アルガイ家
数時間後、デュークらは《魔の森》を抜け、自らの家へと帰ってきていた。デューク達の目の前に建つのはかなり大きな家。デュークはこの地域一帯を納める領主であり、マルクや白いローブの女は雇われた身だ。扉を力強くあけるデューク。
「ただいま、帰ったぞ!!」
「あなた!!」
「お父様!!」
ある一室の扉が開かれ、飛び出してきた女性と女の子デュークに駆け寄る。
「あなた、よくご無事で!」
「お父様すごく心配しました」
デュークは女性と女の子を抱き締める。
「すまなかった。心配かけて」
この女性と女の子はデュークの妻と娘。赤く長い髪を持ち、安堵の表情を見せる女性はマリア・メージ・アルガイという。そしてデュークとマリアの娘、アリサ・メージ・アルガイといい、両親の遺伝を受け継ぎ、赤い髪を持つ明るい性格の女の子だ。
「無事に帰ってきて下されば、それでいいですわ」
マリアはニコリと笑う。デューク自身、幾度となく彼女の笑顔に救われてきた。
「ありがとう」
「それより、何かあったの?こんなに遅くなるなんて」
「あぁ、その事について話したいから場所を変えようか」
そう告げたデュークの顔は真剣だった。夫婦であるマリアはその表情に何かを感じとり、頷く。
「そうね。マルク達もありがとう。デュークを守ってくれたのでしょう」
「いえ、当然の事をしたまでです」
マルクが率先して答えた。
「アリサ。貴女は少し自分の部屋にいなさい。また後で」
「わかりました、お母様」
アリサは素直に頷き、マルク達に一礼してから自分の部屋へと戻った。その姿が消えた後、マリアはデューク達を一室へと導き入れた。
「――――――という訳なんだ」
ある一室でデュークはマリアに全てを話した。《魔の森》でホーリースライム達を従える謎の少年に出会ったことも。
それを聞いたマリアは驚愕する。夫のデュークが嘘をつくはずないと思っていても、その事実は誰もが驚かざるを得ないものだ。あの少年ははっきりと“テイム”している、と言わなかったがみた限り、テイムしているのだろう。
A級モンスター“ホーリースライム”。その存在は文献でしか、確認されていない。それによると、“ホーリースライム”はE級モンスター“スライス”からある特定の条件が揃う事によって進化したスライムでその生体や何魔法を使うのかは分かっていないようだ。
「俺たちはたまたまあの少年がどこかに行ってくれたおかげで助かった。もし、少年が俺たちに注意を向けていたならどうなっていたかは想像がつかない」
「そうだったの……。本当に無事で良かった」
マリアは一息ついて、紅茶を口へと運ぶ。
「ふぅ。それにしても、気になるわね。その子」
「あぁ、《魔の森》で魔物達と住む少年で、その素性は謎だがな」
「けれど、強い事は確かです。なんの武器を使っているかは分かりませんでしたが、かなりの技量でした」
実際に一戦交えたマルクがそう断言する。
「ミーシャ、あなたはどう思った?」
マリアが白いローブの女――ミーシャに視線を向けて問う。
「私は実際には戦っていませんが、少年の魔力を感じました。それこそ、一流の冒険者に匹敵するほどの魔力を」
「それほどだったのか?」
デュークの問いにミーシャは頷く。その場に沈黙が訪れる。ミーシャは魔力探知に優れている為、魔力や魔法に関しては一流である。そのミーシャがはっきりと肯定して少年の謎は深まるばかりだ。
重い沈黙を破ったのはマリアの言葉だった。
「気になるわね。その子。2体の魔物を従え、素性も顔も隠して《魔の森》に住む少年ね……」
「どういたしましょう?」
マルクの言葉にデュークは決意を露にする。
「とりあえず、あの少年の事を調べて見る。どうしても気になるからな」
「そうね」
デューク達は動き始めた……