黒いローブの彼
少ないかもしれませんがどうぞ
「―――命が惜しければ、この森から立ち去れ」
身長はマルクの半分くらいだろう。黒いローブを纏い、顔も隠れているので、声色だけで判断すると、男の子だろうと予測出来る。
「君は誰です?………なぜ《魔の森》にいるのです」
ホーリースライムに注意を向けながらもマルクはその人物に問いかける。
「――――もう一度言う。この森から立ち去れ。二度は言わない」
一瞬の沈黙の後、耳に届いたのはそんな言葉だった。子供らしい高い響きを持った声に込められた感情は軽蔑。冷たく言い放たれた言葉と高い響きを持った声にマルクは口を開く。
「私たちはこの《魔の森》を抜けて家に帰らなければならないのです。だから立ち去ることはできない」
「そんな事情など知らない」
ピシャリとマルクの言葉は切り捨てられた。そんな時、黒いローブを纏う彼の一メートルぐらいの距離にいたホーリースライムがマルク達と対峙する彼に近づく。
危ない、と声をあげたマルク。
なにせA級のホーリースライムなのだ。彼がどれだけ強いかは分からないが、一流の冒険者でも手こずるほどの魔物なのだから、襲われたらひとたまりもないだろう。そう考えてのことで声をあげたのだ。だが、それは杞憂だった。
ホーリースライムが近づいたかと思うと、まるで母に甘える子供のように体を擦り寄せている。その様子はなついているようにしか見えない。
「何が危ない、と言う?」
呆然とするマルク達3人にそんな言葉が冷たく返ってきた。ハッと我にかえり、何故ホーリースライムが敵意もなく体を擦り寄せているのか、その唯一の方法に辿り着く。
「――まさか、A級のホーリースライムを“テイム”しているのですか!?」