスの周辺は防御を固めている筈だ。


俺たちが乗っている、亜音速で飛ぶハリアー攻撃機を迎撃(げいげき)しようとしても、ドラゴンや魔族には無理だろう。 用心しなくてはいけないのは、敵の召喚兵器類。 特に航空機と地上の対空兵器だ。


俺は、ハリアーの速度を落とし地上へと高度を下げた。

周囲に敵がいないことを確認し、速度をゼロ近くまで落とす。 垂直離着陸機(すいちょくりちゃくりくき)であるハリアーはヘリのように空中に静止出来る。 


「ハリアー 、アパッチ来い! 最大数で召喚を実行」


数十個の光の塊が出現し輝(かがや)く。 

俺たちを乗せた3機のハリアーの前方に、新たに10機編隊のハリアー攻撃機が出現する。

地表近くには10機のアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプター。


「10式戦車、機動戦闘車、87式自走高射機関砲、89式装甲戦闘車。 最大数で展開せよ」


無数の光の塊が地表に出現する。

兵器ごとに、10両ずつ実体化する。 こんなに大量の兵器たちを一度に召喚したのは初めてだ。


ヘルド王よ。 俺の最大の力を見せよう。 これからお前の居場所、首都タリスに侵攻する。

俺の兵器たちが、前進を開始する。


『無理しないで。 死に急がないでよ。 きっとなんとかなるわ』 シルフィードの声が脳内に響く。


『大丈夫だ。 無駄死にするつもりは無い』 俺は応えた。


◆

俺たちは首都に向かい侵攻を続ける。


大量の兵器の突然の出現に、敵は慌てて対抗しようとする。

だが、鎧(よろい)を着けた生身の歩兵なぞいくら出てきても相手にもならない。 敵の魔術師たちも圧倒的な火力で圧(お)し潰(つぶ)す。

魔族たちも出てくるが、下級クラスがいくら来ようが戦況は変わらない。


敵の呼び出した召喚兵器たちが、ようやくお出ましに成る。 T72戦車が8両ほどにハインド攻撃ヘリが5機。


アパッチ、ハリアー、10式戦車の攻撃の前に、なす術(すべ)もなく敵は全てガラクタと化した。


思ったより敵の召喚兵器の数が少ない。 特に航空機が。

恐らく護衛艦の攻撃に数を回しすぎているのだろう。 自国の守りが手薄になっている。

俺の攻撃は予想外だったということか。 もしかしたら、このまま勝てるかもしれない。


先行した10機のハリアーが、ヘルド王の住む王宮を射程(しゃてい)に収(おさ)める。 地上からの対空兵器の攻撃は無い。


AGM-65 マーベリック発射。

ハリアーから合計20発のマーベリック空対地ミサイルが、王宮に向けて発射された。


ミサイルは建物に着弾する前に、爆発し光が爆(は)ぜる。

……予想どおり、敵の魔法のシールドか。 


『10式戦車! 主砲準備。 王宮に向かって斉射(せいしゃ)しろ』


10式の主砲10門が王宮に向かって火を噴(ふ)く。 駄目だ。 着弾しない。

周りのシールドが砲弾を弾(はじ)く。


俺の脳内に声が響く。 中年くらいの男の声だ。  

『騒がしい。 汚らしいゴミが我が王宮に何のようだ?』



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