始まりの前に
目が覚めると床の上だった。俺はもそりと起きて耳にうるさい電子音を鳴らすケータイのタイマー機能を解除するとトイレへ向かう。用を足していると徐々に頭の霞が晴れてきて、今日も新しい朝が来たんだとハッキリと意識する。
トイレを出て朝食の用意。みそ汁は昨夜の残りがあるから玉子焼きを焼くだけでいいや、と冷蔵庫を開ける。卵を取り出す。一個、二個、三個、四個、五個、六個、七個、八個、たぶんまだ足りないが経済的観点から考察するに八個が限界だ。チキショー。まったくタダ飯食らいの大食らいがいると厄介だぜ。おまけにその大食らいは居候のくせにまだグースカ眠っていやがる。と言っても本人に居候の自覚は無く、それどころかこの俺を下僕扱いしやがるんだ。それに対して口ごたえをしようものなら契約した事を持ち出され黙らされる。契約のクーリングオフも受け付けてくれないそんな悪魔様のために朝食を作る俺は、とても甲斐甲斐しくて健気だ。そう思ってくれたら嬉しい。
「ご飯の時間か?」
ベッドから吐息混じりの鼻にかかった声がした。
「玉子が焼けたらな」
「そうか。では起きるとするかな」
あくびしたミズルが起き上がろうと毛布をのけようとする!
「ちょっと待った!」
「ん? なんだ?」
「どうせまた素っ裸で寝てんだろ? 服着てからベッドから出て来い」
俺はベッドの脇の小さなテーブルに乗っかっているTシャツとジーパンを指す。先日、ミズルのために買ってきた奴だ。
「出てから着れば良いだろう」
「わっ! バカ!」
ミズルはバッと毛布をめくって、白い肌を露出する。が大事な部分はヴァゴスが張り付いて隠してくれていた。なんとかセーフ。悪魔でありながらなまじ見てくれが絶世の美少女ということもあって、ミズルのこういった所は青少年たる俺には刺激が強すぎる。これが毎朝なんだからマジで大変なんだ。




